なんでもない日常に宇宙人が! しかし変わらぬ日々は続く……。バカリズム脚本・市川実日子主演の地元系エイリアン・ヒューマン・コメディ『ホットスポット』(日テレ 毎週日曜よる10時30分〜)1話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
ドラえもんを演じるのは、20代からの盟友、東京03・角田晃広
なんでもない日常に宇宙人が! しかし変わらぬ日々は続く……。バカリズム脚本・市川実日子主演の地元系エイリアン・ヒューマン・コメディ『ホットスポット』(日テレ 毎週日曜よる10時30分〜)1話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
何度もタイムリープして人生をやり直す名作ドラマ『ブラッシュアップライフ』(2023年)。脚本のバカリズムをはじめ、この作品のスタッフ陣が再集結した『ホットスポット』がスタートした。山梨・富士山麓の老舗ビジネスホテルで働くシングルマザーの遠藤清美(市川実日子)。ある日の帰り道、彼女は交通事故に遭うが、間一髪で宇宙人に助けられる。
といっても、そこから清美の人生が劇的に変わるわけではない。宇宙人の正体は冴えない職場のおじさん、高橋孝介(角田晃広)だし、彼が自分を宇宙人と証明する手立ては「10円玉を曲げる」という、微妙に手品や「ビックリ人間」のようなチープさが漂うものだし。だから清美もにわかには信じられなくて、口止めされていたのに地元の幼馴染であるみなぷーこと日比野美波(平岩紙)と、はっちこと中村葉月(鈴木杏)に早々に宇宙人の存在を話してしまう。
宇宙人という壮大な建て付けがありながら、あくまでも日常が描かれるという点で、今作には確かに『ブラッシュアップライフ』との共通点を感じる。けれど、特に冒頭のナレーションの手ざわりは『架空OL日記』(2020年)を思い出す。たとえば冒頭、清美が自身の日々を語る中での、仕事についてのナレーション。
「制服はシャツだけ各自で洗うスタイルで、私は週1で洗う。といっても、この頻度は決して洗わない方ではない。もっと洗わない人もいる。むしろ洗う方」
ビジネスホテルでの仕事を語るにあたって、制服のシャツの洗濯頻度を取り上げるその視点。「週1で洗う」と言った後、誰かに何かを言われたわけでもないのに、その頻度が低いわけではないと言い募るこの感じ。『架空OL日記』の原作となったバカリズム自身が書いていたブログの文章の雰囲気だ。仕事や生活といった日常の細かな部分が高い解像度で描かれるこの独特の温度感こそ、バカリズム脚本の面白さだ。
Edit_Yukiko Arai