梅雨ですね。髪は広がる、メイクは崩れる、服は張り付く、もう最悪!となりがちですが、湿度への苛立ちをやり過ごすためにも、ここはひとつ房中養生的な“濡れ話”をしたいと思います。
日本最古の医学書『医心方』に「女性の“官能の高まり”には5つの徴候がある」と記されています。その「五徴」の項目には、興奮の高まりによって女性の身体はどのような反応を示すのか、さらに女性の身体徴候に応じて男性がすべきこと…つまり「How to Sex東洋医学版」が描かれているのです。
其の一、「女性の顔が赤くなってきたら」、徐々に男性のモノを合わせます。
其の二、「乳が硬くなり鼻に汗をかいたら」、徐々にこれを納めます。
其の三、「興奮して喉が渇き唾を飲み込んだら」、徐々にこれを揺れ動かし始めます。
其の四、「局部が潤って滑らかになったら」、徐々にこれを深く入れます。
其の五、「臀部に津液が伝わったら」、徐々にこれを引き抜きます。
東洋医学では人体中の液体のことを陰液(いんえき)、その中でも「五徴」で見られる“汗、唾液、膣潤滑液”などのことを津液(しんえき)と呼びます。『医心方』によれば、「女性がどのくらい感じているのかは、溢れ出る“津液の状態”で見極めることができる」とされているのです。
涼しい室内にいるときに、外から入ってきたばかりの汗だくな女性を見ると、なぜか妙に色っぽく感じることがあります。暑さで上気する頬、鼻先に滲む汗、冷水をこくりと飲み上下する喉…そう、じつはその姿、「五徴」と似たような津液が溢れ出でいる状態であるため、色気を感じてしまうのではないでしょうか。これは一種の東洋医学的なフェロモン様効果と考えても良さそうです。
唾液を飲んで若返り!?
津液にまつわる房中話は、他にもたくさん残されています。
「女性の舌を深く吸って、唾液をたくさん飲めば、湯薬を飲んだように胃の中がさっぱりして、肌も処女のようにつやつやする」
かつて“女性は身体の3か所(口、胸、膣)から薬を産出する”と考えられており、その中でも特に口は上質の薬を出すとされていました。思わず苦笑いしてしまう内容ですが、よく考えてみるとあながち間違ってもいなかったりするのです。唾液に含まれる「消化酵素の働き」や「成長ホルモンとして肌粘膜の代謝促進に作用するパロチン」などの効用がすでに経験則として知られていて、これを性やアンチエイジングに利用しようと考えられていたのだとしたら…。東洋医学は実に奥が深いものです。
陰中の棗!?
さらにこんな話も。
「房中術(セックスで長生不死になる方法)を極めた女仙人は、50歳で即位したある王の強健のためにベッドを共にした。その際に自分の陰中に挿入してあった乾棗(ほしなつめ)を取り出して、王に食べるようにとすすめたのだ」
って、コラコラ、そんなものをひとさまに、ましてや皇帝にすすめるなんて!と、即“ダメ出し”をしたくなりますが、ここでもその裏に秘められた強壮養生の知恵を読み解いていきましょう。
棗は古くから生薬として用いられており、内臓の衰弱を直し、老化を防ぎ、精神安定をもたらす効果などがあるとされていました。現代でも「一日3個食べれば年をとらない」なんて言われています。普通の乾棗であっても煎じて飲むことで性機能を上げる作用がありますが、まして女性の分泌液でふくらんだ男性用房中秘薬は、にんにくやローヤルゼリーなど足元にも及ばない薬効がみられたのではないでしょうか。私が鍼灸で房中治療をしている75歳の現役男性は「女性の潤滑液をいただくことで頭も冴えて元気になる、セックスがいちばんの健康法だ」といつも話されます。いつの時代も男性にそのように思わせるパワーを秘めている潤滑液…。東洋医学が肉体と精神を分けない伝統医学であるからこその効能なのだと思います。
そんな膣潤滑液ですが、分泌量には個人差があります。「たくさん濡れることが感じている証拠」と思われがちですが、年齢やホルモンバランスでもその量は変わりますし、汗かきな人は濡れやすいことが多いです。また、濡れづらい理由のひとつに“アレルギー薬の服用”があります。鼻粘膜への効果だけでなく全身に作用しますので、津液も出にくくなるようです。「つらい鼻水に」と謳われている風邪薬なども同様です。
汗をかいたり雨に濡れたりのこのシーズン、風邪薬のお世話にならないよう“乾棗”を齧って滋養をつけるといいのかもしれません。