一度は同じ方を向き、ともに苦難を乗り越えようとした原田幸太郎(阿部サダヲ)とネルラ(松たか子)。しかし歯車が狂いはじめ……。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日毎週木曜よる9時〜)3話を、「物語」を愛するライター・青島せとかとイラストレーター・まつもとりえこが振り返ります。
2話のレビューはこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
ネルラの父「君が与えたあの子のしあわせを、君の手で守ってやってくれ。頼む」

一度は同じ方を向き、ともに苦難を乗り越えようとした原田幸太郎(阿部サダヲ)とネルラ(松たか子)。しかし歯車が狂いはじめ……。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日毎週木曜よる9時〜)3話を、「物語」を愛するライター・青島せとかとイラストレーター・まつもとりえこが振り返ります。
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*レビューはネタバレを含みます。
3話は、起きないネルラ(松たか子)から始まる。
2話ラストで幸太郎(阿部サダヲ)とネルラは15年前の事件について話し合った。その翌朝だ。ひと晩中ネルラを腕枕していたらしい幸太郎は、起きる気配のないネルラの頭からなんとか抜いた腕をさすりながらリビングへ行く。しびれているのだろう。
1話でもネルラの寝相の悪さに触れられていたし、2話でまだネルラに事件について聞けていない幸太郎はネルラの寝姿を眺めながら「なんでそんなに眠れるんだ? 15年経ったから眠れるのか?」と思っている。こうも寝ているシーンが多いと、ネルラはカンパネルラではなく「寝る」から来てるのか、とさえ思うほどだ。
起きてきたネルラは、かつて幸太郎が「公益を守るために法律を運用するのが法律家の仕事」と言ったことを持ち出し、「それでも私と一緒に乗り切ってくれるの? 本来なら真実に突っ込んでいくのがあなたの生き方でしょ?」と確認する。
しかし、朝からパンとガスパチョを届けにきた考(岡部たかし)がいたし……。どうやらこの一家は、4階に住む父・鈴木寛(段田安則)、3階の叔父・鈴木考、2階原田幸太郎、ネルラ夫婦、1階弟レオ(板垣李光人)と1棟のマンションで住み分けている部屋の鍵を全員が持ち合っているらしい。プライバシーも何もあったものではない。
朝からいきなりそんな話題を出されて面食らった幸太郎は明言を避けてワイドショーの仕事へと出かけてしまう。道中「ブレてる」と悩む幸太郎。
けれども、ネルラが父・寛に話した幸太郎の反応は、事実とはだいぶ違っている。
「法律家としての筋を曲げても私を守ってくれるって言ってた」
舞鶴でネルラについて語る寛を観て悟った。寛は子どもの頃から今に至るまで、ネルラの浮き沈みを克明に話してみせたのだ。それだけネルラを心配し、見守っていたのだ。そんな父を、ネルラは安心させたかったのだろう。これ以上心配させぬよう、強い味方がいるのだと伝えたかったのだろう。その味方が確保できるまで、再捜査についての報告自体していなかったのだから。
「君が与えたあの子のしあわせを、君の手で守ってやってくれ。頼む」
寛が幸太郎に頭を下げる。クセのある、時にかなり過干渉とも取れる、レオいわく「うっとおしい」家族に「だいぶ慣れた」幸太郎は思わず涙ぐむ。
父と母が死んでから親戚づきあいもしていない、兄弟もいない。ネルラ一家はそんな幸太郎にできた新たな家族だ。
Edit_Yukiko Arai