New York Film Festival ジム・ジャームッシュとマイク・ミルズに痺れるの巻 – 福田真梨のニューヨーク通信

New York Film Festival ジム・ジャームッシュとマイク・ミルズに痺れるの巻 – 福田真梨のニューヨーク通信

エディターの福田です。毎年10月はニューヨークの映画月間!なぜなら、ニューヨーカーが最も楽しみにしている映画祭「New York Film Festival(以下、NYFF)」が、2週間以上に渡って開催されるから。

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まわりには映画ギークが多く、前売りチケット発売前には、何を観に行くか、何本を観に行くかの作戦会議がお決まりになっている。「◯◯は観たいよね。でも、少し経ったら映画館でも上映されるはず」「やっぱり××を観といたほうがよくない?公開されるか分からないよ」なんて、ああだこうだと勝手に予想をするのも楽しみのひとつ。映画館で一般公開されるもの、有名監督&俳優などで人気が殺到しそうなものを避けて、確実かつレアな作品を狙うのが、NYFFのチケット争奪戦を勝ち抜くコツ。

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だけど、今年はそんな作戦なんて忘れて、今すぐに観たいもので真っ向勝負することにした。だって、公開を待ちきれない作品がありすぎて……。プレミアからリバイバル、ショートフィルムなど、怒涛の上映作品の中からピックアップしてみると。

 

『20th Century Women』

 

マイク・ミルズ監督の長編3作目となる待望の新作。舞台は1979年、サンタバーバラ。思春期を迎えたティーンボーイの子育てに四苦八苦するシングルマザーのお話。まずは、上のトレーラーを。

 

この感じ、すでに好き!ということで、ワールドプレミアとなる上映を楽しみにしていたら、前夜に一通メールがポロリ。なんと、マイク・ミルズはもちろん、主要キャストも登壇するため、会場となるリンカーンセンターの中でも一番大きなアリス・タリー・ホールに変更となりましたとのこと。早めに映画館へ向かい、「スクリーンの左側、なるべく前にしてほしいな」と言ったら、窓口のおじさんは、わかっているよという顔で、オーケストラ席を手配してくれた。

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ということで、わーい!エル・ファニング可愛い〜。彼女は〈ロダルテ〉の2ピースドレスで登場。肌の色ともマッチした、究極のワントーンコーデ。マイク・ミルズの優しい笑顔にもほっこり。

(左から、NYFFディレクターのケント・ジョーンズ、監督マイク・ミルズ、主演アネット・ベニング、エル・ファニング、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ)

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「みんなが自分の母親の映画を作ればいいのに。映画製作を通して、母親がどんなものに影響を受けて生きてきたかを、紐解くことになったんだ」とマイク・ミルズが、翌日に行われたトークでも話したように、この作品は彼の母をモデルとした物語。ヒッピーカルチャーを過ごした自由奔放なシングルマザーのドロセア(アネット・ベニング)は、日々反抗的になる息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)を立派な青年に育てるべく、息子の幼なじみのジュリー(エル・ファニング)と下宿人のフォトグラファー、アビー(グレタ・カーヴィグ)の女性2人に助けを求める……。

 

上映中は、爆笑の連続というくらいユーモアたっぷりながら、繊細に映し出す登場人物それぞれの心の動きが、胸に刺さる、刺さる、泣ける。“Coming of Age”と呼ばれる思春期の迷いや苛立ち、3人の女性を通して映し出す女性の本音やフェミニズム、さらにヒッピー、パンクといった揺れ動く時代のカルチャーを描いたドキュメンタリーのような一面もあり。この映画は、GINZA読者のみなさんには、絶対に観てもらいたい! 上映終了後も、拍手喝采のスタンディング・オベーションで、すでにマイク・ミルズの最高傑作と大評判。個人的に2016年のベストムービー!

 

 

『Gimme Danger』

 

続いて、楽しみにしていたのは、ジム・ジャームッシュが「NYのローワーイーストサイドで25年以上もサバイブしてきた仲」と話すイギー・ポップ&The Stoogesの軌跡を描いたドキュメンタリー。

 

ロック+ドキュメンタリーで「ロッキュメンタリー(Rockumentary)」と呼ばれる映画って、筋金入りのファンしか観ないように思っている人もいるけれど、ロックの殿堂入りしたような、スーパーメジャーなミュージシャンの素顔は、何かを気づかせてくれることが多い。あきれるくらいふざけていたり、驚くほど真面目だったり、すっごく頑固だったり、泣けてくるくらいピュアだったり。「そうだよね、だから万人の心を惹きつけるのよね」と合点がいく。そして、観終わって覚えているのは、彼らのヒストリーの中では、どうでもいいくらいきっと小さなことだったりするけれど、それが、自分の中では彼らが好きな理由にもなったりすると思う。

 

例えば、イギーがThe Stoogesを結成するずっと前に、The Dirty Shamesというバンドを組んでいた話なんてそうだ。人前で演奏なんて一度もしていなかった、もはや架空のバンドなのに、かっこつけて、「あー俺ら、The Dirty Shamesってバンド組んでて」と、パーティで出会った女の子に言ったら、彼女たちもガールズバンドを組んでいて意気投合。「どうせ俺らみたいに、言ってるだけで大したことないだろう」とニュージャージーの彼女たちの家に遊びにいったら、その実力がすごくて、焦っちゃったなんていう話。

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当日は、ジム・ジャームッシュとイギー・ポップが、Q&Aと舞台挨拶にやってきていて、中学生みたいにふざけている姿が、もうなんて微笑ましい! 「7年前に製作をはじめて、途中で2本の長編『Only Lovers Left Alive』と『Paterson』を撮り終えて、やっと資金が集まって完成したんだけど……、時間がかかりすぎて、イギーが本当に公開するのかって確認してきてね」と、おなじみの超スローテンポで語るジム・ジャームッシュ。笑いながら話していたけれど、帰り道に友達が、「あれこそ、まさに“Labor of Love”だよね」と言ったのに納得した。

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ちなみにイギーは、登壇後もステージから下に降りてきて、会場のみんなと記念撮影やサインにフランクに対応。もう神がかったスターだなと拝みたくなった。イギーのオープンマインドなファンサービスは、有名な話らしい。

 

 

忙しい毎日の中で、どんどんいわゆる社会的に許される大人になっていくけれど、私たちを感動させる人は、平坦な日々の繰り返しの中でもう何の感情を抱かなくなったような当たり前のことの大切さを気づかせてくれる。マイク・ミルズが映画を撮り始めたきっかけのひとつも、「ニューヨークで暮らしていた頃、何をするでもなく、家で友達とダラダラと過ごしていた時に、ジム・ジャームッシュが窓の外を横切るのを見て、『ぼくらの生活って、ジム・ジャームッシュが撮影してないだけで、まさにその世界観でしょ!?』と冗談で話していて……。だったら、自分でも映画が撮れるのかなぁなんて思って」と言っていた。そんな風にそっと肩を押してくれる映画、なるべくたくさん観れたらいいな。

 

あー、すっかり長くなって、紹介が遅くなってしまったけれど!!トップの画像は、イラストレーターNathan Gelgudの手描きジム・ジャームッシュがチャーミングなトートバック。映画好きにはマストハブアイテム。トリュフォーにゴダールと、いろいろありますよ!


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福田真梨

Mari Fukuda
エディター&ライター。出版社の編集者を経験した後、フリーランスに。現在はNYを拠点に活動中。Pace Galleryでマーク・ロスコの展示が始まるとウキウキしておりますが、日本には、マーク・ロスコのために作られた部屋があるDIC川村記念美術館があります。ワンデイトリップにぜひどうぞ!

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