Vol.2
スタイリスト
湯浅 美知子さん

心に残る何かを生み出せたら

ファッションシーンの最前線に立つスタイリストには、必ずと言っていいほど彼/彼女だけのスタイルがある。連載第2回目は、オリジナルのセンスで活躍する人気スタイリストの湯浅さんが登場。そのビジュアル表現の原点と、彼女が影響を受けてきたカルチャーシーンを聞く。

「スタイリスト」とは。検索してヒットするのは、 “服飾の指導・演出を生業とする人”。でも本来は“文体にこだわる作家”を意味する言葉らしい。後述するけれど、作り手としての湯浅さんはその文学的な語源が実はしっくりとくる。そもそも、彼女の下地を作ったのは90年代のカルチャーシーンだ。

「中高生時代が90sカルチャーのど真ん中。中学に入学したら、おしゃれな先輩がたくさんいて『カッコいいなあ』と憧れたんです。音楽でもファッションでも“渋谷系”が全盛で、先輩に教えてもらってラジオを聴いたり雑誌を見たり……。コーネリアスやスチャダラパー、カヒミ・カリイとか、小学生の時には聞いたことなかった固有名詞がたくさんでてきて、いろんなことがとっても大人の世界に見えて。最初のカルチャーショックでしたね」

気になるものがあれば図書館に行って調べたり、学校終わりに電車に乗って代官山や原宿に通ってみたり。なんでもワンクリックの今の時代とは違って、自分で時間をかけて得たもの、感じたものが、彼女を“形成”してくれたと振り返る。

「ハーモニー・コリンの『キッズ』(1995年)や『ガンモ』(97年)『ジュリアン』(99年)に描かれた世界に、ちょうど等身大で共感した世代。ファッション誌も好きでしたが、当時はカルチャー誌のポートレート寄りのファッションページが大好きで。特にクロエ・セヴィニーを始め、雑誌『H』に出てくるような女性に憧れていました。周りに媚びず、自立した大人っぽい女性….華奢な体にサラッと古着を着ているとか…..好きな女性像は、いまだに変わっていない(笑)。ファッションや佇まい、音楽や映画も、すべてのカルチャーシーンがリンクしていた面白い時代だったと思います。」

本屋に図書館に映画館。夜はライブハウスやクラブが居場所だった高校時代。ゴダール映画の台詞から派生して詩人や哲学者について調べたり、20代の頃はアルノー・デプレシャンにはまって彼の映画理論に共鳴したり。スタイリストの仕事には欠かせない“リサーチ”も昔から「多分、趣味(笑)」と語るほど。何かにフックしたらとことん掘り下げて研究する。

「小さな頃から本屋や図書館が大好きで、いつまでも文字や写真を眺めたり紙に触れていたかったから、とにかく何か作っているシーンに参加しようと思いました。でもどんな仕事で関われるかわからなくて、好きだった写真を志してスタジオ経験をしたこともあります。スタイリストはお手伝いを頼まれたのがきっかけ。いろんな現場に携わって、きちんと本格的に目指そうと、一線で活躍されているスタイリストの方、何人かにアシスタントとして就いて勉強しました」

現在、数々のモード誌や広告のスタイリングを手がけているが、今回のルミネのキャンペーンでも湯浅さんがコーディネートを担当した。

「テーマは『TOKYO MIX CULTURE』。アートディレクターからのディレクションに合わせ、個性の異なる4人の女の子、それぞれのキャラクターをイメージしました。ファッション誌やカタログともまた違って、キャンペーンなのでキャッチーさ、分かりやすさを意識して、個性を作り出すために素材や柄のレイヤードで表現しています。その時々のテーマに合わせて調節できるようになったのは、いろんな人の下で学んだり、下済み時代に幅広い仕事を経験したことが大きいかもしれません」

ファッションだけでなく、ディレクションからエディティングまで全てを担当することも多い。“作者”としてひとつの絵作りにこだわる姿勢は、それこそ本義の“スタイリスト”だ。

「アシスタント時代、自分の方向性に悩んだときに一番影響を受けたのは雑誌『パープル』の誌面。マーク・ボスウィックやアンダース・エドストローム、高橋恭司やホンマタカシ。写真家たちがいわゆる“ファッション写真”と気負わずに、まるで自分自身の作品の延長線上のように、ファッションやモードを表現するスタイルにハッとさせられました。どんなスタイリングでも、それを伝えるためのカメラマンの視点や技量によって、ビジュアルが決定することがあるように感じます。最終的なアウトプットである写真そのものが、服や被写体含めて輝くのであれば、私は現場でいくらでも調整したいと思ってしまう。自分のスタイリングが“絶対”だと考えないようにしています。だから服がミニマムになることは多いですね」

インタビューの最後になって、大きな手提げ袋いっぱいに持ってきてくれた私物の写真集や雑誌の数々から、少し照れながら、そっと1冊の本を取り出す。アンドレ・ブルトン著作『シュルレアリスム宣言』。色あせた装丁に味がある。

「実はこれ、私の“原点”なんです。高校時代に古着屋で偶然見つけた古本。シュルレアリスムという言葉も知らずに開いた本の間には、帯裏にローマ字で走り書きしたメモが挟んであって。“Nomiowatte mada attakai coffee cup”と綴ってあったんです。終わってもまだなお続く余韻……。ひと目見て『これだ!』って思いました。例えば、読後すぐにもう一度読み返したくなるとか、この一冊は残して置きたいと願うような気持ち。そういう言葉にはできない何かを、自分でも生み出してみたいって気づいた。ブルトンはこの本のなかで『美とは痙攣でなければならない』と宣言しているんです。それくらい、ハッとするものなくして感動って生まれないですよね。視覚に訴える表現を通して心に留まるものがあれば、それは価値ある何かだと思うんです。自分もそうやって刺激を受けてきたから、作り手である以上その“何か”を目指し続けたいなって思います」

スタイリスト
湯浅 美知子
ゆあさ・みちこ 1981年生まれ、千葉県出身。スタイリスト青木千加子氏に師事後に独立。無類の書籍・雑誌・映画好き。高校時代のアイドル、レオス・カラックス監督が来日した折には、「給料袋並み(笑)」の分厚いファンレターを手渡したそう。アシスタント希望の新人には、まず三島由紀夫の『葉隠入門』の読破をすすめている。

Photo:Kaori Nishida Illustration: aina m snape Text: Aiko Ishii
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