娘・ネルラ(松たか子)と父・寛(段田安則)、お互いに疑い合っていた15年。ようやく真実を語り合うけれど……。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日毎週木曜よる9時〜)5話を、「物語」を愛するライター・青島せとかとイラストレーター・まつもとりえこが振り返ります。
4話のレビューはこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
ネルラと幸太郎の出会いは、本当に「タイミング」だったのか?

娘・ネルラ(松たか子)と父・寛(段田安則)、お互いに疑い合っていた15年。ようやく真実を語り合うけれど……。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日毎週木曜よる9時〜)5話を、「物語」を愛するライター・青島せとかとイラストレーター・まつもとりえこが振り返ります。
4話のレビューはこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
家族や恋人。本来ならばいちばん信頼している相手、なんでも包み隠さず話せる人に、大事なことを聞けないまま月日が過ぎる。近くにいるからこそ聞けない。穏やかな日々を壊したくない。聞いてしまうことで、関係が変化するのが怖い。そういうことはザラにある。
ネルラ(松たか子)と父・寛(段田安則)もそんな気持ちを抱えて15年間を過ごしていた。お互いを殺人犯かもしれないと疑いながら、長い年月、表面上は平穏な父娘として暮らしてきた。
けれど、幸太郎(阿部サダヲ)の存在がその均衡を破った。
幸太郎はそれなりに恵まれた人生を送ってきたようだが、親子・親戚関係はそこまで密接ではない。一人っ子で兄弟の関わり合いもない。だからマンションの別の階とはいえひとつ屋根の下に暮らし、お互いの家の鍵を持ち、頻繁に行き来したり食事を共にしたりするネルラ一家の関係は幸太郎にとってかなりの衝撃だったはずだ。ネルラと結婚したことで、そんな家族との関わりを含めて彼自身の生活も、考え方も大きく変わった。
けれども、それはネルラも一緒だった。一度は幸せを諦めてさえいた彼女は、幸太郎と出会い、彼を失いたくないと思ったから、15年間見て見ぬ振りをしてきた父への疑惑に立ち向かう決意を固めることができたのだ。
幸太郎は検事出身の弁護士という職業柄なのか、それとも彼自身の資質なのか、聞きづらいことをまっすぐ聞く。2話では15年前の事件についてネルラに聞くのをかなり逡巡していたが、一度聞いてしまえば、もうあとはどんどん聞く。
「どういう心であいつの車に乗ったの?」
「どういう心でこれ(自画像)を描いたのか聞いている」
「この(ネルラの心の)変化は、あの刑事と関係あるの?」
5話で幸太郎が「尋問みたい」にネルラに投げかける質問は、もう事件に関する内容じゃない。これは明らかに刑事・黒川(杉野遥亮)に対する嫉妬からくるものだ。でも、普通なら言い淀んでしまいそうな気持ちを包み隠さず、素直に質問したからこそ、ネルラの次の言葉が聞けたのだ。
「これを描いたのは、どうしてもあなたと生きていきたいと思ったからです」
Edit_Yukiko Arai