世界を揺るがすテロ組織のリーダーが実の父親と知った乃木憂助(堺雅人)。家族への思いと日本を背負う任務の間で揺れますが……。日曜劇場『VIVANT』(TBS日曜夜9時〜)6話を、ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが振り返ります。5話のレビューはコチラ。
考察『VIVANT』6話。家族の愛情はそこにあるのか
ノゴーン・ベキに会ってみたい……父の愛情を信じたい乃木の想い
考察『VIVANT』6話
乃木が求めてしまう
家族の愛情
6話の冒頭ナレーションでは、こんなことが語られた。
「この物語は乃木憂助が自らの運命に挑む大冒険の物語である」
たしかに『VIVANT』では、近年の日本のドラマには類を見ない「大冒険」が繰り広げられている。けれどもここでいう「冒険」は、国を横断する逃走劇や、身分を隠して日本を守る危険な闘いだけを指しているのではなさそうだ。むしろ6話では、乃木(堺雅人)の「運命」に向き合う内面的な冒険のほうが描かれた。
世界を混乱に陥れるテロ組織・テントのリーダー、ノゴーン・ベキ(役所広司)が自分の父親だと知った乃木。ある夜、もうひとつの人格「F」とじっくりと語らう。
幼い頃に記憶を失くした乃木の前に「F」が現れた日のこと。そこからミリタリースクールに入学したこと、アメリカで2001年のテロに遭遇したこと。そして、記憶を失くし家族というものを知らない乃木が、ノゴーン・ベキに会ってみたい、彼との間にあるかもしれない父子の愛情を信じてみたいと揺れる気持ちが語られた。
乃木の甘い考えを「F」は責め立てる。
「バカか! お前はあいつを殺すんだ、始末するんだよ」
生き別れた父との再会と、日本の未来を天秤にかけなくてはならないという特異な状況。けれどもまだ知らない「家族」に対する思いを捨てきれない乃木に対して、「F」は乃木のなかにすでにある、別の愛情の話をする。乃木は「F」が止めるのもきかず、死の砂漠で柚木薫(二階堂ふみ)を命がけで探した。ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)の手術のため大金をはたいた。
「お前はあの二人を守りたいと思ってる。それが愛ってもんじゃないのか」
最初はどうしたって違和感を持ってしまう、一人の役者が同時に二人存在する画面。けれども1話からことあるごとに登場して馴染んだ「F」のキャラクターに、そして堺雅人の演技に、この対話シーンでは違和感をすっかり忘れ去っていた。
Edit: Yukiko Arai