タキシード姿で現れ、落ち着いた声で「よろしくお願いします」と、一礼。まるで英国紳士のようなエレガントな佇まいに、思わず見とれてしまいます。そんな福士蒼汰さんが今回『カイジ ファイナルゲーム』で演じたのは、“影の総理”と呼ばれる首相主席秘書官・高倉。藤原竜也さん演じる主人公カイジと、日本全国を巻き込んだ大勝負をする役です。嘘や欲望がうごめく“カイジワールド”で、福士さんはどんな経験をしたのでしょうか。インタビュー中はこちらの質問にじっくりと答えながら、ときどきおちゃめな笑顔も。プライベートのことにも触れつつ、いろんなお話を伺いました!


福士蒼汰を知るための10のこと。
「2020年は種まきの年。人生のすべてがつながる仕事だからこそ」
Q1.今回福士さんが挑んだのは、人気映画『カイジ』シリーズ最新作にして最終回です。どんな気持ちで臨みましたか?
まずは「えっ、またカイジをやるの!?」という驚きと、そこに自分が出演できるといううれしさがありました。しかも僕が演じるのはカイジと対峙する役だから、ちゃんと覚悟を持って臨む必要があるなと。そんなプレッシャーもありましたが緊張しなかったのは、たぶん、高倉というキャラクターが僕にとってやりやすかったからだと思います。彼は、自分の信念に基づいて生きている人間なんです。ひとつの大義があって、すべての言動はそこに起因しているので、何を考えているかわからない悪役では決してない。だから、ちゃんと気持ちを理解して演じられました。
Q2.撮影現場で印象的だったことはありますか?
あえてひとつ挙げるとすれば、藤原さんのお芝居のつくり方です。段取り→テスト→本番とだんだんボルテージを上げていくのが通常の撮影の流れなんですが、藤原さんって段取りのときが一番テンション高いんです。最初から大声を出せる、そのテンションにびっくりしました(笑)。でも「なるほどな、カイジのお芝居ってこういうふうにでき上がってるんだ」と、すごく納得しました。はじめに大きく出力して徐々にフォーカスを合わせていく、引き算の芝居というか……。僕自身も「ここまでやっていいんだ!」って許容されているのを感じたから、思いきり演じられました。
Q3.作中では、スマートなスーツ姿がとてもお似合いでした。官僚らしく見せるために気をつけたところはありますか?
……眼鏡です!(笑)銀縁の眼鏡って、すごく印象が強いですよね。あとは姿勢をよくするとか。それともうひとつ、低くて太い声のお芝居を心がけました。高倉は20代で首相主席秘書官を務めていて、本人としては若く見られるのを嫌がっているんじゃないかと思ったんです。ちょっとでも強気に見せたくて、声質にこだわりました。


Q4.今回、高倉とカイジが勝負するゲームの名前は「ゴールドジャンケン」です。そこで……福士さんのジャンケン術を教えてください(笑)。
僕、ジャンケン弱いんです(笑)。とっさのジャンケンだと、チョキを出す癖があるらしく。それこそこないだまで、ドラマの現場で菜々緒さんとあっちむいてホイをよくしてたんです、なぜか(笑)。そのときチョキを出してよく負けてました。
Q5.「ゴールドジャンケン」では、欲望のコントロールが勝負のカギになるようでした。福士さんは、欲望に強いほうですか?弱いほうですか?
強いほうです(即答)。……って言ってますが、どうなんでしょう(笑)。いや、でも弱くはないと思うんです。「これがなきゃダメ」みたいな依存もしないタイプだし。とくに物欲はほとんどないです。仕事についてもそうで、“この役がやりたい”というより、“与えられた役を全力でやりきる”ほうが、性に合ってます。


Q6.語学やアクションなど特技の多い福士さん。最近の趣味やブームはありますか?
最近はアニメをよく観てます。いま大人気の『僕のヒーローアカデミア』とか、『ジャンプ』系が多いかな。いままでアニメは、観るとひたすらハマっちゃうだろうからって、わざと遠ざけてたんですけど……近ごろ素直に観るようになったら、「やっぱり好きだなぁ」って実感しました(笑)。時間があるときと、たまに時間を惜しんでも観ちゃってます。
Q7.とくにおすすめの作品が知りたいです。
『BEASTARS ビースターズ』面白いんで、ぜひ観てみてください。擬人化された動物たちが全寮制の高校に通っている設定なんですけど、主人公のオオカミ男子が、ウサギの少女に恋をしちゃうんです。でも肉食動物と草食動物が恋愛するなんてありえないから、オオカミくんは「僕は肉食獣なのに、こんなんでいいのかな」って思い悩みます。彼は自尊心が低い青年なんですね。僕もどちらかというと自尊心が高くなくて、いつも「これじゃダメかも」「もっと頑張るべきだ」ってつい自分を追い詰めちゃうほうで。それでもこの作品を観ると、もっと自分のいいところに気づいて伸ばしていけたらいいなって思えるんです。

Q8.ファッションについても聞かせてください。この冬したいコーディネートはありますか?「あんまりファッションには詳しくない」とおっしゃっていたのを、どこかでお見かけしましたが。
ファッション誌の取材で言うのはあれなんですが、そうなんです(笑)。でもロングコートを着るのは好きです。ネイビーとか落ち着いた色で、中はゆるめのニットが多い気がします。着心地を結構重視していて。そういえば、ここ数年で服装に関して大きく変わったことがあるんです!僕、昔は太いパンツしか履けなかったんです。細いと、脚にピタッとフィットする感覚が気持ち悪くて。でも最近は、細めのパンツも履けるようになりました!(笑)だから最近は、ゆるめのニット+スキニーパンツ+ロングコートっていうシンプルなスタイルが多いです。
Q9.とても似合いそうです。女性の冬コーデはどうですか?隣を歩く人にこんな洋服を着てほしい、みたいな。
難しいですね……あんまり考えたことがないです。なに着てるんだろう、冬の女性は……(今日イチの困った顔)。あ、これに載ってますかね?(『GINZA』最新号を手に取ってぱらぱらめくりながら)……たぶん、シンプルな格好が好きなんだと思います、自分もそうだし。色味も落ち着いてるほうがいいかな。でも、靴下だけにポイントで赤が入ってる、みたいなのもかわいいですね。もし個性的な服装の彼女がいたら自分も個性的になるのかなって、いま考えてみたんですけど……わかんないです(笑)。
Q10.悩ませてしまってすみません(笑)。最後に、2020年の抱負を聞かせてください!どんな27歳にしましょうか。
“種まき”がしたいです。これまではアクションとか語学の種をまいて、水や肥料をあげてきたけれど、どの種とどの種が大きくなって芽が出るかわからないし、それが面白いです。高校時代にダブルダッチをやってた経験が、『仮面ライダー』でのバク転につながったりしましたし。役者をやってると、そうやってつながることがすごく多いんです。人生のすべてが仕事につながってくると思うからこそ、いろんな種をまいていきたいです。

PROFILE

『カイジ ファイナルゲーム』
原作・脚本:福本伸行
監督:佐藤東弥
出演:藤原竜也 福士蒼汰 関水渚 / 新田真剣佑 / 吉田鋼太郎 松尾スズキ 生瀬勝久 天海祐希 山崎育三郎 前田公輝 瀬戸利樹 / 金田明夫 伊武雅刀
配給:東宝
2020年1月10日(金) 全国東宝系にて公開
©福本伸行・講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員
PROFILE

福士蒼汰
1993年生まれ。東京都出身。2011年に俳優デビュー。2013年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で主人公の初恋相手役を演じて注目を集める。2014年には『好きっていいなよ。』『イン・ザ・ヒーロー』『神さまの言うとおり』などに出演し、エランドール新人賞と日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近作に『BLEACH』(2018)、『旅猫リポート』(2018)、『ザ・ファブル』(2019)など。
Photo: Reiko Toyama Movie: Yoshihito Koba Text: Sakura Sugawara Edit: Milli Kawaguchi