自分らしく装うこと。思春期にmc SisterとOliveからその種をもらった。 いつかきちんと実らせたくて、編集Kがチープ・シックの達人を訪ねて考えた。
教えて!チープ・シック先生02 スタイリスト船越綾さんの「古着が主役の一週間スナップ」
『チープ・シック』という本の存在を教えてくれたのは船越さんだった。「mcシスターやオリーブから教わったおしゃれの〝核〟みたいなものがここに全部書いてある!」と興奮しながら、ほぼ同い年の彼女の地に足のついた上品な着こなしのファンにもなった。だからチープ・シックと聞いてまず思い浮かべるのは船越さんだ。結婚してニューヨークに移り住んでから、彼女はもともとの古着好きに拍車がかかっている。まず日本よりも値段が安いうえにサイズ展開が豊富なのが魅力だそうだ。たとえばメンズのXXLのハンパない大きさのシャツをどう自分らしく着るかが醍醐味。最初はシャツやデニムだったのがエスカレートして、掘り出し物を見つけるためにハードコアなスリフトショップにまで行くそう。最近はスイングトップやサイクリングシャツなどスポーツアイテムが気になっているという。「あとはやっぱり本物のもつ強さに惹かれる。デザイナーのソースとして最新トレンドとリンクしてることもよくあるし」。そうだ、このシンプルで本質的な考え方が船越さんらしさだ。そのままのサイズ感を生かすこともあれば自分好みの丈やワイドに直して着ることも。彼女の場合ハイブランドのドレスダウンに使うのではなく古着は主役。というかほぼ全身古着。それでも安っぽくも古くさくも見えずいつもフレッシュで品がいい。そのヒミツを知りたくて、1週間のスナップをNYから送ってもらった。
「スリフトショップで買ったXXLのデニムジャケットの中はサイクリングシャツ。実は袖が赤で結構派手なの。スポーツアイテムはメインで着ると強過ぎることもあるからバランスを気をつけてるよ」(船越さん、以下同)
「これも袖口を3回くらい折って着ているビッグサイズのハンティングジャケット。内側のポケット部分を外して裾に出して、コートみたいにしました。こういう本物をファッションとして考えて工夫して着るのも好き」
「70’sのスイングトップにメンズのLサイズのアロハシャツでトムボーイ風に。ブラックデニムはリーバイスの631で、好みのサイズ感に直しました。お直しは15ドルくらいで腕のいいところがあるからよく利用するよ」
DAY4「このトップもXXLくらい。青、赤、グレーの生地を縫ってつなげてる不思議なデザインに惹かれて。昔のスウェットは張りがあるからフォルムが出て面白いの。1枚で着るのはいいけど重ね着はモコモコして難しいかもね」
DAY5「トラッドスタイルだけどバランスが面白いでしょ? ラルフ ローレンのXLのオックスフォードシャツにカレッジスウェット、ブラウンのデニムはリーバイスの512。ラインソックスでスポーティな要素もちょっと入れて」
「このトレンチコートはもう10年以上前から持ってる。最近着てなかったけれど久々に袖を通したの。ラルフ ローレンのコットンストライプのシャツを、裾を片方だけデニムにインしたりして全体のバランスを考えてます」
DAY7「これ着てたら『あなたチアリーダーなの?』と声かけられたこともあるよ。こういうギリギリのものを遊び心を残して大人っぽく着るのも好きなんだ。きれいな(古着ではない)リーバイス606のローデニムを合わせて」
スタイリスト 船越 綾さん
NYを拠点にGINZAや広告などで活躍中。着こなしのもう1つの大きなポイントは靴とバッグはきれいにすること。今回持っているバッグはJ.W.アンダーソン、2種類のレザーシューズは共にサンローラン、真っ白なスニーカーはリーボック。
Photo: Seiji Fujimori