20 Jul 2020
東洋医学で免疫力UP!夏の不調には「寝室の除湿」と「腹八分目」が効く。京風養生vol.8

体の調子がわるいと、表情どんより&仕事や勉強の効率が落ちて、心も落ち込んでいってしまう……そうならないために、日々何ができるの?そんなあなたの駆け込み寺が、京都・左京区で鍼灸院を営む安東由仁さん、通称ゆにさん。京都のよもやま話とともに、東洋医学的見地から、かんたんにできる養生術を教えてもらいます。
この春から初夏にかけては、いつもと違う暮らしに慣れず気が張っているうちに、あっという間に過ぎていったような感じでした。
新型コロナのような疫病は、治療に即効性が求められるため、東洋医学がどちらかというと苦手にしている分野です。けれど、東洋医学の「養生」に基づいた暮らし方で自分の元気を保ち、外からの悪影響に打ち勝てる「可能性を高める」ことはできると思います。
養生は「休む・食べる・動く」のシンプルな3要素からなっています。体と心を健やかに保つためには、この3つともが満たされているかに注目するとわかりやすいです。
夏の毎日養生①
入眠前に寝室を
除湿しておく
まず「休む」ですが、これは基本的に睡眠のことを指します。東洋医学では目に見えないエネルギーを「気」と呼びますが、この「気」の多くは眠っているあいだに蓄えられます。特に、夜間に眠るのが大切です。
「気」はいくつかの種類に分かれます。そのうち細菌やウイルスから体を守る、いわゆる免疫の機能をつかさどっているのは「衛気(えき)」。これが体表を巡ることで、病の原因が外から入ってくるのを防ぐと考えられています。でも睡眠不足だと、衛気の量が足りなくなってしまいます。
養生の中でいちばん難しいのは、実は「休む」なんじゃないかなと思います。充分眠るためには、忙しい日々の中で「何をしないか」を決めて、相応の時間を捻出することが必要だから。
今年はたとえばリモートワークなどで、毎日の「当たり前」を見直した人が多そうです。一歩進んでこの機会に、「充分な睡眠時間を確保するには?」という視点でタイムマネジメントをしてみてはいかがでしょう。
また湿気が高い時期は、睡眠環境に注目を。梅雨どきや雨の日に調子が出ない人でも、ちょっとしたコツでだるさが改善しますよ。たとえば夜寝る前に、除湿機を使って寝室の空気を乾かしておく。暑くなってからも、先に部屋を除湿しておけばエアコンの効きがよくなり、温度を下げすぎなくても涼しく感じられます。
寝間着や寝具をコインランドリーでカラッと乾かしておくのもGOOD。もしシーツを買い換えるならリネンのものを。ひんやりとした肌触りでおすすめです。想像以上の気持ちよさで、気分転換にもなるはず。
夏の毎日養生②
おなかが不調なら
食べすぎない
次は「食べる」について、体の内側からの湿気対策をお伝えします。大切なのは、おなかへの負担を減らすことと、湿気を増やすものを食べすぎないことです。
「食欲が出ない」「便秘ぎみかも」「便がゆるいかも」。そんな「なんか変だな?」くらいの胃腸の不調を抱えたときはまず、食べる量を控えましょう。夏の湿気は、おなかの満腹センサーをぼんやりさせます。ダラダラ食べ続けてしまうと、ますます調子が悪くなるので気をつけて!特に甘いものや脂っこいものは、体内に湿気を増やしやすいので要注意。
余分な水を体の外へ出す働きを助けてくれるのは、豆類、うり類、海藻類。たんぱく質として、脂の多い肉や魚は、豆腐や豆に置き換えるのがいいかもしれません。カフェオレやカフェラテのミルクも豆乳に替えるのがおすすめ。
とはいえやはり何を食べるか以上に、「食べすぎないこと」を優先しましょう。腹八分目に抑えてさえいれば、おなかは元気でしっかりと働きます。
夏の毎日養生③
オンラインで楽しく
エクササイズを
もうひとつ体から湿気を追い出す方法は、汗をかくこと!ということで、最後は「動く」について。リモートワークが主流になり、あちこちのフィットネストレーナーやヨガインストラクターのみなさんが、質のいい動画配信やオンラインクラスを始めています。
湿気のだるさには、とにかく運動量があって汗をかけるエクササイズや、手足を振り動かして体内の流れを勢いづけてくれるダンスが効きます。自分が楽しい気分になれるプログラムを探してみましょう。ただスタミナに自信がない方は、あんまり汗をかくと体力を奪われてしまうので、控えめにしてください。
なお雨の日の朝はだるくて起き上がるのがしんどかったりしますが、覚悟を決めて動いてみると、徐々にしゃきっとしていくことが多いもの。本当に体調が悪いとき以外は、「えいっ!」と勢いをつけて活動を始めてしまいましょう。
最近は哲学の道から南禅寺のあたりを、毎日散歩していました。例年なら観光客であふれる時期ですが、今年は人出が少なく、周囲と距離を取りながら静かに歩けたのは贅沢でした。春は沿道の桜を眺めながら。梅雨はお気に入りの雨具を身につけて。日々同じ景色を目にしているはずが、どんどん季節が進んで、新緑が濃い夏の緑に向かい、日に日に太陽が高く、光が濃くなっていきました。今年の上半期に覚えた散歩の楽しみを、引き続き満喫してみようと思っています。
安東由仁 あんどう・ゆに
鍼灸師。京都生まれ。20年間アスレティックトレーナーとして勤めたのち、京都に戻り、左京区・鹿ヶ谷にある町家で「ゆに鍼灸院」(完全予約制)をオープン。治療だけでなく、暮らしの中でできる養生術も伝えるなど、“自分をバージョンアップ”するためのお手伝いをしている。
@humanitekyoto
humanitekyoto.com
Text: Yuni Andoh Illustration: Ippan Nakamura Edit: Milli Kawaguchi