モヤモヤを抱えながらも人気者になっていく原田幸太郎(阿部サダヲ)。15年前の事件のことが妻・ネルラ(松たか子)の口から明かされる……。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日毎週木曜よる9時〜)2話を「物語」を愛するライター・青島せとかとイラストレーター・まつもとりえこが振り返ります。
1話のレビューはこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
サスペンスではなく夫婦が過去を乗り越えるヒューマンドラマなのだろうか

モヤモヤを抱えながらも人気者になっていく原田幸太郎(阿部サダヲ)。15年前の事件のことが妻・ネルラ(松たか子)の口から明かされる……。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日毎週木曜よる9時〜)2話を「物語」を愛するライター・青島せとかとイラストレーター・まつもとりえこが振り返ります。
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*レビューはネタバレを含みます。
2話冒頭、原田幸太郎(阿部サダヲ)が冷凍チキンライスを活用したオムライスを作ってみせる。チキンライスの上にオムレツをのせて割るタイプの、伊丹十三脚本・監督の映画『タンポポ』(1985)に登場したことから「タンポポオムライス」として知られるオムライス。1話のクロワッサンやビーフシチューに続いて、今後もこうして各話に印象的な料理が出てくるのだとしたら、楽しみが上乗せされた気分だ。
けれども、表面的にはしあわせそうに見えても、ネルラ(松たか子)から「この頃機嫌がいいわね」と声をかけられても、ニュースショーの代打MCが評判を呼びますます人気者になっても、幸太郎はずっとモヤモヤを抱えている。15年前の事件の再捜査が決定したことを刑事・黒川(杉野遥亮)から知らされてからというもの、ネルラに「きみは人殺しなの?」と聞きたくても聞けない日々が重なってゆく。
幸太郎は、臼井(小松和重)に事件についてこっそり調べてもらうことに。臼井は幸太郎の事務所では新人で、法曹一家出身の今泉(金田哲)に比べると劣っているようにも見えるが、幸太郎とは「京大の同級生」らしいから、それなりに勉強もでき、能力も高いのだろう。
臼井から事件の詳細を聞いた幸太郎は、いよいよネルラに真相を聞こうと決意して帰宅。いつもと変わらない雰囲気で美容院の帰りに竹下通りで買ったという2200円の服を自慢するネルラだが、次の瞬間、問いかける。
「幸太郎さん、私を人殺しだと思ってる?」
この短い一文が始まったときには笑顔だったのに、終わるときにはスッと表情が消えていた。そのグラデーションの見事さ。「よっ! 松たか子!」と声をかけたくなるほどだ。
ネルラは芸大で布施(玉置玲央)と出会ってから15年前の事件が起きるまでのことを順を追って幸太郎に語り始める。けれど肝心の事件については「わからない」という。頭を打ってから何も覚えていない、と。そして続ける。
「私が殺したか殺してないかわからないけど、でも彼を破滅させたのは私だと思う」
事件後は望みやしあわせを求めず、絵画修復の仕事を捨て、嫌いな教師になったというネルラ。そういえばついさっき2200円の服について話していた時も「着るもの買ったの何年ぶりかしら」と言っていた。幸太郎と出会い、再びしあわせを求め始めた矢先、15年前の事件が再び襲いかかる。
「やっぱり私は希望を持ってはならなかったのよ。しあわせになろうなんて望んだことが間違いだったの」
15年もの間、自罰的に暮らしていたネルラに再び希望を与えたのが幸太郎なのだとしたら、もしかしてこのドラマは妻の秘密を探るサスペンスではなく、夫婦が過去に向き合い、乗り越えるヒューマンドラマなのだろうか。
Edit_Yukiko Arai