「セバスチャンの過激で、荒々しい面に魅かれたの。エレクトロに挑戦してみたいと思ったからよ」
8年振りにニュー・アルバム『レスト』をリリースしたシャルロット・ゲンズブールは、『レスト』のプロデューサーのセバスチャンについて語り出す。
「パリにいると、亡くなった姉(ケイト・バリー)の想い出が生々しく、息苦しくなってくるから、NYに移住したの。『レスト』のテーマは姉を追悼したものなの」
最愛の姉を失った喪失感を、エレクトロで表現?少し疑問も湧くが、映画界では演技派として絶大な人気だし、ファッション界では、ヴィトンやサンローランのミューズもつとめたシャルロットには、それが当然のことらしい。歌詞は「これまで私がノートに書きつけていたもの」だというし、今回はフランス語で唄っていて、一段とロック界に踏み込んできた感じだ。
「アルバムのタイトル『レスト』は、姉にもう少しでいいから、私と一緒にいて、ここにいて、と語りかけているの」 モード・フォトグラファーとして活躍していた姉ケイトが、パリの自宅で自らの命を断ったのは4年前の冬のこと。まだその闇から、すっかり抜け出してはいないようだ。
表題曲「レスト」は世界を席巻した覆面2人組「ダフトパンク」のギ=マニュエル・ド・オメン=クリストがプロデュースを手がけていて、ハウスやディスコ風だが、そこに繊細なシャルロットの声が重なるだけで、現実離れのした透明感が現出してくる。ポール・マッカートニーが彼女のために作った「ソングバード・イン・ア・ケイジ」も入っているし、細部まで彼女のセンスが冴え渡った、極上でスペシャルな1枚になっている。
ヴィム・ヴェンダースとの新作『誰のせいでもない』も、日本公開したばかりだ。
©AMY TROOST
『Rest』
Warner Music Japan
亡き姉に捧げる新感覚のエレクトロ・ニューアルバム。ダフトパンクやポール・マッカートニーとのコラボで、映画界、ファッション界のミューズが到達した繊細な世界。