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ADEAM
10TH ANNIVERSARY

PROMOTION

10 August 2022

デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから

2013年にニューヨークコレクションデビューを果たした〈ADEAM/アディアム〉が10周年のアニバーサリーイヤーを迎えた。メイドインジャパンを掲げ、日常のラグジュアリーを世界に発信する〈アディアム〉。デザイナーの前田華子さんにプライベートからブランドの10年の歩みまでロングインタビューで語ってもらった。

 

INTERVIEW with HANAKO MAEDA

——Q. NYは〈アディアム〉の原点ですよね。華子さんは5歳から現地で暮らしたそうですが、どんな子供時代でしたか?
NYに引っ越した当初は英語がまったく話せなくて。でも、アメリカでも当時、朝に『美少女戦士セーラームーン』を放送していて、それをきっかけにお友だちができました。幼い子どもながら、日本文化の偉大さを知った最初の体験でした。カトリック系の学校に通っていて、校舎はマンハッタンの中心にあり、体育の授業はセントラルパーク、美術の授業ではメトロポリタン美術館に行くような環境でした。古代エジプトやギリシャの歴史、16世紀のルネッサンスの芸術、そして20世紀のジャクソン・ポロックやアンディ・ウォーホルのようなコンテンポラリーアートまで、教科書ではなく実物を目にしながら学んで。そうやって早い段階から、NYの街に存在する文化に接することができたのは大きな経験になりました。
——Q. 大学で美術史を学ばれたり、〈アディアム〉でもよく芸術がインスピレーション源になっていますが、そんな幼少期の影響もあるんでしょうね。
そうですね。昔から美術の歴史が大好きでした。アートは高尚な面だけではなく、その当時の社会情勢を反映しているところもあって。ニュースを伝える瓦版のような役割もあり、その時代に生きている人がどんな状況にいて、何を考えていたかが作品を通じてわかります。そこに思いを馳せるのが楽しくて。ファッションの歴史もそうですよね。女性の服でいうとコルセットからの解放だったり、紳士服の多くが軍服や制服がベースになっていることとか。今の時代のトレンドでもその歴史的背景を考えることで、ディテールやデザインに意味を持たせることができると思います。

女性をコルセットから解放したマドレーヌ・ヴィオネは、強く影響を受けたデザイナーの1人です。パターンワークから服を作ることを研究した人で、ジャージー素材やドレーピングの美しさは今のファッションに通じるところがあります。ヴィオネの本にはパターンが公開されていて、学生時代にそれを拡大コピーして実際に服を作ってみたりしました。

デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから

今でも時折手にするマドレーヌ・ヴィオネの本は学生時代から大切にしている1冊。ファッションの歴史を紐解く書籍やバレエの写真集などからもインスピレーションを得ることが多いという。

——Q. そのころからファッションを志していたんですか?
実は私、最初は経済学部専攻で大学に入りました。両親はファッションの仕事をしていますが「厳しい世界だから、勉強が好きなら他の道を目指してもいいかも」と言ってくれて。自分でも、卒業したらきっと投資銀行とかでバリバリ仕事をするんだろうなって思ってました(笑)。そのうちに2008年にリーマンショックが起きて、尊敬していた先輩や優秀な人たちが突然職を失って。それを目の当たりにして、収入やキャリアで仕事を考えるのではなく、たとえ1円のお金を稼げなくても日々時間を費やして苦にならない、自分が打ち込める仕事をしようと考え直しました。
——Q. それは人生を変える転機でしたね。そこからファッションの道へと行き着いたのは?
たまたま学校に募集が来ていた『US Vogue』誌でのインターンシップがきっかけです。今年1月に他界された名エディターのアンドレ・リオン・タリーの元で働けて、当時は学生にもいろんな経験をさせてくれたんです。グレース・コディントンの現場では、パリでのショー発表直後のオートクチュールの撮影のリサーチを任されて、ニューヨーク公立図書館で調べてムードボードを作りました。そのときに、“ファッション”の表現がファッションだけで完結するものではなく、いろんな文化をつなげる役割があるのだと知って。それで専攻を美術史に変えて、ファッション科はなかったので夏休みを利用してパーソンズ・パリに3ヵ月間留学しました。そこで、縫製やパターンワーク、ステッチなどの基礎を学び、週末になると美術館に行ったり、蚤の市やマレ地区の古着屋さんを巡ったりして。ヴィオネの服を研究したのもそのころです。洋服と西洋文化の切っても切れない歴史を感じて、アートスクールに行ってなかったからこそ、そこはきちんと勉強しなければと思いました。
——Q. デザイナーになろうと考えて学んでいたんですか?
本が大好きだったので、当初は文章を書くエディトリアルに興味があったんです。でも、大学3年になって〈フィリップ・リム〉のアトリエで半年ほどインターンをさせてもらうことができたんです。服づくりから販売、PRまですべての機能を自社で完結していて。アトリエでのモノづくりは、1人の頭のなかにあるヴィジョンをたくさんのスタッフがチームになって6〜8ヵ月間くらいをかけて三次元の形にしていく作業。多くの人とのコラボレーションを経て、実世界に出現するということを知って、とても感銘を受けました。将来的に自分はこういうことをやりたいのかもしれないと思い始めたのが、そのインターンでの経験でした。

 

——Q. 卒業後、すぐにデザインを始めたんでしょうか。
外で働いてもどうしても周りに気を遣わせてしまうだろうから、ファッションに興味があるなら〈フォクシー〉で働いてみてはと両親からアドバイスをもらいました。広報として入社して2年働くうちに、撮影中などにこんなアイテムがあったらとか、こんなルックがいいのではと思うことが少しずつ多くなって。自分はゼロから有を生み出すことが好きなんだと気づいたんです。

ちょうどそのころ、ロイック・プリジェント監督が撮影した〈プロエンザ・スクーラー〉のドキュメンタリーを観て、ニコラ・カイトというモデリストを知りました。モデリストとは、パタンナーのようにデザイン画の仕様から型紙を作るのではなく、デザイナーとコラボレートしながら生地をドレーピングしてイメージを形にしていく職業で、ニコラは〈エルメス〉時代のマルタン・マルジェラや〈ニナ・リッチ〉でのオリヴィエ・ティスケンスのモデリストを務めた人。NYにご自身のアトリエを作られていると知り、「この人に会いたい」と出張のときにアポイントを取って訪ねました。自分が考えていたイメージを10枚くらいデザイン画に描き溜めて見てもらったのですが、たまたまコレクションの狭間のタイミングだからと受けていただけて、カプセルコレクションを作ることができました。そこからきちんとブランドとしてやっていきたいという想いが芽生えて、〈アディアム〉が誕生しました。

デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから
デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから
デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから

FALL WINTER 2022 COLLECTIONより

CAPE STYLE

Aをモチーフにしたオリジナル柄のワンピースはたっぷりとしたドルマンスリーブとボウタイにサッシュベルトで上品な印象に。共柄のワイドパンツとセットアップで着こなして。大きな襟ぐりのダブルフェイスウールのケープが優しくまとめ上げる。ケープ¥198,000、ドレス¥176,000、パンツ¥71,500

TRENCH COAT STYLE

サイドに細やかなプリーツをあしらったサテン地のトレンチコートを主役に。襟と袖のシャツ地が取り外せるプレッピーなV開きカーディガンと〈アディアム〉では初となるキルティング素材のフレアスカートをコーディネート。コート¥220,000、トップス¥82,500、スカート¥115,500、イヤリング¥35,200、リング ¥25,300、シューズ¥138,600

PANTS STYLE

袖をカットオフしたストライプシャツと濃紺のダブルフェースウールのミニスカート。花柄のジャガード生地のカーゴパンツを合わせたレイヤードスタイル。トップス¥63,800、スカート¥70,400、パンツ¥85,800、イヤーカフ¥27,500、ネックレス ¥26,400、右手:リング¥27,500、左手:人差し指&中指リングともに¥31,900、シューズ¥107,800(以上アディアム|アディアム東京ミッドタウン店)

 

——Q. 描いたイメージが形になったのを目にして、どんな気持ちでしたか?
最初は型数も絞られていますし、当然〈フォクシー〉を手がけているような大きな工場では縫製も引き受けてもらえなくて。今にして思えば、技術的にも足りない部分やつたない点がすごくたくさんあって、実際に形にする作業がどれほど大変なのかと身に沁みました。でも、最初から順風満帆ではなかったからこそ、続けてこられた10年だったのかなと思います。

コレクションが完成して「完璧だ」と感じたら、おそらく次のコレクションを生み出していく力はなかったはず。「こうすれば良かった」「もっとこうできたのでは」という思いが必ず出てくるから、早く次に取りかからねばという気持ちになって。何も経験がないなかでブランドを立ち上げて、若さゆえの無謀さもあって突っ走ってこられた気がします。

デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから
——Q. デザイナーとしてもビジネスとしても着実に成長して、成功を収めている印象がありますが、振り返ってみてぶつかった壁も大きかったということでしょうか?
そうですね。知名度もないなかで、いきなり百貨店でのビジネスができるわけもなく、断られたことも当然何度もありました。自分のホームであるNYコレクションに挑戦したいと思ったときも、最初はお客さまが来てくれるかどうか不安でした。服を見てもらえずバイヤーが帰ってしまうとか、若手デザイナーなら誰しも経験する出来事もありました。そんななか、本当に運よく最初のコレクションをサックス・フィフス・アベニューに買い付けてもらうことができて。でも、厳しさを経験できたからこそ、ひとつひとつのことに感謝の気持ちを持てるようになったと思います。

若手デザイナーはどうしても華やかな方に目を向けがちですよね。でも単純に、生地を買うにしてもサンプルを作るにしても、人件費や光熱費も、何をするにも資金がないとブランドは続けられません。だから、“売れる”ことに責任があるんです。ミウッチャ・プラダが「ファッションはアートではない」と語っていますが、私もその言葉にすごく共感します。ただランウェイを飾るだけ、セレブリティが身につけるだけの服にはあまり価値を見出せなくて。綿を撚って、生地にして、服として作ったのなら、人に着てもらってこそ生きると思うんです。

デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから

今季を象徴する花柄のジャガード生地も、何度もの試作を経て作られたオリジナル。微差を突き詰め「頭のなかにイメージした理想の柄」を形にしていく。

 

——Q. “実用品”として着てもらえる服を作るということですよね。
〈アディアム〉のコンセプトとして最初からあったわけではないですが、いろんな経験をしていくなかで、やっぱりお客様に愛されるお洋服を作りたいという想いが強くなりました。そこからはデザインに対しても、もっと真摯に向き合うようになって。本当に人が着たいと思うデザインとはどういうものなのか、生地の機能性はこれでいいのか。〈アディアム〉で今大事にしている、シワにならず、自宅でホームクリーニングができるアイテムという点も、デザインする上でのお客さまへの優しさや思いやりだと考えています。

経験のあるデザイナーならブランドのスタートからそういうことを意識したはずですが、私はゼロ地点からの出発だったのでそれは運営しながら学んだことです。みんなにお給料を払うためにはコレクションが売れないとダメですし、世の中で着てくださる人が増えないとブランドの知名度も上がらない。毎シーズン、コレクションを発表していろんな方に評価していただきながら、何のためにブランドをやるのかという根本を少しずつわかっていった10年です。

——Q. 関わる誰もが潤えるモノづくりですね。生産の現場を守っていくことも〈アディアム〉では大切にされていますよね。
服のプライスは、基本的に工場の工賃、つまり縫製する人の人件費と材料費を見合わせて決まってきます。なら1枚のブラウスを1990円で売りますとなったときに、その工賃はいくらなのか。1枚10分ではできないですから、少なくとも半日や1日を費やして縫い上げますよね。1990円で売れるブラウスを作った人は、いったいいくらで働かされているのか? 私たちが安価な金額でファッションを消費する背景に、苦しい状況に立たされている人がいるということを頭に置いておいてほしいなと感じます。

たとえば、日本製やイタリア製のものも、単に高いものを売ろうとしてプライスがついているわけではないと思います。技術を持って、私たちと同じ生活水準で暮らしている職人さんが、1日8時間労働をして作られたものというベースがあっての値段です。そこは本当に個々の選択になるとは思いますが、モノづくりに携わる人間として、私個人は人が搾取されない環境で作られた商品を届けていきたいと考えています。日本には技術のある職人さんが本当にたくさんいらっしゃいます。海外では〈アディアム〉がメイドインジャパンであることに信頼を持たれていて「やっぱりクオリティが違う」と言われます。今、日本の工場は後継者問題に直面していて、若い人たちが興味を持てない状況にあったりします。そんななかで小さな1歩ですが、〈アディアム〉として日本の職人さんたちをサポートしていきたいという気持ちは強くあります。

デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから
デザイナー前田華子が紡ぐ 〈アディアム〉10年の物語と服づくりのこれから

Aのロゴを配したアーガイル柄のニットとプリーツがたっぷり入ったスカートをドッキング。シックなバーガンディー色と上品なスクールテイストが季節のムードを盛り上げる。
ドレス¥140,800、イヤリング¥33,000、人差し指リング¥31,900、中指リング¥25,300、シューズ ¥179,300、(以上アディアム|アディアム東京ミッドタウン店)

 

——Q. 節目のシーズンとなる今季のコレクションには、どんな想いが込められているのでしょうか。
10年を振り返り、原点に立ち戻ってNYでの思い出にフォーカスしました。アメリカでは9月に新学期なのですが、年始めに新しい制服を着て、少し紅葉したセントラルパークの並木道を歩いた思い出があって、そこからプレッピーでトラッドな要素を取り入れました。また、デザイナーとして初めてNYコレクションに参加した2013-14年秋冬のコレクションが、ブロードウェイミュージカルの『イントゥ・ザ・ウッズ』がインスピレーション源で、いろんなおとぎ話のキャラクターが幻想的な森のなかで出会うというストーリーで、そのイメージをまた新たに解釈したいと考えました。制服とファンタジーを融合させて、自分の経験したことへのノスタルジーや、10年前のデビューシーズンを再構築したコレクションです。
——Q. 9月にはまたNYでフィジカルなショーを開催されるそうですね。
最後にNYで発表したのが2020年の2月なので2年半ぶりのショーです。ちょうど大坂なおみさんとのコラボレーションを発表したときだったので、9月の発売ではなおみさんと一緒にリモートで取材を受けたりしました。この10周年では、モデルのキャロリン・マーフィーさんとサステナブルなコレクションを作ったのですが、それも100%リモートでコラボレートしました。デジタルでの発表もそうですが、この期間中に新たな表現方法を模索できたことは大きな収穫になりました。9月のNYでは、そうやってリモートでつながることができた方々と一緒に表現したいと思いますし、またランウェイでショーを発表できることがうれしいです。〈アディアム〉のルーツはNYですので、あらためて10年目からのチャレンジが今はとても楽しみです。

PROFILE

Hanako Maeda

5歳からニューヨークで暮らし、18歳でコロンビア大学に進学。2010年、卒業後より〈FOXEY〉の副社長とPRディレクターを兼任。2012年に〈ADEAM〉を立ち上げる。2013年、NYコレクションに初参加。最近はステイホーム中にハマった韓流ドラマをきっかけに、K-POPアーティストのファンに。
Instagram: @hanakomaeda

INFORMATION

問い合わせ

ADEAM 東京ミッドタウン店
Tel: 03−3402−1019

公式サイト
公式Instagram

CREDIT

Photo&Movie: Yoshiyuki Nagatomo Styling: Sumire Hayakawa(KiKi) Hair: SHOTARO(SENSE OF HUMOUR) Make-up: Sada Ito for NARS cosmetics Model: Aria Polkey Text & Edit: Aiko Ishii

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