見過ごしてしまうような風景も、作品の中ではいつもとは異なる表情に映るもの。GINZAでおなじみのライター陣が紹介するのは、実在の場所が登場するおすすめの作品。思わずロケ地巡りに出かけたくなる、あのシーンの舞台、ここなんです!
移動しながら見える東京の駅模様。あのMVの舞台になったのは? Beastie Boys『Intergalactic』
「Intergalactic」(98)
Beastie Boys
新宿通り(東京都新宿区3丁目近辺)
突如、渋谷の神山町に降り立った巨大なロボット。ロボットがここにやってきた理由は?整備士に扮したマイクD、アドロック、MCAが東京の街を奔走する。
ビースティ・ボーイズはとりとめのないストーリー仕立てのおふざけMVを多く発表してきたけれど、その中でも特に好き放題のユニークな仕上がりになっているのが1998年に発表した「Intergalactic」。メインのロケ地は、新宿通りや地下街、都庁前など。さまざまな海外アーティストが新宿を舞台にしたMVを発表しているが、伊勢丹前の新宿通り歩道を、ヘルメットに黄色い長靴姿で歩きながらカメラに向かってポーズをとる3人の後ろに、不思議そうに足を止めるサラリーマンや学生たちが映り込んでいるのが印象的。「都庁前で警備員に見つかって全力で逃げたよ」とメンバーが話していることから、ほとんどがゲリラ撮影だったよう。そんなゆるさも90年代らしい。未来的なネオンや高層ビル群にノスタルジックな雰囲気が混在し、チープな特撮風パートとのマッチングが絶妙。彼らのユーモアと型にハマらないクールさを街がサポートする。
「Intergalactic」(98)ビースティ・ボーイズ『ビースティ・ボーイズ・ミュージック』(ユニバーサル ミュージック)