破天荒な刑事・志村とインビジブルと呼ばれる犯罪コーディネーターが手を組んで凶悪事件に挑む『インビジブル』(TBS)。高橋一生と柴咲コウがタッグを組むドラマの2話を、ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミ(第26回手塚治虫文化賞短編賞受賞おめでとうございます!)が振り返ります。1話はこちら(レビューはネタバレを含みます)
考察『インビジブル』2話 頭の回転の速さを感じる高橋一生のアクション!

志村を動かすキリコ、留める警察
高橋一生演じる刑事・志村はジレンマの中にいる。
1話で彼は“インビジブル”と呼ばれる犯罪コーディネーター・キリコ(柴咲コウ)から「志村貴文がほしい」と名指しで求められた。未解決事件やまだ認知されていない事件の情報を提供する代わりに手を組みたいというのだ。志村が目的を聞いてもはぐらかすばかり。不審がる志村だが、警察上層部がキリコの提案を飲んだために、彼は従うしかない。
いっぽうで、監察官の猿渡(桐谷健太)は、志村とキリコがつながっているのではと疑っている。何かと呼びつけては尋問するが、そのたびに事件が動いたりキリコから連絡が来たりして志村はすっぽかす羽目に。キリコと猿渡はお互い監視しあってるんだから、そこらへん融通すればいいのに! と思わないでもないが。さらに、志村は捜査一課の課長・犬飼(原田泰造)からも「捜査には参加するな」と繰り返し言われる。
とはいえ、1話から格段に豪華な「民宿」に移動となり、かなりの自由を得たキリコであっても、外出までは許されていない。だからキリコは志村を動かすべく情報を志村に伝えるわけで、志村としてもそりゃ事件の新たな情報を得たら動かざるを得ない。志村は「動くな」と「動け」、2つの間で揺れている存在だ。
やっぱり高橋一生のアクション!
県の観光推進課から依頼を受けたという動画配信者が、生配信をするなかで白骨化遺体を発見。その犯人はキリコによれば”調教師”と呼ばれた女。動画配信者を聴取する警察に、青少年の更生を支える人権派の弁護士・福留(久本雅美)は食ってかかる。志村はキリコからの情報をもとに突き止めた彼らのアジトに踏み込むが、全員逃げたあと。アジトで子どもたちを世話している女(入山法子)は福留の娘で、自宅で殺されているのが発見される。
途中まで“調教師”は娘のほうだと視聴者に思わせておいて、後半で実はその母、弁護士の福留こそが真の犯人であったことがわかる。そもそも、県は動画配信者に依頼をしておらず、その時点から事件を白日のもとにさらそうとするキリコの差し金であったことも判明する。“調教師”に自分の殺害を依頼して”民宿”に誘い込むキリコ。やってきた彼らと対峙するシーンを見ると、やはり高橋一生のアクションこそがこのドラマの要だなと感じる。
手元の何かを投げて一発で電気を消すスマートさ。ソファを盾にドアの奥に入り込み、倒れ込んでドアを閉める動き。キッチンの小麦粉を粉塵爆発させる展開には、志村の頭の回転のよさも感じられてなかなかしびれる。毎週このアクションを見られるというだけで、このドラマの意義があるじゃないか! と思う。
志村、キリコ、猿渡の謎
2話のラストで「ありがと、守ってくれて」とキリコが志村に伝えた。志村とキリコの距離は少し近づいたようだ。けれどキリコと猿渡、互いになぜか志村にこだわる2人が何を企んでいるのかはまだ見えない。
「ねえ今日で人生が終わるとしたら何する? 私は好きなものをおなかいっぱい食べる」というキリコに「今日で人生を終わらせるわけにはいかない」と答える志村。志村もまた、3年前に目の前で後輩を殺した犯人を追うという使命を抱えている。その事件についてキリコが語る日がいつ来るのかも、今後気になるポイントだ。
警察内部の部下や同僚たちそれぞれの性格も少しずつ見えてきた。彼らそれぞれの個性や、彼らと志村との関係性がもっとわかってきたら、さらに面白くなりそうだ。
脚本: いずみ吉紘
演出: 竹村謙太郎、棚澤孝義、泉正英
出演: 高橋一生、柴咲コウ、有岡大貴、堀田茜、原田泰造、桐谷健太 他
主題歌: Dragon Ash『Tiny World』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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