強い意志を感じさせる瞳が印象的な、高良さん。黒いレザージャケットを羽織ったクールなたたずまいからは、近寄りがたさすら感じるほど。でも、スタッフをほんの数分待つ間にも、「お待たせしてすみません」と自ら取材クルーへ声がけをしてくれる、気遣いの人でした。そんな高良健吾さんが出演する、周防正行監督5年振りの最新作『カツベン!」が、いよいよ公開。映画愛がたっぷり詰まった今作で、ヒール役の活動弁士を演じた高良さんに、映画について、自分らしさについて、はたまた最近始めたSNSについてなど、色々とお聞きしました。


高良健吾を知るための10のこと。
「本音を話す、本音に惹かれる」
Q1.今回演じられた茂木貴之という役は、美形で花形の活動弁士(無声映画時代の日本で、スクリーンの横に立ち、映画の説明をしていた弁士のこと)。その一方で、主人公やヒロインをどうにか貶めようとする、シンプルに嫌なヤツでもあります。実際に演じてみていかがでしたか?
僕はかえって、そのプライドの高さが好きだなと思いました。自分が表現していることに対して、高いプライドを持つのは当然。表現者としてあるべき姿だと思いましたね。ただ、プライドが高いが故に、嫉妬や暴力にもつながっていっちゃうのが茂木なんですけど。
Q2.活弁シーンは圧巻でした。声量や声色、間の取り方など、本番に向けてどんな風にトレーニングを積まれたのですか?
僕が演じた茂木は、主人公の染谷俊太郎(成田凌)ら他の登場人物と比べて王道の活弁をする役だったので、特に癖をつけるわけでもなく、「どう声を出していくのか」に集中しました。活弁シーンって普段芝居をする時と、声の使い方が全然違うんですよ。感情は絶対に込めない代わりに、リズム感とかテンポを大事にする。実は今回、活弁以外の普通の会話のシーンも全て、活弁のような喋り方で演じてみたんです。茂木のプライドを表現したかったので。

Q3.劇中に登場する映画館それぞれの雰囲気が素敵でした。たとえばメインの舞台である「靑木館」の内観は、福島に今もある芝居小屋・旧広瀬座でロケ撮影を行ったそうですね。セットとは違う、実在する建物の中で演じてみて、いかがでしたか?
“本物のパワー”って確実にあるんですよ。しかも、地方ロケでもあったから、“地方のパワー”もあった。今回はすごく、そういうパワーを分けてもらっている感じがあったかな。とても贅沢でした。でも、セットも好きなんですよ。だって映画そのものが、ある意味では壮大な嘘じゃないですか。だからセットという嘘の中で、また演技という嘘をついていくという。それも面白いですよね。
Q4. 幼少期の主人公たちが映画館にこっそり潜り込むシーンは、観ていて楽しかったのですが、高良さんご自身の、映画館にまつわる思い出はありますか?
親が買いものしている間、よく映画館に放り込まれていた記憶があります。僕が子どもの頃って、映画館は入れ替え制ではなかったんです。上映の途中から入ることもできるし、そのまま座っていれば次の回も観続けられるっていう。

Photo: Yuya Shimahara Stylist: Shinya Watanabe(Koa Hole inc) Hair&Makeup: Satoka Takakuwa Text: Maho Ise Edit: Milli Kawaguchi