NEWoMan広告のADに聞く。 今、気になるビジュアルムードって?
アートディレクターが注目するビジュアルムードって?
移動中のSNSチェックにYouTube、帰宅すればネット配信番組にテレビに本に、と大忙しな我々の目。何を見ればいいの?と迷った時は目利きに聞け!ということで、まばゆい光をまとった女性たちが印象的なNEWoManの広告で、現代を生きる女性たちをエンパワメントしたアートディレクターの上西さんに今、気になっているビジュアルを教えてもらいました。
「ここ最近、世間にはAIや技術革新など、時代が進むことに対する恐怖がありますが、一方で今回取り上げたような作品を見ると、テクノロジーの正しい使われ方によって叶う、新しい表現が生まれつつあることを体感できてロマンと夢を感じます。特にファッションの業界は取り入れるのが早くて、ブランド広告といえば当たり前のようにフォトグラファーの物だったのが、今やペインターやビジュアルアーティストが表現できる場になっているところに驚きますね。とにかく現代はさまざまなビジュアルにあふれていますが、私のルーツは写真集。中高生の頃、写真部に所属していた私はスティーブン・ショアやエグルストンなどのニューカラー写真に惹かれていました。世代的に『relax』や『STUDIO VOICE』などのカルチャー雑誌の全盛期。ホンマタカシさんが出したrelax特別編集『NEW WAVES』の波のカバーが、雑然としたコンビニの本棚に並んでいるのを手に取り『え?波だけ?』と、ページをめくりながら衝撃を受けたのを覚えています。
最近感じているのは情緒的なムードの高まり。インスタグラムの影響もあってか少し前の研ぎ澄まされた“ハイクォリティ・ハイセンス”から、あえての外しも込みの“ロマンティックでメランコリック”な方向に向かっているように感じます。ハイテクにしろ、ローテクにしろ、一番大切なのは心の琴線に触れるということ。アナクロ回帰により過ぎず、懐かしむ気持ちと最先端を楽しむ気持ちは同時にキープして、現代ならではの表現にワクワクしていたいですね」
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1 / 3写真を見ることが多いという上西さん。青く、情緒的な感覚を、現代的にアップデートした3冊の写真集をセレクト。「ジェイミーやペトラ・コリンズは、ナン・ゴールディンやライアン・マッギンレーが表現してきた切なさや儚さのその先の、ブルージーな空気感が現代らしい。一方で荒木さんが昔から表現されてきた儚さも、今なお古くなることなく、新しい印象で鮮烈」
“Harsh Citation, Harsh Pastoral, Harsh Münster”
Ei Arakawa
2017 music by Christian Naujoks, lyrics by Ei Arakawa and Dan Poston, metal frames by Gela Patashuri. Produced for Skulptur Projekte 2017, Münster. Photo Henning Rogge.
Gucci Spring Summer 2018 Campaign: Gucci Hallucination
テクノロジーとアートの融合で、新しい魅力を放つ作品たち。現代美術家・荒川医のインスタレーションは、LEDで再現された絵画がミュージカルを演じる、ハートフルな作品。下2枚はスペインのアーティストIgnasi Monrealのデジタル絵画がメインビジュアルとなった、GUCCI 2018SSのキャンペーン。ミケーレになってからのビジュアルには毎回魅了されているそう。
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上西祐理
電通所属のアートディレクター。1987年生まれ。東京都出身。2010年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。ポスター、ロゴ、パッケージなど単体の仕事から、ブランディングやキャンペーンなど多様な仕事で活躍。
Text: Aguri Kawashima