昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.5は歴史ある池上本門寺のお膝元、池上の「エノモト」で数量限定のレアメニュー、フルーツサンドをご紹介。
前回訪れたのは有楽町「喫茶ローヤル」。
昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.5は歴史ある池上本門寺のお膝元、池上の「エノモト」で数量限定のレアメニュー、フルーツサンドをご紹介。
前回訪れたのは有楽町「喫茶ローヤル」。
池上「エノモト」
1276年に建立された池上本門寺。その門前に栄える池上の町は江戸幕府よりも歴史が古く、参道には古き良き菓子店などが並びます。さらに本門寺に向かって96段の石段を登ると、そこには麗しき五重の塔が。さながら時空を超えていにしえの日本へと瞬間移動したかのよう。
「エノモト」の灯籠は昭和から年月を重ねてここに。見所満載の池上エリア。
「欧風菓子エノモト」が佇むのは池上駅前。路面電車のような東急池上線にカタコト揺られて駅を降りると、左手に品のあるブルーグレーの店構えが。戦後まもなくパン店として開業し、1955年に洋菓子作りと喫茶をスタート。1993年に改装されるまで木造3階建てだった店の名残は、今も中庭に伺うことができます。灯籠が正面に見える大テーブルは、まさに特等席。緑を眺めながら過ごすひとときは、どこまでもゆったり。
まず味わいたいのは洋菓子店の喫茶室ならではのケーキ。最新の技を駆使した軽やかな味は、スイーツ好きも唸るほどの美味しさ。甘さ控えめのクリームやムースを組み合わせた月替わりのケーキも多数。行くたびに飽きることがありません。そんななか評判なのが、毎日数量限定で提供されるフルーツサンド。喫茶店のスタンダードを押さえつつも、オレンジをマリネした細やかな仕込みはパティスリーならでは。まさに幻のフルーツサンドなのです。
イチゴやバナナ、キウイ、オレンジなどがみっちりと。生クリームは甘さ控えめ。数に限りがあるので午前中が狙い目かも。フルーツサンドは飲み物とセットで1,120円。
この店の帰り道に聴きたい80年代の名曲
『すこしだけやさしく』
薬師丸ひろ子
そんな「エノモト」の帰り道に聴きたい80年代の名曲は、薬師丸ひろ子さんの『すこしだけやさしく』。大ヒット曲『探偵物語』のB面で、透明感あふれる薬師丸さんの歌声が、甘さ控えめのふわりとしたフルーツサンドのようにどこまでも耳心地がいいのです。
A面は映画『探偵物語』の主題歌。 1983年の夏はテレビもラジオも街も映画館も薬師丸さん一色でした。松本隆さんの詞と大滝詠一さんの曲が彼女の声とぴたりと一体に。
「エノモト」で腹ごしらえをして歩く池上の町は、なかなか遠出ができない令和の世にあって、充分に好奇心を満たしてくれるはず。昔の曲を聴いてみたり、小さな旅を心の栄養にして今を乗り切りましょう。喫茶店らしいナポリタンも待っていますよ!
サラダも付いたナポリタンはドリンクとセットで1080円。
水原空気のひとこと
池上は脚本家・向田邦子さんのドラマでもたびたび撮影に使われたロケ地。調べてみると、あちこちにその足跡が。確かに雰囲気のある路地や階段がいっぱい。向田さんのエッセイを読みながら歩いてみるのも一興です。
80年代好きライター。夏の扉を開け秘密の花園へ時をかける探偵物語。GINZAウェブ「松田聖子の80年代伝説」でインタビュアーも。