GINZA編集部が、新刊3冊をレビュー!今月何を読もうか迷ったら、こんな本はいかがでしょう?
11月に読みたい3冊
今月のGINZA編集部レコメンド

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『あのころの僕は』
小池水音

5歳のときに母を亡くした《僕》は、いくつかの親戚の家を行き来しながら幼稚園に通っている。薄暗い気持ちを抱えていた彼の日々を変えたのは、イギリスからやってきた転入生のさりかちゃんだった。コンビーフのサンドイッチ、ハロウィンの仮装、彼女が得意だったゲーム。お互いがお互いを救い合った柔らかい記憶の細部に10年後の《僕》が言葉を与え、新しい時間が流れ始める。注目の若手によるみずみずしい中編。
『透明都市』
リリア・アセンヌ

2024年、住民が相互監視を受け入れたガラス張りの街で3人家族が忽然と姿を消す。警察官のエレーヌは同僚のニコと共に事件を調べ始めるが、単に街を出て行っただけなのではという考えも頭を離れない。夫の浮気に傷つき、娘の交友関係に悩みながら犯人を探すエレーヌがたどり着いた事実とは。細かい章立てが緊迫感を生み、小さな手掛かりがやがてクローズアップされてゆく。苦くスリリングなフランスの近未来小説。
illustration_Yousuke Kinoshita