インディーズからメジャーまで、幅広いジャンルの映画に挑戦してきた仲野太賀さん。秋田県男鹿半島の伝統行事「ナマハゲ」を題材にした新作『泣く子はいねぇが』では、娘が生まれるもなかなか父親としての自覚を持てない不器用な主人公を熱演しています。今作で描かれているテーマについて思うことや、撮影直後に放心状態になったほど思いを込めたラストシーン、また最近読んでおもしろかった本などについてお話を伺いました。


仲野太賀を知るための10のこと。
「今喜びを感じる瞬間は、自分の行動が“誰かのため”になったとき」
Q1.『泣く子はいねぇが』の佐藤快磨監督とは、短編映画『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(2015)以来、2度目のタッグだそうですね。是枝裕和監督が企画から関わるなどで注目を集めている今作ですが、オファーを受けたときはどのように思いましたか?
佐藤監督と前回ご一緒したときに、次はどんな作品を考えているのか聞いたら「ナマハゲを題材に撮りたい」とおっしゃっていたんです。ナマハゲの映画なんて観たことがなかったので、すごく楽しみでした。その数年後に、あらためて監督から「(主演を)太賀くんにお願いしたい」と言ってもらえて、素直に嬉しかったですね。紆余曲折あって、やっと撮れる体制になったとおっしゃっていたので、僕も監督の覚悟に応えたいと思いました。
Q2.太賀さん演じる主人公・たすくは、娘が生まれても父親になる覚悟が見えないと、妻・ことね(吉岡里帆)から別れを切り出されます。さらにナマハゲ参加中に酔った勢いでトラブルを起こしてしまい、地元の秋田を逃げるように去る。そんなたすくの人物像をどう捉えていましたか?
無意識的に大きな問題から逃げてしまう未熟さは感じました。きっと、観客の方にも甘ったれた人物にみえると思います。でも本当は、たすくにはことねや娘への愛情がたしかにあるし、自分の過ちもわかっている。だからこそ離婚後には東京にひとりで暮らし、妻子に自分の思いを押し付けたりしなかったんです。その、愛情をうまく表現できない不器用さと切実さを両方大事にしながら演じたいと思っていました。
Q3.佐藤監督が5年の歳月をかけたという、脚本を読んだときの感想は?
たすく自身の亡き父親や元妻子に対する思いはもちろん、佐藤監督の映画に対する熱量も感じられて、お世辞なしに素晴らしい作品だと思いました。何よりラストシーンを読んだときに、「ここを演じたい」という衝動に駆られて、撮影を一番楽しみにしていましたね。
CLOTHING
シャツ¥54,000、パンツ¥39,000(ジョン スメドレー/リーミルズ エージェンシー)、ベルト¥15,000(レディッシュ ブラウン/レディッシュ ブラウン)
Photo: Takuya Nagamine Movie: Norberto Ruben Stylist: Dai Ishii Hair&Makeup: Masaki Takahashi Text: Yoko Hasada Edit: Milli Kawaguchi