自分らしい花屋を目指して。whole ✕ 綱川禎子さん – 店と人 vol.3

自分らしい花屋を目指して。whole ✕ 綱川禎子さん – 店と人 vol.3

ワインバーの一角にできた、週末限定の花屋


念願だった自分の店をようやく開いた人、
長い間、粛々と同じ場所で商いを続ける人、
いくつもの店を切り盛りする気配り上手な人。

働く人の想いや店に集う人の個性が交じり合い、あたたかな人となりを感じる店が、ここ東京にはいくつもある。不器用でも、ひたむきにモノと向き合い続けるその姿にすっかり魅せられたエディターYが、西へ東へと大奔走!

愛すべき「店と人」を応援する連載第3回です。

Photo:Ippei Saito

 

whole_ginza_008

vol.3 

「whole」

綱川禎子さん


 

富ヶ谷の交差点から代々木公園を背に、井之頭通り沿いを歩く。

普段ならあまり通らない道だけれど、(パン屋〈ルヴァン〉に行くくらい?)

少し進んだ道の左側に、わざわざそこに行く理由があった。

今日は金曜日。週末限定の花屋『whole(ホウル)』の営業日だ。

 

知り合いが営むワインバー『TOMIGAYA CALME(トミガヤ カルム)』の一角を借りて、綱川禎子さんが小さな花屋をオープンしたのが今年4月のこと。

「充分な経験があるわけでも、自分に自信があるわけでもない。ただただ花が好きで、そんな自分を応援してくれる人がいたからこそできたお店です。」

そう遠慮がちに語る彼女が、控えめで後ろ向きな自分の性格を忘れてしまうほど夢中になれるものが、花だった。

『whole』とは、どんなお店なのか。店主の綱川さんに話を伺った。

 

ワインバーの一角を使って、小さな店をオープン。

「勤務していた花屋を卒業するタイミングで、昔からお世話になっている知人に声をかけていただいたんです。うちはワインバーだけど、営業していない昼の時間帯でこのスペースを使ってみたらどう?と。いつか自分の店をやってみたいという気持ちはありましたが、ゼロからひとりで立ち上げるほどの準備は、とてもじゃないけどまだ追いつかなくて……。だから、そのお誘いは願ってもない話でしたし、これも縁だと思って、急いで準備を始めました」

whole_ginza_005香水の試香紙「ムエット」をイメージして形を工夫したというショップカード

 

気軽に遊びにいける花屋。

「お店の名前である『whole』には、 ―【all(全部)】を取り囲む、周りのものすべて― という意味があります。花やブーケだけではなく、この花屋を構成する空間、そのすべてを大事にしていきたいと思って名付けました。

お客さんの中にはSNSをきっかけに来てくれる方もいらっしゃいますが、今は友人たちが日替わりで来てくれているような状況です。でも、それはわたしの理想でもあるので、嬉しくもあるんです。椅子やテーブルがある場所をお借りできたので、時間に余裕がある方にはお茶やお菓子をお出ししています。”気軽に遊びにいける花屋”ってなかなかないですし、そんなスタイルでもアリかなと思ったんです。都内にはたくさんの花屋があるので、うちみたいなマイペースな花屋が一つあってもいいなと(笑)。もっと都心部の立地で考えたこともありましたが、せかせかしていない環境が自分に合っていると思ったので、最初の場所がここで本当に良かったですね」

 

一人でできること。

「オープンしてから約一ヶ月。毎週、試行錯誤していますよ。ブーケを注文してくださる方は、デザインを綿密にオーダーされるというよりは、『whole』らしい感覚で作ってください。任せます! と言ってくれる方が多いんです。予算と用途を聞くだけで、あとは色味もこちらに委ねてくださるので、その言葉は何より嬉しいですね。

一人でやるということは、できる範囲が限られます。たくさん注文を受けることでこだわりが欠けてしまうのは嫌なんです。自分のキャパシティをよく考えて、無理せず、出来る範囲でやることを心がけています」

whole_ginza_011

 

『whole』のお花とは。

「どんな系統か分からない、というのが正直なところ。言葉にするのは難しいですね。どちらかというと、派手ではなくシック。ところどころに遊びが入っていて、大人も楽しめるお店を目指しています。

最近はドライフラワーのアレンジも始めました。お花のバランスももちろんですが、リボンのチョイスひとつが全体の表情を変えるんです。新しいものを恐れない感覚を信じて、自分が面白いと思う組み合わせを試しています。個性という意味では、前職であるアパレルの現場で培った感性は生かしたいと思っています」

whole_ginza_004

 

アパレルからの転身。

「実は以前、千駄ヶ谷のセレクトショップ『ロンハーマン』に勤務し、販売とディスプレイデザインを担当していました。限られた空間で表現すること、異素材のレイヤードで洋服のコーディネイトを組むバランス感覚は、ブーケを作る際にも生かされていると感じることはあります。特に、花の素材感や色合わせにはこだわっています」whole_ginza_003

 

夫からもらった花束

「実は昔……、お花が苦手だったんです。というのも手入れが下手で、すぐに枯らしてしまうことが多くて(笑)。そんなわたしに、付き合っていた頃から夫が毎月、懲りずにお花を贈ってくれていました。枯れたらドライフラワーにしていたので、意図せず日常的に花がある生活を送っていたんです。そんなある日、ふと花を眺めていたら『お花っていいな……!』という気持ちが芽生え、それからどんどん惹かれていきました。当時、働いていたお洋服の現場も大好きだったので、かなり悩みましたが、それをきっかけに転職することにしたんです」

whole_ginza_013お店のロゴ(フォント)は美容師兼書道家としても活動している旦那さんによる手書きで作成

 

自分らしい店、自分らしい働き方を探す。

「ネガティブでクヨクヨと悩みがち、引っ込み思案な性格です。ただ、お店に関して強い意思を持ってやれているのは、花が好きだから。

嫌いなものはあまりないけれど、好きなものに対する執着心が人一倍ある。花をやりたいと思ってしまったから、こんな性格でも店を始めてしまったんです。私をよく知る周りの友人たちはびっくりしたと思います(笑)。

自分らしい花屋ってなんだろうなと考えた時、転職したことで得た繋がりや、いろんな経験をもって経た感覚は大事にしたいなと思いました。『whole』にできること、『whole』ができることを見つけて、お客さんにとって特別なお店になりたいと思っています。

 

whole_ginza_007

綱川禎子 Yoshiko Tsunakawa

〈ロンハーマン〉に勤務し、販売員&VMDを担当。その後転職し、都内のフラワーショップにて花の基礎知識を学んだ後、独立。2017年4月にフラワーショップ「whole」をオープン。

whole_ginza_015

Whole

東京都渋谷区富ヶ谷1-37-1

(金・土)12時〜17時 (日)11時〜18時

*営業日はinstagramで要確認

www.instagram.com/whole_tokyo/

 

エディター 山本香織

何を隠そう、ズボラです。年々おじさん化しているアラサーですが、そんなわたしも、部屋にお花は欠かさないようにしています。郵便受けが溜まりがちでも、自炊を怠っていても、花を飾っていれば万事OK。花があれば、それでいいのだと自分を許してしまいがちです。

 

Text:Kaori Yamamoto

#Share it!

#Share it!

FOLLOW US

GINZA公式アカウント

PICK UP

MAGAZINE

2019年7月号
2019年6月12日発売

GINZA2019年7月号

No.265 / 2019年6月12日発売 / 予価880円

This Issue:
クローゼットスナップ!/Tシャツ

あなたのクローゼット
開けていいですか?

...続きを読む

BUY NOW

今すぐネットで購入

MAGAZINE HOUSE amazon

1年間定期購読
(17% OFF)