10 May 2018
GINZA6月号 FROM EDITORS ぜいたくな”半分”

半分くらい外とは
どういうことなのか。
2017年12月27日17時。私は「ささもと 新宿店」のカウンターにいた。思い出横丁の狭い通路に向かってぽっかりと口を開けたこの店には、ドアがない。“軒”と呼ぶのが正しいかはわからないが、その下までせり出したテーブルと椅子。師走の冷たい風が、スープの染みた串焼きのありがたみをよりいっそう、深いものにしていた。隣に座ったニューヨーカーが話しかけてきた。
「ここの串はうまいのかい?」
「ああ、ファッキン・アメージングさ」
得体の知れない高揚感の中で飲んだ焼酎のせいなのか、この先のことはあまり覚えていないが、その時に思ったのは「なんかいいな、この中でも外でもない感じ」。ウチとソトのボーダー、国籍の境、もうすぐくる年のさかい目。今思えば、いろんなコトの境界がそこには集まっていたのだろう。そんなことと考えていたら、今回の「半分くらい外の店」という企画を思いついた。
ところで初夏も季節の境である。では、その時期に一番気持ちのいい「半分くらい外」はどこなのか。その答えを桜散りゆく中追い求めた。そして、ある6軒にたどり着いた。自分は外にいるのか、中にいるのか、もっと言えば、どこにいるのか。それを曖昧にしてくれる店というのが、楽しいというのが結論だ。よくあるテラスもいいけれど、この「半分の贅沢」を謳歌できる店こそが、夏の足音を聞くにはふさわしいと私は考えている。
編集担当 岩渕大介
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