長崎県の陶磁器メーカー「マルヒロ」が、自社ブランド〈ハサミ/HASAMI〉と〈馬場商店(現・バーバー/BARBAR)〉の10周年を迎えて記念本を制作。2022年10月8日(土)から10日(月)まで、アーカイブや新作を見られる展示が中目黒のギャラリー「happa」にて行われる。
陶磁器メーカー「マルヒロ」が展開する〈HASAMI〉〈BARBAR〉の10周年記念展

長崎県波佐見町で400年の伝統を持つ波佐見焼。2008年、マルヒロの現社長である馬場匡平氏は、デザインを学んだこともなく、焼き物への興味もないまま家業を継ぐことに。会社再建のための最初の挑戦が、自社ブランド〈ハサミ〉の立ち上げだった。大胆かつストレートなブランド名は、会社のみならず波佐見焼の知名度をも上げ、ファンを増やしていった。
単純に、色や形がかわいい。それだけでなく、大量生産を得意とする歴史を持つ焼き物ならではの、日常使いに耐えうる頑丈さ。毎日に楽しく溶け込む器。〈ハサミ〉はまさに、伝統とモダンを掛け合わせた焼き物ムーブメントを起こした。

〈ハサミ〉で人気の「SEASON 01」は、アメリカのダイナーをイメージした洗いやすく丈夫な実用的デザイン。
同年ローンチされた〈バーバー〉は、ものづくりの現場で培われた技術を自由なクリエイティブに生かしたブランド。日本そして長崎という場所で愛されてきた焼き物の良さを、時代を超えて届け続ける。ポップでどこかインダストリアルな印象の〈ハサミ〉に比べ、やや渋くて玄人好みの様相。だけれど、よく見るとたくさんの楽しい新しさに満ちていて、挑戦的なシリーズを年々増やしている。

〈バーバー〉で取り扱う器の数々。
自社ブランドが生まれて10年目。それを記念して、「マルヒロ」では10年の歩みをまとめた『MARUHIRO BOOK』を制作。過去製品を撮影した写真集と「マルヒロ」にまつわる用語を集めた事典の2パートで構成された大・力作だ。安田昂弘氏(CEKAI)がアートディレクションを手掛け、桜井祐氏(TISSUE Inc.)が編集と執筆を担当。モノとしての本という意味でも大変美しく唯一無二の出来で、焼き物ファンのみならず紙モノファンも垂涎の一冊だ。
そんな大プロジェクトの完遂を記念して、『マルヒロの今までとこれから展』は開かれる。10年間で制作されたアーカイブがずらりと並ぶのは、後にも先にもこの展示会だけ。さらに、「これから」を示唆する実験的な新作アイテムもお目見えする。
たとえば、安田氏とのコラボレーションアイテム「Stones」の展示。これはその名の通り石型の置物なのだけど、陶磁器ではなく次世代セラミックスを使って3Dプリンターで製作したもの。波佐見焼のメーカーでありながら「陶磁器」という枠組みをも超えていくところに、「マルヒロ」の野心と冒険心が感じられる。
さらに、一点ものの絵付アイテム「mandala limited」や、磁器の原料となる天草陶石についてのリサーチから生まれた「TRACE」など。使い捨ての紙皿や紙コップをモチーフにした〈バーバー〉の[KEEP WARE]シリーズのように、「マルヒロ」が作るのは、単におしゃれで今っぽい器ではない。そこにはいつも、伝統や歴史への眼差し、現代生活での陶磁器の在り方についての深い考察がある。
陶磁器というカテゴリーにとらわれることないクリエイションはすでに始まっていて、私設公園「HIROPPA」はその良い例。DDAA元木 大輔氏が設計した波佐見町のこの公園は2022年で1周年。展示会では、「HIROPPA」とのコラボアイテムも登場する。
2021年にオープンした、「マルヒロ」の私設公園HIROPPA
会期中は新作の展示販売とトークイベントも行われる。今とこれからを彩る波佐見焼の姿を見に、ぜひ立ち寄りたい。