15歳だとは思えない、撮影中の大人びた身のこなしと眼差し。そんな市川染五郎さんの姿には、4歳で初舞台を踏んで以降、先輩たちと歌舞伎界を盛り上げてきたその矜恃が窺えます。活躍は止まることを知らず今回、新作アニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』では声優として、初の映画出演を果たしました。インタビューがはじまると「人見知りなんです」とシャイな顔を覗かせる一方で、大ファンだという悪役ジョーカーやマイケル・ジャクソンの話になると熱弁するそのギャップが何ともチャーミング。声優のお仕事のこと、趣味やご自身のこと、たっぷり伺いました。


市川染五郎を知るための10のこと。
初めての映画で演じた役は「人見知りな部分が、自分とすごく似ていた」
Q1.初の映画出演、アニメ声優に挑戦した感想は?
声だけでなりきるのは、やっぱりすごく難しいなと思いましたね。僕が小さい頃からやってきた歌舞伎では大きな動きで感情を示すことが多く、表現方法が声に限られているのが慣れなくて。でも監督とたくさんお話ししていたら、「実は声優業と舞台役者は似ているところがあるんだよ」と教えてくださったんです。というのも劇場では、遠くの座席のお客様にまで気持ちを伝えるためには、表情や動きだけじゃなくて、声でも働きかけなくてはいけないので。そんなアドバイスがあったから、舞台の感覚も活かして乗り切れたかなと思います。
Q2.声優の仕事と歌舞伎との違いをどんなところに感じましたか?
台本が全然違うんですよね。歌舞伎って、ここで誰が出てきて、セリフがあって、舞台袖に引っ込むくらいのことしか書いてないんですけど、アフレコでは、登場人物がそのときどういう気持ちなのかまで細かく書いてあって、その違いに最初は少し戸惑いました。でも歌舞伎以外のものはほぼ初めて見たので、こういうふうになってるんだなと知れて面白かったです。

Q3.今回演じたチェリーは、俳句以外では思ったことがなかなか口に出せない少年。染五郎さんのイメージとも重なっているように思いましたが、共感する部分はありましたか?
本当に自分なんじゃないかっていうくらい、人見知りなところがすごく似ていて。その部分はまんま出したかったので、役をあまり作り込み過ぎずに自分とチェリーと半々の気持ちで演じていました。モールでチェリーがおじいさんやおばあさんの前で俳句を詠んで赤面してしまうシーンがありますが、あそこはちょっと共感しました。僕は、歌舞伎座では約2000人のお客様を前にして舞台に立っていますけど、10人くらいの少人数を前にする方がなぜだか緊張するんです。
Q4.今作の完成報告会で声や手足の長さなどがコンプレックスと話されていましたが、ほかにはどんな悩みがありますか? そして、これまでどう克服してきました?
まだ克服したことないな。もう諦めてます……。手足が長いのは、腰が落ちて見えないので歌舞伎向きではないと言われています。あとは僕のように眉毛が濃かったり、睫毛が長かったりするのは、歌舞伎の化粧をする上では少し邪魔というか。おしろいをするときに油で固めて眉毛を潰すんですが、途中で汗で浮いてきてしまうので、父は全部剃ってますし。僕もいつかは、と思ってます。
CLOTHING
シャツ¥59,000、パンツ¥94,000、ジャケット¥170,000(すべてニール バレット/ニール バレット ギンザシックス TEL:03-3572-5216)
その他スタイリスト私物
Photo: Eriko Nemoto Stylist: Nao Nakanishi Hair&Makeup: AKANE Text: Tomoko Ogawa Edit: Milli Kawaguchi