20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチ(1904-1988)。その仕事は、彫刻作品はもちろんのこと、舞台美術やプロダクトデザインなど様々な分野で大きな足跡を残している。読者の中には、提灯にヒントを得たランプシェードの「あかり」を持っている人も多いだろう。私もつい先日、ベッドサイド用に購入したばかり。
現在、上野の東京都美術館で行われている「イサム・ノグチ 発見の道」は、国内では久しぶりとなる大型回顧展だ。晩年の独自の石彫に至るノグチの「発見の道」をテーマに、様々な作品によってノグチ芸術のエッセンスに迫っている。彫刻と空間は一体であると考えていたノグチ。その作品世界を特色ある3つの展示空間で表している。
「あかり」インスタレーション風景 筆者撮影
まず展示室に入って圧倒されるのが、光の彫刻「あかり」を150灯も用いたインスタレーション。紙を通した柔らかい光が会場にあふれ、心地よい。この「あかり」シリーズは、1951年に制作されてから30年以上に渡って取組み続けた、ノグチのライフワーク。光る提灯を「太陽と月」に見立て、これ自体を「光の彫刻」としてつくっていたという。生前のインタビュー映像で、ノグチは、高価になってしまう石や金属でできた一点ものの彫刻作品に比べ、「あかり」は誰でも安価に買って自分の家で楽しめるところが気に入っている、と語っていた。紙と竹ひごでできた「あかり」は、ノグチが私たちに送る軽やかな手紙のようだ。
彫刻作品も見ごたえたっぷり。インターロッキング・スカルプチュアは、日本建築の木組みのように、いくつかの部品を組み合わせることで形づくられている。丸みを帯びたパーツも、組み合わさった形もユーモラス。ジブリのキャラクターはこの形に影響を受けてる?なんて思うほど、形が似ている。
そして、環状の形に無限の空間表現を試みたブロンズの《ヴォイド》は、大きさの異なるシリーズもあるが、まさに環を描く彫刻の中の空洞に何かが存在しているような、禅的な問いを私たちに投げかけてくる。