旅先から連れて帰ったアンティークに、フォルムで選んだ観葉植物。扉を開けた先にあるのは、たくさんの“好き”と気ままな時間。切り取って保存したくなる、あの人の日常の風景とストーリー。
小さなものへの愛にあふれたパーソナル・サンクチュアリ 「彼女と、光の射す東京の部屋。」vol.1
増崎真帆/マネージメント&PR
40㎡もあるひと間が、キッチン&ダイニングとリビング、そして好きなものを飾るスペースの、すべての役割を果たしている増崎さんの住まい。開放的な広い空間の魅力をそのままに、さまざまな機能がゆるやかに共存し、窓際のグリーン、本棚の上、どれをとっても絵になる。そして、大きな窓が、抜けのいい景色を映し出している。
「この窓と眺めのおかげでいつも気持ちいい。部屋の幅めいっぱいに窓をとってあるという作りなどは、古い建物らしいところですね」
横にたっぷり広い、お気に入りの窓。その向こうには、東京の街並みと空という抜けの良い景色が広がっている。窓辺にある背の低い本棚は、この家に合わせてオーダーメイドしたもの。右半分が増崎さん、左半分が夫と領分を分けて。棚の上には、フリーベリの器、ガラスのコップ、増崎さんの行きつけである青山のアンティークショップ「サンドリーズ」で出会った石の矢尻、京都で拾った陶器のかけらなどなど。小さなものたちが決まりなく並んでいる姿が愛らしい。
夫と住み始めて、3年半。ヴィンテージマンションだけど主張がない作りで、さっぱりとした間取りと内装も好みだそう。2人とも好きなものが似ているから、飾ってあるものはそれぞれのものが入り混じるようにレイアウト。友人でもある日本人写真家の作品やクラフトから、骨董市で手に入れた大皿、道端で拾った何でもないものまで。
「飾り方に明確なルールはなくて、その時その時の気分なんです。たとえば、友達からもらったものを置いたら、何となく似たものが集まったり。ニューメキシコを旅した後には、ジョージア・オキーフの家に影響されたコーナーができたり。物を買うのも、掃除や料理をするのも、花を飾るのも、自分たちの無理のない範囲でしかしていなくて」
ネイティブアメリカンのホピ族の伝統的なフォークアート、カチナドールを中心にプリミティブな品々が並ぶコーナー。カチナドールは、昨年のアメリカ旅行で訪れたニューメキシコでの戦利品。もとは植物を飾っていたが、オキーフ熱が冷めやらぬうちに入れ替えた。
自分たちの〝好き〟が日常に溶け込んだインテリア。ここにもうすぐ、また新しいニューピースがやってくる。
「運良く見つけたタピオ・ヴィルカラの椅子が届くのを待っているんです。その椅子が来たらまた、この部屋への愛着が増しそうです」
ウェグナーのハートチェアや写真集を、ディスプレイのステージ代わりに。
キッチンには、薄くシャープな佇まいのグラスがずらり。日本酒が好きという2人だけあり、ぐい飲みなど酒器も数を増やしている。
コーヒーテーブルは、ピーター・ズントーのデザイン。スイスにあるテルメ・ヴァルスを訪れた時に宿の近くで見つけ、夫があの手この手で梱包し持ち帰ったという、熱意と思い出にあふれた品。
クリエイターの友人たちが手がけたオブジェや写真も部屋のあちこちに。壁には、写真家の志賀理江子さんがこの家のために贈ってくれた作品や、津田直さんのブータンの写真が。また内装にも、友人でもある以前の住人たちが手を加えている所がいくつかあり、そこも気に入っているのだそう。
グリーンが並ぶ窓辺の一角には、形の似ている丸いものをまとめて盛った陶器。ランダムな素材がリズミカルで楽しい。