「これ位のショートヘアにしたいなぁ。前髪もサイドも短めでかわいいです」。編集部が持参した『GINZA』6月号表紙の女性モデルの髪型を見るなり、そう屈託なく話した坂口健太郎さん。女性のスタイルからもおしゃれのヒントを得るセンスは、さすがメンノンモデル出身!そんな坂口さんが、ゲーム好きな主人公を演じた映画『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』が公開されます。カメラの前では颯爽としたポージングがクールだけれど、“普通の男の子”を演じてもしっくり来る……絶妙なバランスが魅力の坂口さんに、映画のことから、気になる女性の誘い方、この夏の計画まで教えてもらいました。
坂口健太郎を知るための10のこと。
「気になる人は自分から誘います」穏やかな外見の内に秘めた男気
Q1.坂口さんは新作映画『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』で、主人公のゲーム好きなサラリーマン・アキオを演じています。作中ではアキオが、彼に密かに思いを寄せる女性の同僚を、「今度ゲームの話をしようよ!」と無邪気に誘うシーンが印象的でした。坂口さんご自身は女性を誘うときはどんなふうに誘いますか?できれば友だちの場合と、気になる人の場合と、それぞれ聞きたいのですが。
気になる人と友だちへの態度の差は、わざと作らない方かもしれないです。差を作ると、まぁ、気持ちがばれるじゃないですか。なるべくばれないように、気になる人には「メシ行こうよ」って普通に言います。自分から誘うか誘われるのを待つかで言うと、誘いたい方ですね。というのは、友情にせよ恋愛にせよ、誘うときに生まれるエネルギーが大事だと思っていて。自分から行動を起こすためには、かなりの熱量と勇気が要りますよね。だからこそ、それでも「この人を誘いたい」と思えたその気持ちを大事にしたいというか。相手があまり重く受け取らないように、自然にふるまえていたらいいんですけどね、うん。
Q2.今作は、アキオがずっとすれ違ってきたお父さん(吉田鋼太郎)の本音を知るために、オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」上で自分の正体を隠しながら、お父さんと一緒に旅することを思いつき、実行に移すという異色の家族ドラマ。坂口さんはアキオをすごく自然に演じていましたが、役と自分との共通点はありましたか?
アキオはすごく一般的な感性を持った人なので、一つひとつの行動に対して「こう思ったなら、そりゃあこう行動するよな」というふうに、共感する部分はありました。でも映画の中の父子とは違って、僕は自分の父親とすごく仲がよかったんですよ。だから大人になっても距離のある父子関係というものが自分の中になかったので、高校時代の反抗期を思い出したりしながら演じていましたね。
Q3.今回、演じるのが特に難しく感じたシーンはありましたか?
ゲームをプレイするシーンは、一人でPCのモニターに向かって演じていたので、共演者とのセリフのやりとりができない難しさがありました。にもかかわらず、ゲームの中でお父さんと一緒に過ごして、どこか居心地の悪さを感じたり、でも話しかけたい気持ちもあったり、という複雑な感情を表情や所作で表現しなければいけなかった。完成した映像を見て改めて、とても繊細な芝居を要求されていたことに気付きましたね。同じようにモニターに向かっての芝居が多かった鋼太郎さんとも、「レベルの高いことをやっていたよね」と話しました。
Q4.実は坂口さんもゲーマーだそうですね。「ファイナルファンタジー」シリーズも相当やり込んできたとのこと。ずばりゲームをプレイすることのおもしろさとは?
RPG、シミュレーションゲーム、格闘ゲームなど、ジャンルによっても違うとは思うんですけど、総じて言うと“自分じゃない何かを自由に動かして物語を進めていく”というのがおもしろいです。でも昔と今では、ゲーム自体のあり方は確実に、別物になってきている感じがあります。僕が子どもの頃のゲームと言えば、“ゲーム対自分”で完結する、没コミュニケーションの世界。今はどんなゲームでもオンライン化が進んでいるから、ゲームをひとたび始めたら他の人たちもリアルタイムで一緒にプレイしていて、その人たちと接触するたびにゲームのストーリーが変わっていくんです。今と昔、どちらにもそれぞれのおもしろさがあるとは思います。
Q5.アキオやお父さんをはじめ、今作に登場するゲーマーたちの中には、自分の外見に比較的似たキャラを選ぶ人もいれば、自分には似ても似つかないキャラを選ぶ人もいました。坂口さんはどちらのタイプ?
僕は自分とはまったく違う、というか人間からもかけ離れたキャラを選ぶ方ですね。たとえば「ファイナルファンタジーXIV」は、ララフェル(子どものように小柄な民族)というキャラを使ってプレイしています。身長をできる限り小さくして、髪を銀色のリーゼントにして……これ、書いても大丈夫ですよ。前にTV番組でもこの話をしたら、僕のキャラに似せた“坂口健太郎のアバター”を作る人が急に増えたみたいです(笑)。
Q6.たしかに身長が高い坂口さんとはギャップのあるキャラですね。「ギャップ」と言えば、今回の映画ではいつもは寡黙なお父さんが、ゲームの世界では語尾に「ぴょん」と付けたりと、ハジけているのがキュートでした。坂口さんにも普段の自分と違う自分を感じる瞬間はありますか?
ジムに行っているときですかね。今役作りで筋トレをしているんです。どちらかというと自分を甘やかしがちだったのが、今はあえて筋肉を壊していくように体を追い込んでいて、今までの自分じゃない自分を感じます。その感覚が意外と楽しくて。ギャップを「多面性」と言い換えるなら、俳優は、自分の中の多面性を感じやすい仕事です。脚本を読むときは自分なりに、役にどこまで寄り添えるかが重要だと思っています。本来、役と自分は別物です。今作のアキオと僕も全然違うし。それでもアキオの言動に対して「わかるな」と思えたのは、脚本を読みながら、自分の新しい面を発見しているからなんだろうなと。
Q7.読書好きだという坂口さん。最近ガツンときた本を教えてください。
江戸川乱歩の『孤島の鬼』がよかったです。はっきり言って気持ちのいい話ではないし、読後のすっきり感もない。でも本でも映画でも、すっきりしない作品が好みなんです。なぜかというとすっきりした瞬間に、自分の中からなくなってしまう気がして。もちろん作品は作家や監督が生み出したものだけど、観る/読む側の解釈の自由がほしいし、“はてな”を持ち続けていたいんですよね。
『孤島の鬼』を読んだきっかけは知り合いの脚本家の方から、この本のある登場人物が「坂口くんに似てるから」と薦められたこと。結果的に僕はその登場人物と自分が似ているとは感じなかったんですけど、その方独自の目線で僕を見ていたことがおもしろかった。というのは僕、母親からも「この本に出てくる登場人物、なんか健っぽいんだよね」という本の薦められ方をしていたんです。「お母さんはなんでそう思ったんだろう?」と気になって読むことを繰り返すうちに、気づいたら読書が好きになっていました。
Q8.文章を書くことについても何かこだわりはありますか?坂口さんのブログを読むと、1回の投稿の中に同じ顔文字や絵文字が、思わず笑ってしまうくらい、たくさん登場するのが気になっています。
あ、ほんとに?正直意図は全然ないんです。ただ、「〜でした。」とマルで終わると冷たいなとは思っていて。だからそのときに「これがいいや!」と直感で思った絵文字を打つんです。でもいちいち変えるのはちょっと面倒なので、最初に使った絵文字で統一しようとした結果……です(笑)。もともとメールなどの文章に凝るタイプではないんですけど、文章が冷たく見えるのだけはイヤで。読んでくれる方には、どちらかというとクスッと笑ってもらいたいので、今伝えてくださった感想はうれしいです。
Q9.この夏やりたいことや立てている計画を教えてください。
一昨年くらいに柳俊太郎と太賀とスタイリストの友だちと岡山旅行に行ったんですけど、彼らから「今年の夏は広島に行くからね」と言われてます、一方的に(笑)。舞台(熊林弘高演出『お気に召すまま』)のスケジュールが大丈夫だったら行くと思うんですけど。なので自分が計画を立てているというよりは、勝手に進められているという感じ(笑)。あとは今年こそ釣りを始めたい!僕には趣味といえるものがあまりなくて、釣りを趣味にしようと思いながら3〜4年が経っているので。川釣りよりは海釣りかな。全然アクティブな人間じゃないからこそ、あえて始めてみたいんです。
Q10.今話が進んでいる旅行みたいに、複数人で遊んだり、飲みに行ったりするのは好きなんですか?
フットワークは、昔よりは軽くなったかなぁ。各作品の中での自分の重要度も増してきましたし、スタッフさんが飲んでいると聞いたら、ちょっとでも顔を出そうとするようになりました。昔はそういう人が集まる場が好きじゃなかったんです……と言うと寂しい人間みたいですけど、そういうわけでもなく、単純に一人で過ごす方が好きだったんです。
今は当時よりも忙しくて時間がないからこそ、人と会って話す時間を作りたいと思うし、そうすることで気持ちを切り替えられてリフレッシュにもなっています。つい先日も、以前出演したドラマのスタッフチームがメシを食っていると聞いて、僕はすでに夕飯を済ませていたんですけど、仕事終わりにちょこっと顔を出し、1〜2杯だけお酒を飲んでから帰りました。
INFORMATION
INFORMATION
『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』
監督:野口照夫(実写パート)・山本清史(エオルゼアパート)
脚本:吹原幸太
原作:『一撃確殺 SS日記』(マイディー)/ファイナルファンタジーXIV(スクウェア・エニックス)
出演:坂口健太郎 吉田鋼太郎
配給:ギャガ
6月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
© 2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会
© マイディー/スクウェア・エニックス
PROFILE
坂口健太郎
1991年生まれ。東京都出身。2010年よりファッション誌『MEN’S NON-NO』の専属モデルとなる。映画『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』(14)で俳優デビュー。主な出演作に映画『海街diary』(15)、『64-ロクヨン-前編/後編』(16)、『君と100回目の恋』(17)、『今夜、ロマンス劇場で』(18)、ドラマ『コウノドリ』(15,17)、『東京タラレバ娘』(17)、『イノセンス 冤罪弁護士』など。2019年の公開待機作に『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(8月2日公開)、『連続ドラマW そして、生きる』、舞台『お気に召すまま』がある。
シャツ¥33,000、パンツ¥38,000(Marvine Pontiak / OVERRIVER TEL:03-6434-9494)、サンダル本人私物
Photo:Takuya Nagamine Stylist: Kentaro Higaki(little friends) Hair&Makeup: Chika Kimura(tsujimanagement)
Text: Hiromi Kajiyama Edit: Milli Kawaguchi