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“今の望み”に正直に、移住へと踏み出す。有井ミサさんのサステイナブルな生活

“今の望み”に正直に、移住へと踏み出す。有井ミサさんのサステイナブルな生活

自分にとって今本当に大切なこと、必要なものを見極めながら過ごす。東京で、そして地方へ移住して、サステイナブルな生活を実践する人の話。


有井ミサ
会社員

軽やかに暮らすフィロソフィー 有井ミサ

遊びたい場所で、仕事を探してもいい
“今の望み”に正直に、移住へと踏み出す

「一晩で雪が50​cmほど積もったりもします。近所の方は除雪機を持っているのですが、うちは手掘り。去年まではマンションに住んでいたから、業者の方がやってくれました。家を建ててからは、すべて自分たちで。でも、その土地の〝何か〟と付き合うことが移住だと思うんです」

リビングの天井に取りつけられたハンモックに腰かけながら、有井さんは晴れやかな表情で語る。2018年、白馬へ居を移す。昨年、夫婦ふたりで細部にまで思いを込めた、ロッジのような外観の一軒家を手に入れた。

「東京で広告会社に勤めているときは、実家に住んでいたのだから、自分でも驚いています。20代でマイホームを持てるなんて(笑)」

移住を考えるきっかけは、趣味の登山とスノーボード。週末ごとに北アルプスや八ケ岳などを訪れるなかで、価値観が変化していく。

「とにかく空気がきれいで、水が美味しくて、爽快な気持ちになれる。土日は山で過ごして、平日は満員電車に揺られ、また終電で自宅に帰る。そのギャップに疑問を抱くようになって。東京に会社があるから、東京の近くに住む。それとは違う発想があるのではないか。年収は下がっても、遊ぶ場所を先に決めて、仕事を選んでもいい。そんな想いが芽生えました」

そこから一足飛びに白馬にたどり着いたわけではない。まずは夏休みを利用して、山梨県韮崎市で約1週間の移住体験に参加。

「特にこれをやりなさいということもなく、自由に過ごしていました。都心に2時間くらいで行けるし、求めていた生活と少し違うなって。美味しいパン屋さんが近くにあるとうれしいけど、それ以上に、自然の中で遊べる環境がほしいのだと気づきました」

その後、いくつか候補の街をリストアップして、ハローワークやウェブなどで職探し。

「仕事が見つかった土地で暮らそうと思いました。まだ結婚前だったのですが、彼が先に白馬の会社に転職することになって。ほどなく、私も地元のケーブルテレビ会社に決まり、ふたりで部屋を借りて住むことに。その後、仕事で知り合った方の紹介もあって不動産会社で働き始めて。この街でつながった縁です。最近は友人と発酵のサークルを立ち上げて味噌づくりをしたり、新しい体験がちょっとずつ増えていく。それを楽しんでいます」

家の“呼吸”を感じながら
生活に足りないものを加える

そして、もともとは田んぼだった土地を購入して建てた一軒家について。ドアを開ければ、登山道具やスノーボード用ギアが立てかけられた玄関。正面左側の戸を引くと、中央に薪ストーブが置かれた土間があり、一段上がってリビングへとつながる。床、柱、天井にはおおらかな存在感を放つ木材。そこに壁の白さが加わり、隅々にまで静かで穏やかな空気が流れるよう。白馬の四季が織りなす清々しさと、家自体が地続きの印象を受ける。

「サステイナブル意識が高い街なので、それを叶えてくれる地元長野県の工務店にお願いしました。すべて国産無垢の木材を使用することで環境に配慮。大黒柱は栗駒の杉で、床は唐松、ダイニングテーブルはオニグルミだったりと、木の表情や特徴を聞いて、それぞれ選びました。白い壁は漆喰です。ログハウスも考えたのですが、どうもしっくりこなくて。断熱材には〝ウッドファイバー〟を使っています。これは山に取り残された木材を繊維状に加工したもの。1階の天井は2階の床材で、プラスティックもほとんど用いていません」

昨年の春から住み始めて、すでにこの家に住むことの〝意義〟を見出しつつあるという。

「1階はけっこう硬い材質で傷がつきにくくて、黒くツヤツヤに経年変化していく。2階は比較的柔らかい木材だから、何か落とすと凹んだり。でも、蜜蝋ワックスで磨くと傷も味わいになるというか、その痕跡も愛おしくなります。ときどき木が少し歪んだりしてドアが開きにくくなったりもしますが、〝呼吸〟を感じることができるのはうれしくもありますね」

もちろん、まだまだ試行錯誤の途中。以前所有していた家具などは、入居前に必要最低限のものを残して、人に譲るなどして処分。リビングには備えつけの棚と、丸いテーブルと椅子。そして、ハンモック!

「長く使える、本当に欲しいものを探したい。ソファはなかなかピンとくるのがなくて、今はハンモックで代用しています。急いで決める必要はないと思っています。あ、運動不足解消のために、夫は梁に懸垂バーを取りつけました(笑)。生活のなかで足りないものを、ちょっとずつ家に加えていくのも、これからの喜びになりますね」

晴れた日にはリビングの大きな窓から、白馬三山の美しい稜線が見える。

「朝起きて壮麗な風景を眺め、ふと視線を移すと、庭の小さな花が目に入る。そんなとき、移住してよかったなと思います。ただ、永住と重く考えてはいないんです。住宅ローンもありますが、そこは若いうちから始めたとポジティブに捉えて。今はこの暮らしを満喫したい。その先にまた違う望みが生まれたら、軽やかに動きたいですね」

有井ミサ ありい・みさ

庭でのパーマカルチャー菜園、コンポスト、菜食など、サステイナブルな生活を実践している。パタゴニアのウェアが好きで、リペアしながら愛用している。

Photo: Yuri Manabe Text: GINZA

GINZA2022年3月号掲載

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