2023年8月4日(金)、写真家・上田義彦さんが1990年から2011年にかけて撮影した「サントリーウーロン茶」の広告写真と中国の記録をまとめた写真集『いつでも夢を』が発売。
これにあわせて、7月26日(水)から8月13日(日)まで「ギャラリーオンザヒル」、そして7月29日(土)から8月26日(土)まで「小山登美夫ギャラリー六本木」と、都内2カ所で個展が同時開催される。写真集発売にとどまらず、展覧会まで開催する運びとなった経緯とは?
サントリーウーロン茶の名広告が蘇る!
2023年8月4日(金)、写真家・上田義彦さんが1990年から2011年にかけて撮影した「サントリーウーロン茶」の広告写真と中国の記録をまとめた写真集『いつでも夢を』が発売。
これにあわせて、7月26日(水)から8月13日(日)まで「ギャラリーオンザヒル」、そして7月29日(土)から8月26日(土)まで「小山登美夫ギャラリー六本木」と、都内2カ所で個展が同時開催される。写真集発売にとどまらず、展覧会まで開催する運びとなった経緯とは?
24歳のデビュー以来、いまなお被写体と向き合い続ける写真家・上田義彦さん。彼の代表作の一つが、「サントリーウーロン茶」の広告シリーズだ。
ウーロン茶の故郷である中国各地の風景を、約20年にわたっておさめた作品で、写し出されているのは、広大な地にぼんやりと霞んだ空気の層が漂う独特な眺めや、その時代を生きる人々の人間模様。ロケを進める中でたまたま遭遇した情景も含まれており、撮影の旅を重ねることで膨らむ、上田さんのワクワク感や喜びまでもが鮮明に焼き付いている。
「自分にとってこの広告作品は特別な存在であり、いつかまとめておきたいと思っていました。そんなとき、知り合いの編集者の方に、書籍化の提案をいただいたのをきっかけに、当時の写真の整理に取り掛かりました」と上田さん。
当初は写真集の出版のみを念頭において本作りに専念していたそう。けれど、今春のある夕べに愛犬と浜辺を散歩していた際、遠くの水平線に浮かぶ雲を眺めているうちに、展覧会をしよう、という衝動が、突如、沸き起こったと言う。
会場に並ぶ作品には、8×10カメラで撮影された広告使用写真だけでなく、上田さんがロケの合間に35mmフィルムカメラで撮っていたスナップも含まれる。
「暗室でプリント作業をすること約1年半。その膨大な枚数を編集する作業にもまた1年以上。実は、今もまだ展覧会に向けてのプリント作業を続けています。我ながら、こんなにも大変な作業になるとは思わず、絶句しているところです」と苦笑い。
渾身の展覧会が開かれるギャラリーは、2カ所。会場はどのように分かれているのか上田さんに尋ねた。
「『ギャラリーオンザヒル』においては、広告写真と大量のスナップを交えて展示しています。当時の豊かな撮影現場と、広告を通して伝えようとした遥かな想いを感じてもらいたいです。そして『小山登美夫ギャラリー六本木』では、女性のポートレートにフォーカスします。サントリーウーロン茶の写真の中には、力強さとたおやかさをあわせ持つ普遍的な女性像が表れていました。広告の意図を超え、不思議な力が宿った作品を目にしていただきたいです」
「ギャラリーオンザヒル」と「小山登美夫ギャラリー六本木」とで、重なる展示作もあるが、同じ写真に対してそれぞれ別の感じ方を体験してもらえるはずだと、上田さん。ぜひ、両会場を巡ってみてほしい。
写真家。1957年、兵庫に生まれる。写真家。多摩美術大学教授。東京ADC賞、ニューヨークADC、日本写真家協会作家賞など、国内外の様々な賞を受賞。2011年にGallery916を主宰。代表作に、『Quinault』(京都書院、1993)、『AMAGATSU』(光琳社、1995)、『at Home』(リトルモア、2006)、『Materia』(求龍堂、2012)、『A Life with Camera』(羽鳥書店、2015)、『FOREST 印象と記憶 1989-2017』(⻘幻舎、2018)、『68TH STREET』(ユナイテッドヴァカボンズ、2018)、『林檎の木』(赤々舎、2017)、『PORTRAIT』(田畑書店、2022)『Māter』(赤々舎、2022)、『いつでも夢を』(赤々舎、2023)などがある。また、2021年に公開された映画『椿の庭』は大きな反響を呼び、映画監督としての仕事も注目されている。
会場: 東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟1F
会期: 2023年7月26日(水)〜8月13日(日)
開場時間: 12:00〜19:00*最終日11:00〜17:00
定休日: 月曜日
入場料: ¥500
*会期中、写真集の購入可能。
*8月4日(金)19:00〜20:00にてトークイベントを開催(¥1,500*展示入場料込み、要予約)。上田氏のほか、サントリーウーロン茶の広告を共に手がけたコピーライター安藤隆氏、アートディレクター葛西薫氏の3名が登壇する。
会場: 東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
会期: 2023年7月29日(土)〜8月26日(土)
開場時間: 11:00〜19:00
休廊日: 日月祝、8月15日(月)〜19日(土)
*7月29日(土)17:00〜19:00はオープニングレセプション
Text: Ayako Tada