フランスへの憧れを形に
山下公子
デザイナー
かつて芸術家の卵たちが暮らし「池袋モンパルナス」と呼ばれたエリアに、数年前、パリのアパートメントにインスパイアされた集合住宅が建てられた。その一室に、夫、息子、犬と暮らす山下公子さん。漆喰塗りの静寂な空間には、長年かけて集めてきた古材などのパーツや、年代ものの家具がとけ込んでいる。
「学生の頃、はじめてフランスを訪れたときに見た街の美しさが衝撃的でした。建物の扉や窓枠は、何度も塗り重ねられてきた風情に趣があり、マルシェに無造作に並ぶ野菜もまるで絵画のよう。街全体がアートだと感じたんです」
人生観を変えたフランスへの憧れを、この住まいに投影している。余白を楽しむために幅の狭いダイニングテーブルを選び、モディリアーニなど芸術家のアトリエにある作業台の空気感を表現したくて、キッチンをディスプレイ収納に。手に入れたものをどう使うか、どう見せるかのイメージを自分流に思い描き、ぶれない気持ちで実践することが、スタイルのある豊かな日常を作り出している。