六本木の演劇文化を築いた劇場や、新宿のファッションシーンを盛り上げたビル。街のカルチャーを育み、愛されてきた建物が再開発や老朽化で消えゆくこともある。そんな転換期を迎える場所を訪ね、いま現在の姿を撮影。その物語を聞いてみた。#街の文化を担った“あの場所”へ
覚えておきたい東京の風景:南口のファッション発信地「新宿ミロード」へ
みんなの“好き”を応援し続けた場所
南口のファッション発信地
[新宿]新宿ミロード

みんなの“好き”を応援し続けた場所
「めまぐるしく移り変わる流行を全力で楽しみ、時代時代の“好き”に一生懸命だった女性たち。そんな姿を応援し続けてきたのが『新宿ミロード』です」
こう振り返るのは新宿ミロード副支配人の加賀正輝さん。1984年、「ヤングの情報発信基地」を合言葉にオープンして以来、40年変わらぬ姿勢を貫いてきたファッションビルが、新宿駅西口地区開発計画に伴い3月16日に閉館する。
「誰のことも置いていかない場所だったと思います。最先端を追いかけるより等身大という言葉が似合っていた。ファッションに自信がない人でも居心地がよく、いつでも安心して服を選べる場所だった。30年以上のお付き合いになるテナントが多いのも特徴でしたね。館と店と来館する方々が一体となり、ミロードという小さな文化を築いてきたんです」

そんな歴史を優しく振り返るようなフィナーレムービーも、「全世代に響く」と話題になっている。1984年、襟の大きな服を着てアイドル風の前髪を気にする女の子。1995年、ポケベルを手にしたブラウンヘアの女子高生。マスクに眼鏡の女性は2020年……という具合に、それぞれの時代にミロードへ通ったであろう女性たちの姿が、2024年までの時系列で描かれているのだ。
「流行とは“今、これがいちばん!”と信じたものをとことん楽しむこと。とても素敵なことだと思うんです。もちろん移り行くのが流行ですから、後で気恥ずかしくなることだってあるでしょう。でも、その時々の“好き”の集合体が今の自分なのだから、選択は全て正解。全肯定しようよ、という想いを込めました」
一方、アイコニックな台形のビルを見上げながら、「いろんな地域からさまざまな人が集まる新宿らしい施設だった」と語るのは、新宿ミロードチーフマネージャーの大谷実菜さんだ。
「閉館が決まってから、SNSを通して多くのメッセージをいただいています。中には“数十年前、上京して最初に通ったのが新宿ミロード。当時の不安な気持ちに寄り添ってくれた”という声も。そういう方々へ感謝と共に伝えたいのは、これからも好きなおしゃれとまっすぐ向き合っていこう、という想いです」

ℹ️
新宿ミロード
住所_東京都新宿区西新宿1-1-3
1984年開館。20代のレディスファッションを中心とした新宿駅南口の商業施設。区画内の「モザイク通り」(2023年終了)には雑貨店やカフェが並び、待ち合わせの定番に。3月16日の閉館までWEBでフィナーレムービーを公開中。
Photo_Kohei Kawatani Text_Masae Wako