「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は、vol.124 湯たんぽは猫
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.125
回転寿司の幸せ

vol.125 回転寿司の幸せ
東京に住む今、お寿司が食べたいと思ったら、居酒屋でお刺身か軽い握りを注文し、その欲をおさめてしまうことが多い。生まれ育った福岡は海も山も近くスーパーに行けば新鮮で美味しい魚が当たり前に手に入っていた。もちろん、お寿司は誕生日や祭事の特別な時にだけ食べられるご馳走の代表格だったけど、上京してからはその意識がより強まったように思う。福岡で食べていた美味しいお寿司を東京で食べようとすると大袈裟ではなく0が1つ以上、違ってくる。頑張った贅沢ご褒美は1年にそう何度も訪れないから価値があるし、回転寿司は?と提案されそうだけど、近況を話しにご飯に行くことが多いので、ゆっくりできるかもお店選びのポイントの1つになっている。そして1皿に2貫のっている回転寿司だと、食べたいネタがまだある状態で満腹になってしまいがちで。レーンを回るマグロを横目にお会計するなんて悲しすぎるので。回転寿司には最低2人以上で行って1皿をシェアするのが最高だと思っている私には、お寿司は色んな意味でハードルが高い。上映時刻が早かった映画を観た後など、デパ地下でお寿司買って帰ろうかなーって思うことも稀にあるけど。大体簡単に家で済ませるかー、となることが多く。そうして生活しているうちにお寿司欲は消えてしまう。
先日ツアーで地元福岡に帰った際、実家に1泊したのだけど。東京に帰る前にどうしてもお寿司が食べたい、と母に言い、空港近くの回転寿司に連れて行ってもらった。「見て、ブリ美味しそう」「イカは?柚子塩だって」「でも最初は白身からが良くない?」。母と1つのメニュー表を肩を並べ覗き込みながら、幸せだなと思った。ランチだとそんなに肩肘張らなくていいから、とカウンターで食べるお寿司はコースになっていて、自分たちでネタを選ぶことはないし、お任せしてしまう。母とわいわい迷いながら注文し、お寿司を待つ間、東京でのことを少し話した。「お待たせしました」と板前さんから手渡されたお皿をテーブルに並べる。1皿に並ぶ2貫のお寿司。割り箸を割って、1貫ずつ食べた。「おいしねーーー」とハイタッチを求めると母が笑顔でハイタッチを返してくれる。何気ない、幸せ。
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家入 レオ
Leo Ieiri
1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。2024年は、自身8枚目となるオリジナルアルバム「My name」をリリースし、海外4公演を含む全16公演となるツアーを開催。2025年は、1月に「雨風空虹」(ボートレース 2025 TVCM タイアップソング)を、2月に「No Control」(MBS/TBSドラマイズム「アポロの歌」エンディング主題歌)をリリース。現在放送中の日本テレビ系水曜ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』の主題歌「Mirror feat.斎藤宏介」をデジタルリリース。11月26日には19枚目となるシングル「Mirror」のリリース。10月からは全国ツアーをスタートさせている。
Text_Leo Ieiri Illustration_Hagumi Morita