東洋一のサウンドマシーン。横浜を拠点に日本国内はもちろん、アジア各国も熱狂させるクレイジーケンバンド(以下、CKB)。1997年の結成から、今年活動20周年を迎える。奇遇にも20歳を迎えたばかりの『GINZA』。勝手にご縁を感じたので、リーダーの横山剣さんに会いに行ってきました。
「(当時のニュース一覧を見て)1997年は、ハイブリッドカーのプリウスが発売されたり、パフィーが『サーキットの娘』を発表した年か。本当にアッという間ですね」
数あるトピックの中から、まず目についた事柄が、自動車やバイク。CKBの音楽には欠かせない重要なファクターで、いまもその視点は変わっていない。結成時のことを振り返ってもらった。
「当時は音楽活動と並行して、輸出貨物の検査官をしていました。インディーズの活動というのは何かとお金がかかるので、それを捻出したかったんです。80年代にバンド活動していた時、レコード会社や事務所に所属すると制約が多く、自由な活動ができなかった。そんな失敗もふまえ、自分がスポンサーになってしまえば、思う存分に活動できますから。まずは自由に活動できるシステムを作っちゃおうと考えたんです」
今となっては兼業音楽家も珍しくないけど、剣さんはその先駆けともいえる。
「仕事の経験が楽曲に反映されるというタイプでね。海外に中古自動車を輸出する業者のことを歌った『シャリマール』や、作業用のツナギからスーツへ着替えてステージを目指す『True Colors』など。仕事ネタの曲がたくさんできました」
音楽家とサラリーマンの多忙な生活の中から、後世に歌い継がれる名曲が誕生する。
「作曲する場合、通常はサビのキャッチーなメロディと歌詞が一緒に出てきて、それをもとに肉付けして曲を仕上げることが多い。しかし、『タイガー&ドラゴン』は特殊な曲で、一筆書きで一気にできちゃった曲。仕事を終え、横須賀へ向かう車中で浮かび、そのまま何度か歌っているうちに脳内で完成しちゃったので、そのままメンバーに伝えました。僕はセルジュ・ゲンズブールの『Ford Mustang』(68年)のような、ジャジーなアレンジを考えていましたが、昼の仕事の疲れもあり、思わずスタジオのソファーで寝てしまったんです。起きたら、小野瀬雅生さん(g)が、イントロにおもいっきり昭和テイストなギターをつけていて。想定していたものとは、ちょっと違ったんだけど、抜けがよかったので、ゴーサインを出しました。それがバンド史上一番売れた曲になるんですから、面白いものです」
20周年を記念して発表される、3枚組オールタイムベストアルバム『愛の世界』には、150曲を越える楽曲から、55曲をセレクト。
「わたしの独断と偏見のもと、新旧問わずグッとくる曲を選んで決めました。各ディスクの1曲目を決めたら、曲調や歌詞、雰囲気などのつながりから決めていったんです。途中、誰も理解できないつながりの選曲もあると思いますが、そこは〝足の裏に鍼を打ったら肩こりがとれた〟じゃないですけど、わたしの中でどこかつながっているんです。それから『スージー・ウォンの世界』や『ランタン』など、発表当時は人気がなかったけど、今はライヴで盛り上がる曲も入れて。埋もれた名曲もたくさん入っています」
『愛の世界』は、新旧の曲を並べることで各曲の魅力(時にクレイジーさ加減)がより増しており、そこにグッとくる。
「わたしには執着というものがなくて。車でたとえるなら、6400ccの地球に優しくないものもいいけど、〈テスラ〉に乗るのも好きなんです。小学生の頃、未来の乗り物として、よく電気自動車の絵を描いていましたからね。そんな時代の中に自分がいるのが面白くて。古いものと新しいものは、必ず共鳴する部分があって、その時代のセンスで組み合わせたりすれば、決してチグハグにならない。ファッションなんかもそうだと思いますが、それは音楽も一緒なんですよね。