たった一回の過ちが世間から許されない。今を如実に反映した『不適切にもほどがある!』(TBS金曜夜10時〜)8話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。7話のレビューはコチラ。
小泉今日子、彦摩呂、宮下今日子……驚きのキャスティング続々!
たった一回の過ちが世間から許されない。今を如実に反映した『不適切にもほどがある!』(TBS金曜夜10時〜)8話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。7話のレビューはコチラ。
「タダなんだから、見たくないヤツは見なくて結構」
と言い放つ小川市郎(阿部サダヲ)のセリフに、「あくまで個人の見解です」とテロップが表示される。そんな場面が、今回はいつにも増して頻繁にあった。まるで世間からの批判を過剰に気にするテレビ局のリスクマネジメント部長・栗田(山本耕史)が指示したかのように、たびたびテロップが表示された。
『不適切にもほどがある!』8話は、「テレビを見ていない人からのテレビ批判」が描かれた回だった。犯罪ではない一度の過ちを決して許さない世間。実際にはテレビを見ていない世間の声を気にしなければならないテレビ局や作り手。
不倫報道で閑職に追いやられた元人気アナウンサー、倉持猛(小関裕太)。妻が許して3年経つが、リスクマネジメント部長に栗田が就いたことで復帰は白紙に。市郎の声もあり、テレビ復帰を果たしたものの、よくない反響がSNSを埋め尽くす。
番組を見た人によるわずかな反応がコタツ記事によって広まり、実際には放送を見ていない人々がその記事を読んだだけで、時には見出しを目にしただけで発した「意見」がSNSに氾濫する。さらにその反応を集めた記事が生まれ、また広まり……。それがスポンサーの不買運動に繋がり、当事者は辞めるタイミングを選ぶこともできない。今までは突然始まっていたミュージカルにさえ乗ってこない局員たちが、事態ののっぴきならなさを物語る。
「わかったでしょ、もはやテレビが向き合うべきは視聴者じゃない。見てない人なんです」「なあ倉持くん、君がテレビに出ると見てない連中が騒ぐんだ」
栗田が話す冗談のようなこの状況が、現実に起きている笑えなさ。そんなドラマを見ながら、SNSでテレビに言及している以上、自分はそこに加担したことは一切ないと胸を張って言えない居心地の悪さ。
栗田の家に招かれた倉持と市郎。『金妻』ばりのパティオを備えた豪邸で、家族ぐるみの付き合いをしている友人たちから17年前の浮気を責め続けられる栗田の姿を見て市郎は「これが世間か」とつぶやく。
「神妙な顔をしていれば辛気臭いと叩かれ、騒動をネタにすれば調子に乗ってると叩かれる」「ほとぼりが冷めれば必ず誰かが蒸し返す。君や私が生きるのはそういう場所だ」
「たった一回だぜ」
「今はダメなんです」
「はい」
妻との料理コーナーに出演する倉持と、批判だらけのSNSを見て栗田と市郎は会話を交わす。昭和からやってきた「異物」である市郎も、この世間には太刀打ちできないままだ。
Edit_Yukiko Arai