透き通ったものは、
見ていてなんだか気持ちがいい。
光が差し込めば、涼やかな影を落とす。
それがきれいな形なら、なおのこと。
手に取り使いはじめれば、
きっといい夏がやってくる。
愛でるべき、6の透明な形の妙。

いわしやの洗眼瓶
なぜこれほど花が似合うのか。
調理器具や工具など、あらゆる現場にプロが使う〝業務用〟があり、そのデザインされ過ぎていない道具にはなぜだか惹かれる。東大の赤門前にある老舗の医療器械店「いわしや」で見つけた洗眼瓶もまたしかり。文字通り、洗浄液を入れて目を洗うために作られたものなのだが、業務用とは思えない繊細さと、どことなく漂うミステリアスな雰囲気がたまらない。医療器具特有のオレンジがかったブラウンもシックで上品だし、コロンと丸い手のひらサイズも愛らしい。おまけに、液を入れる部分の緩やかな曲線は職人による手吹きだからニュアンスに味わいがあり、注ぎ口は約3mmと極細。底面には親指を添えるための凹みがあり、どこを見てもグッとくるポイントだらけなのだ。この繊細さを生かし、初夏は一輪挿しに。銀座にある「野の花 司」で買った可憐な花が凛と映える。

ヨッヘン・ホルツのジャグ
初夏のカラーパレット。
「スイムスーツ・デパートメント」でポップなガラスジャグを見た瞬間、LAのピーター・シャイヤーの新プロジェクトか、はたまた1980年代に一世を風靡したイタリアのデザイン集団「メンフィス」のビンテージかとポストモダン方面を連想したが、聞けば、イギリスのイーストロンドンを拠点にする新鋭のドイツ人アーティスト。メインで製作しているのは生活用品ではなく、アブストラクトなネオンサインのオブジェというのも興味深いけど、とにかく、〝風になびく新緑のような淡いグリーン〟〝初夏の夕暮れどきを思わせるオレンジ〟〝晴れた日の雨雲のようなグレー〟など、自然界の何かにたとえなければ表せない色使いにうっとりしてしまう。フォルムも動物でたとえるならペンギンのような愛くるしさがあり、色も形も、キュンキュンするツボのド真ん中を突いてくる。