終活に勤しむアラフォーおひとりさまを綾瀬はるかが演じるドラマ『ひとりでしにたい』(全6話/NHK毎週土曜よる10時)が、8月2日に最終回を迎えました。ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが後半4〜6話を中心に振り返ります。
レビュー前編はこちら。
「伯母さんの死を、人生を勝手に悲惨だと決めつけてごめん」

終活に勤しむアラフォーおひとりさまを綾瀬はるかが演じるドラマ『ひとりでしにたい』(全6話/NHK毎週土曜よる10時)が、8月2日に最終回を迎えました。ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが後半4〜6話を中心に振り返ります。
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孤独死は本当に不幸なのか。
『ひとりでしにたい』が提示したのは、そんなテーマだった。
誰にも看取られることなく、死後もしばらくは誰にも気づかれることなく、見つかった時には無惨な姿になり果てている。「孤独」+「死」という名前からして恐ろしい印象しかない人生の終わり方を、肯定することはできるのか。
39歳独身、学芸員として働きながらアイドルを推し、自由に暮らしていた主人公の山口鳴海(綾瀬はるか)。彼女は伯母・光子(山口紗弥加)の孤独死をきっかけに、終活について考えるようになる。安易に婚活を始めたり、両親の離婚問題にぶち当たったり、いろんな出来事が起きるたび、彼女がこれまでいかに何も考えていなかったのかを突きつけるのは、同僚の那須田(佐野勇斗)だ。
那須田は鳴海に好意を寄せていて、共通の話題で盛り上がるために何かと彼女の終活に口を出す。那須田の意見や指摘は、鳴海にとって考えたこともなかったこと、気づいていないことばかりだ。時に鳴海が両親(國村隼・松坂慶子)と話す際のクッション役や、鳴海よりも切羽詰まった問題である二人の終活の指南役にもなり、那須田は彼らからの信頼も獲得していく。4話でも、深く考えず投資を始めようとする鳴海の父・和夫に投資の手数料や実情について語り、諦めさせるという重大な役割を果たす。鳴海はいつしか那須田に頼るのが当たり前になっていく。
そんな鳴海と那須田の関係が変わるきっかけが5話で訪れる。職場で二人の関係が噂になっていたのを耳にした鳴海が那須田に思わず「話しかけるんじゃねえ!」と言い放ってしまったことから、那須田は鳴海を無視しはじめる。それにより、鳴海は那須田との関係について思い悩むように。ついには全てに優先していたはずの“推し”のテレビ出演情報を見逃すという痛恨のミスまで起こしてしまう。
今よりもっと性別による立場や役割が決めつけられ、理不尽な目に遭うことも多かった時代を生き抜いてきた母に「逃げる」以外のアドバイスをもらった鳴海は、那須田に対峙。「モラハラ親から入念なDV英才教育を受けた化け物」を自認する彼が「いい子」であり、遅れてきた中二病であると看破する。
ここまでとことん那須田と向き合った鳴海が、最終話で猫に判断を委ねた結果、思いがけず付き合うことになってしまうあたり、抜けていていい。こんなにも将来について冷静に考え、家族と真摯に話し合うことができるようになっても、猫の前では無力なのだ!
Edit_Yukiko Arai