流星のごとく東京のシーンに現れた〈kudos(クードス)〉は、工藤司(写真・下)が手がけるユニセックスブランド。ヨーロッパで〈JACQUEMUS〉〈Y/Project〉〈JW ANDERSON〉でアシスタントを務めながらデザインを学んだ後、個人的に作ったコレクションを東京に持ち込み、今年の4月に即デビュー決定。ユニークなシルエットのデザイン、彼が自ら撮影とスタイリングを手がけるルック写真が注目され、既にスタイリスト界隈やファッション好きのSNS世代を魅了して止まない。ご本人はさぞかしキレッキレのシャープな人物かと思いきや、あれれ、超ミーハーでお茶目な乙女男子ではありませんか!今回〈kudos〉の服を着こなしてくれた対談のゲストはOKAMOTO’Sのオカモトレイジさん(写真・上)。一緒にK-POPにどハマりしながら、お互いの活動をリスペクトし合う、ナイスなお二人の対談をどうぞ!
〈kudos〉デザイナー工藤司×オカモトレイジ対談。「僕たち、シェア・モア精神が響き合うチングです」
ジャケット、シャツ、下に着た黄色いシャツ、デニム(以上クードス2017-18AW)/その他*本人私物
-以前、レイジさんのインスタに〈kudos〉の黄色いシャツをバシッと着こなしている写真があがっているのをお見かけしました。今回の撮影もまた、全く服に負けていない素晴らしいモデルっぷりでした。
レイジ 今日は僕、チカーノの気分で撮影に臨んでいたのですが気づいてもらえました? そうそう、この黄色いシャツを買った時に「kudos!!!!!!!!!!」って投稿したんですよね。
-そもそも、レイジさんが〈kudos〉を知ったきっかけは?
レイジ 今年の夏、友人の〈TTT〉ってブランドをやってるたまちゃんが教えてくれたんです。「これはきてますね~。日本人で一番ヤバいっす。絶対チェックしといた方がいいっす。クードスっす~。クードス今一番ヤバいっす。絶対きます」ってずっと言っていて(笑)。僕はファッションのことが全然わからないので、そういう信頼できる友だちが言ってるくらいだったら面白いんだろうなと思って。勉強がてらクードスのインスタをフォローしたら、俳優の友人が着ている写真があがったり、あとルックではKID FRESINO君が出てきたり。なんか自分の知り合いが着てるなぁと思っていたら、臼田あさ美が出てきて。それで、家であさ美ちゃんに「この前〈kudos〉着てたじゃん」って話したら、「え、司君と知り合いなの?あたし友達だよ!」って言われて。「全然知らないんだけど、今度紹介してよ」という流れになって。
工藤 8月くらいに韓国のHYUKOHってバンドのライブを2人とも見に来ていたんで、そこで初めて紹介してもらって。
レイジ すぐに仲良くなって、たまちゃんも一緒に、みんなで新宿で飲むことになったんです。僕の周りには良いアンテナの持ち主がいっぱいいるので、いつも助かってます。自分は音楽のことしかわからないのですが、各方向に色々な電波塔が立っているので、電波が自然と入って来る。
シャツ、パンツ(共にクードス2017-18AW)/その他*本人私物
-そこからお2人が急速に仲良くなったのは、K-POP好きという共通点があったとか。
工藤 そう!僕たち、ケーポペンチング(K-POPファンの仲間)なんです。ブームは季節が変わっても全く去っていません。
レイジ 僕はDJもやるんですけど、最近は家でずーっとK-POPをかけていて。毎日のように、でかい音で!
工藤 奥さんは何も言わないの?
レイジ 奥さんは本当に呆れてますよ。僕がずっと歌ったり踊ったりしているので。でも、Red Velvetの「Russian Roulette」のサビだけ、一緒に踊ってくれます。
工藤 やさしいね(笑)。
レイジ K-POPにハマっちゃうと、日本で売れている歌手を見ても「歌うまいけど踊れないしな~」と思ったり、超スタイルのいいイケメンがいても「この人別に、歌って踊れないしな~」って気持ちになっちゃうんです。
工藤 彼らの鍛錬がすごすぎるからね。ファンに向けてのステージの見せ方も、自分の容姿の磨き方も、全部が完璧。
レイジ 全部を完璧にした状態でスターになってるから、やっぱり、こんぐらいやってからじゃないとスターになっちゃダメなんだなと思うんですよ。
工藤 そう、そうそうそう!
レイジ だから、クードスも今のままでも十分カッコいけど、歌って踊れて整形しまくんないとダメなんですよ!
工藤 そうだね、そのくらいの気持ちでやってかないとね(笑)。
レイジ 「とにかくやるしかねえ!」って根性がすごい。少し前ですが、YG(韓国で数々のスターを抱える事務所)の練習生11人でAチームとBチームに分けさせられて競い合う番組の映像があって。今までずっと長いこと一緒に練習生をやってたのに、急に競わされて、どちらかしかデビューできない展開なんて本当に辛すぎる……みたいな。どうにかして僕が社長に土下座して、「お願いだから11人でデビューさせてやってくれ!」って言おうかと思った。それくらい、とにかく切ない。
工藤 日本のアイドルもすごく好きなんだけど、切実さのレベルが違う。
レイジ すいませんね、ほんとに。僕たち頭の中がもう、「ハナ、トゥル、セッ!」(韓国語で1、2、3)て感じなんで(笑)。あ、K-POPの話はカットで大丈夫ですよ。新宿で飲んだ話辺りに戻りましょう。
Tシャツ¥8,000(クードス | エムエイティティ)、シャツ、パンツ(共にクードス2017-18AW)/その他*本人私物
-では、お話を戻しまして(笑)。お二人はK-POP以外にも、表現する部分などで共感することも多いですか?
工藤 レイジ君って、一つの場所に留まってないじゃないですか。OKAMOTO’Sっていうホームタウンで活躍しながらも、すごくフットワーク軽くて、いろんな場所に越境してく。そこに共感というか、すごいなと思っていて。
レイジ いわゆる、多動力ってやつですかね。
工藤 そうそう。軽やかにジャンルを越えていって、越えた先でもぐいぐい深いところまで入っていって、だけど元々のベースはしっかり音楽。それでいて全然忙しぶらないし、いつも楽しそうだし、そういう活動の仕方がいいなあと思って。自分もデザイナーとして今服を作ってるけど、ルックの写真は自分でスタイリングをして、自分で写真も撮っています。もともとパリでインターンをしていた頃に、自分でもデザインやりたくて、仕事後に家で少しずつ服を作り始めたんです。いざ作ってみたものの、パーソナルなものだったからフォトグラファーに頼めなくて、自分で撮って、自分でスタイリングして……みたいな感じで始まりました。今は写真でやりたいこともたくさんあるし、スタイリングでやりたいこともあるから、大事なバックボーンであるプロダクト自体の質を、これからもっともっと上げていきたいなと思って。
パリで撮影された2017-18AWのルック。〈kudos〉のデビューコレクション。
レイジ 僕は逆で。最初がガチガチのロック少年だったんです。デビューしてから何年かは「ロック以外認めません!ファッション系のやつとか全員死ね」というイナタいテンションで(笑)、とにかく、ファッション関係の人に勝手に偏見があって。でもある日、ふと思ったんです。おっさんになって、ロックには詳しいけど服がくそダサかったらくそダサいし説得力ないなと思って。全部いかなきゃダメだ!と目覚めたんです。21くらいまではかなり閉鎖的なタイプでしたが、それからはDJもやるようになったし、服も好きになって、色々なものに興味が湧いてきました。
工藤 元々の音楽家ってところがしっかりしているからこそ、他のことも柔軟にできる。レイジ君の移動性みたいなものに、自分はシンクロニシティを感じてるんだと思う。
レイジ 最近すごく思うのは、どれだけ興味の湧く泉を掘り当てるか。それが自分の人生を豊かにさせるんだなということで。対象は何であれ、興味が持てるって、すごく幸せなことじゃないですか。それをずっと掘り続けることも。“掘る”って何かに夢中になってそれをどんどん掘っていくことに思えるけど、実は自分の“インナートリップ”というか、自分の中を掘っていって、その興味の泉を探し当てる作業だと思うんです。泉が湧き出たらもう、それは自分の努力とかではなくて溢れ出して絶対そのことしか考えられなくなっちゃう。
-レイジさんは、普段どうやって新しくて面白いことに出会っているんですか?
レイジ 友達もそうだし、もともと調べ癖の様なものなのは強いですね。少しだけ気になったものでも、徹底的に調べるようにしてるので。そこから広がっていくことがたくさんあります。
-工藤さんも、モデルの男の子をハントするために、プロではない一般の子をインスタで調べて探していた、とお聞きしました。かなり掘り下げて探さないと見つからないですよね?
工藤 そうそう、かなり頑張って探しました。確かに、その徹底した探し方にも共感します。インスタは探す行為に向いているツールですよね。もはやゲームみたいな感覚があるから。僕は、もう既に世に知れ渡っていて、完成され過ぎているものに対して全く興味がわかないんです。完成してないんだけど、もうちょっとしたら輝く、その直前の瞬間みたいな。すごく短いけど、すごく美しい。それって別に年齢関係なく人間誰にでもある時間じゃないですか。その人の、過渡期みたいな。そんな瞬間に、その人と自分の服が出会えたらすごく幸せなことだなって思う。
レイジ インスタは、辿り着くスピードが本当に早い。インスタが流行ってから、世界中のトレンドが同時になったなと思っていて。今ロンドンで若い子がやってるファッションとメイクを、同時期に東京や大阪でやってる子が普通にいるし。一方で、もう見れない、聞けない、買えない、っていうものが絶対価値を持ってくると思うんです。
ラッパーのKID FRESIONOらがモデルを務めた2018SSシーズンは、ルックの撮影を工藤とFish Zhangの2名で行った。
工藤 あと、自分はけっこう「シェア・モア」みたいな精神もあって。出し惜しみしたくないんです。人つなげたりとか、自分が持ってるものを紹介したりとか。そこはレイジ君と共通な気がします。
レイジ 僕は別名“ヒトDJ”と呼ばれているので。そことそこつなぐんだっていう場所を、すごくスムーズにつなぐから(笑)。
工藤 ファッションのデザインもそうだけど、アイディアソースを公開しちゃうとコピーされるリスクもあるじゃないですか。だから教えたくない人は絶対に教えないはずだけど、自分は、全部シェアした後に、結果残るものがその人のコアな部分だと思う。例えばファッションだと生地屋さんや工場を紹介する、しないとか。なんとなくタブーとされているんだけど、そういうのは古くさいから、自分は開放していきたいなあと。それで明け渡しても残るものがあるし、新しいものが生まれくるから。レイジ君なんて、リリースし放題(笑)。
レイジ セーブすることはなんの意味もないと思ってるので。そういうレベルでいたくないというか。別に情報をシェアしたところで勝ち負けの話ではないし、偽物はすぐ消えて、本物は残りますから。たまたま同じセンスが呼応したら、それはそれでいいことですし。
工藤 僕たちの周りには、それを素でやっている子が多くて。そこがすごく好きだし、一緒にいて楽です。
—例えば、工藤さんが素敵なモデルを探し当てて、その子をシェアした結果、別の誰かが撮っていても特にモヤモヤしないですか?
工藤 全然しません! だって、可愛い子はシェアした方がいいから。その子の写真がこの世に増える、みたいな(笑)。僕の信頼してる仲間は、どれだけシェアしても、結果みんな全然違うもの作る。すごく安心できるし、すごく心強いです。そういう人たちに、東京に帰って来てすぐのタイミングで出会えたことがすごく幸せだなと思います。
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工藤司
〈kudos〉デザイナー。沖縄県那覇市生まれ。現在のK-POP推しメンはZico。〈kudos〉の服は「CANDY/FAKETOKYO」、「FREE GALLERY」にて取り扱い中。12月26日から代官山 蔦屋書店で初の写真展を開催予定。
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オカモトレイジ
4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのドラマー。全国ツアー真っ最中。11月27日(月)18:00〜自らキュレーターを務める24H限定のエキシビションマッチ「YAGI」を中目黒にて開催予定。