「なんでもできそう」という活力を与えてくれる
竹内文恵
プロデューサー
2003年当時、映画製作・配給会社のアスミック・エースで宣伝の仕事をしていたという竹内文恵さん。社内で『マインド・ゲーム』の配給を検討していた際、「山本精一さんがアニメーションの音楽を手がけた」という情報に惹かれ、本作を観る機会を得た彼女は、初めて触れた湯浅作品に衝撃を受ける。観終わってすぐに「配給するのであれば、絶対に手伝いたい!」と直談判したという。
「『マインド・ゲーム』は、音楽とシンクロする映像と、言葉では表せない感情が、ドンッと入ってきました。しかも、湯浅さんの作品って、観終わった後に不思議と元気が出る。しがらみから解放されて、なんでもできそうという気持ちになれるんです」
数年が経ち、フジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」の立ち上げに参加していた竹内さんは、『四畳半神話大系』の監督を湯浅さんに依頼。映画よりもタイトな枠組みがあるTVシリーズではあったものの、かつてない異次元のアニメができあがった。
「湯浅さんは、『クレヨンしんちゃん』のような子ども向けの商業アニメーション制作をしっかり経験されてきた方なので、クリエイティブ以外の理由でどうしてもご相談しないといけないリクエストが出ても、その時々の条件の中で最大の効果をあげる方法を考えようとする力がすごくあるんです。強いスタイルを持った人がやれば、制限の中でもちゃんと色が出せるんだなと思いました」
いつかまた一緒に映画をやりたいと思っていた、という竹内さん。古川日出男さんの小説『平家物語 犬王の巻』をきっかけに、約7年ぶりに『犬王』で湯浅監督と並走することとなり、自分の役割を再認識したとか。
「湯浅さんの頭の中に、どうやってもみんなが思いつかないものが絶対にあって(笑)。『犬王』の場合は、どんな音楽になるか、どんなパフォーマンスになるかといったことでしたが、言葉でのやりとりだけでは、『わからない』という反応が湯浅さんに返ってきてしまったりもするんですけど。でも、そのわからなさが、オリジナリティであり、誰も見たことのない、魅力的な表現につながっているとも思っていて。湯浅さんの頭の中に湧いてくるイメージを、なるべく早く現場のみんなと共有できる環境を作れたら、とあらためて感じました。次また企画をご一緒させてもらえるなら、その点も精進したいです」