俳優・太賀は考える。「カッコいい大人の男の定義とは何か」。そんな彼がいい男になるべく自身を磨くため、素敵な女性たちからアドバイスと金言をいただく全3回の連載がスタート!第1回のゲストは、映画で姉弟役を演じたことがある女優・長澤まさみさん。太賀、いきなり打ちのめされる…!?
長澤まさみさん、いい男って、なんですか? 俳優・太賀が聞くvol.1
長澤 自然界では、メスのほうがどんどん増えてるらしいよ
太賀 やばい、いい男じゃないと淘汰されちゃうかも…!
長澤 太賀と初めて会ったのは、ハワイで映画の撮影をしているとき。共演者が集まっているところに「あ、どうも!」って後からやってきて、すーっとなじむ姿を見て、いい子なんだなって思った。
太賀 ありがとうございますっ!今回、素敵な女性のアイコンとして真っ先に思い浮かんだのが、長澤さんでした。ものすごくキュートで天真爛漫なところがある一方で、〝この人はこういう人〟と、人を客観的に見ている感じがしたんです。その純真さと冷静さが素敵だなって思っていました。
長澤 ありがとうございます。
太賀 長澤さんと共演したときは、姉弟役だったじゃないですか。ラフに話しながらも、「こうしたほうがいいんじゃない?」「背筋を伸ばしなさい!」と、本当の姉のようにアドバイスをくれて。そんなふうに、現場では演じる役ならではの演者同士のコミュニケーションをとることがあると思うんですけど、長澤さんがスゴいのは撮影が終わってもお姉さんでいてくれるところ。他の人にも役と同じように接していて。それは意識してやってるんですか?
長澤 たぶん、恥ずかしいからだと思う。お姉さんな感じでふるまっていたのに、急にキャラを変えるのが。共演する方は年齢関係なく、みんなすごいと思っているから、素の自分で会うのがすごく恥ずかしい。私は深い人間じゃないし自信がないので本当の自分以上に大きく見せるのが嫌なんです。だから、役のままで接するのは逃げでもあって。
太賀 僕もそうですけど、普通は自分を大きく見せたいと思ったり、取り繕う人が多いと思うんです。だから、長澤さんは逃げって言いましたけど、攻めの姿勢なんじゃないかなって。カッコいい。うん、カッコいい。2回、言っちゃいました(笑)。
長澤 カッコいいものじゃないよ!はったりをかまして最後の目的地までたどり着ける自信がないし、自分の力を〝このくらい〟と決めているところがあるからだと思う。役を演じるときは作品を作る側として、それを超えていこうって思いはあるけど、長澤まさみ個人としては、そうじゃなくていいかなって。
太賀 たしかに、自分の力量以上のことをしようとして自分のケツを拭けなかったら、ダサいですもんね。
長澤 うーん、でも、それはチャレンジをした結果だからいいんじゃない?ダサくても、それが人間らしい魅力になっている人もいるだろうし、そんなのは、どっちでもいいんだと思うよ。私って子どもの頃からどこか冷めた人間だったの。誕生日にお祝いをしてもらっても上手に喜べなくて、すごくはがゆかった。でも、冷ややかな目で見ていても、自分が見えない世界ができるだけだから、あんまりよくなかったなって、あるとき気づいたんです。
太賀 長澤少女が変わるきっかけがあったんですか?
長澤 これ、というのはないけど、思春期の頃は相手の印象を勝手に決めていて、それでは何も始まらないなって思ったことかな。
人は完ぺきじゃないと知れば、
いい部分が見えてくる。
太賀 あの聞いていいですか?(前のめり)
長澤 え、なになに、怖いよ(笑)。
太賀 理想の男性像ってどんなのですか?
長澤 それは、恋愛的なのか、人間的なのか、仕事的なのか、いろいろあるじゃない。
太賀 人間的に!
長澤 えー、難しいけど……、焦らない人かな。
太賀 余裕がある人ってことですか?
長澤 非常事態でも焦らずに、自分のペースでできちゃう人っていいよね。私なんて、すぐ焦って、せかせかしちゃうから(笑)。
太賀 俺も、すごく焦りますからね。だから、すごいパンチラインです。
長澤 でも、マイペースすぎる人って、普段はなんだかイラッとするところもあるんだよ。でも、そういうのって、実はいい気がする。やっぱり、完ぺきな人っていないから。人は完ぺきじゃないということを知っていれば、自然と、いい部分が見えてくると思う。
太賀 勉強になります。
長澤 若い頃、仕事をしていて、自分や周りの人が完ぺきじゃないことに対してイライラすることもあって。そんなときに、私が素敵だと思っている女性に「完ぺきな人はいないんだから」と言われてから、そういうところを受け入れていかなきゃなって思った。あと、人に威圧感を与えない人は素敵だと思います。
太賀 それと通じることかもしれないんですけど……。〝いい男ってなんだろう〟と考えていて、怖い思いをさせない人がそうかなって思ったんです。たとえば幽霊が出るような心霊スポットでも安心感を与えられる人。恋人が仕事で行き詰まって〝このままじゃ、私ダメだ…〟となっている横にいて安心感を与えられる人。そういう、精神的にも物理的にも怖い思いをさせないのは、いい男かもしれないなって。どうですか?
長澤 それは、当たり前のことだよね(笑)。
太賀 あー、いや、もう、連載1回目にふさわしい展開ですわ!何もわかっていなかったですね、俺。初歩中の初歩でしたね。車の中で考えながらハッとしたんですけどね。
いつか、両性具有のような
タイプが生まれてくるかも。
長澤 恋人だけじゃなく、すべての男性との関係でも同じだけど、お互いを尊重し合えるというのが理想です。でも、それってなかなか難しいことなんだと思っていて。私、今も無邪気なところがあって、面白くて楽しい先輩をいじりすぎて怒られることがあるんです。
太賀 そうなんですね、意外です!
長澤 その経験から学んだのは、男性は女性よりも精神的に繊細な部分が多いんだろうな、ということ。だから、男性に対しては一歩下がってじゃないけど、尊重して接しないといけないんだなというのは、さまざまな場所で感じます。そして、そう感じている女性はたくさんいると思うし、男性に対して上手に接している女性がいるから、男性が楽しく生きられているんだろうなとも思ってる。
太賀 なるほど。
長澤 もちろん、それは男女の性があるうえで女性が本能的に感じて行動していることだから、別にそれに対して何かを思ってほしいわけじゃなくて。男女っていうのは、そうできているんだなって思うし、思いやりが大事。
太賀 深い……。
長澤 深くないよ(笑)!
太賀 いや、そういうことさえも見落としている男子諸君ですよ。俺も含めて。
長澤 昔にくらべて女性が外で働くようになったとか、時代もあるんだと思う。
太賀 今は女性がどんどん外へ出ていっているじゃないですか。今後、また今とは違う形に変わってくると思いますか?男性をたてる風潮が戻ってくるとか。
長澤 違うんじゃないかな?すごく先の未来には、両性具有みたいなタイプが生まれてきたりしそう。自然界でもメスのほうが増えているって話があるみたいだし。
太賀 やばい。いい男じゃないと淘汰されちゃうんですね…。読者は女性の方が多いかもしれないけど、男性も学べる連載になりそう。
長澤 この連載が終わると、太賀はどうなってるの?
太賀 研ぎすまされてるはずです。
長澤 スーツ着て、葉巻持ったりして。
太賀 むしろ、研ぎすまされすぎて、ふんどしで坊主になってるかもしれません!
今回の学び
いい男とは、
非常事態でも焦らず
マイペースであること
太賀さん ビンテージのラングラーのシャツ ¥6,800(ダンジル 042-720-8703)/カットソー ¥18,000(コモリ │ ワグ インク 03-5791-1501)/靴 ¥24,000(クラークス オリジナルズ │ クラークスジャパン 03-5411-3055)/パンツ*スタイリスト私物
長澤さん ドレス ¥168,000、ブーツ ¥68,000(共に3.1 フィリップ リム │ 3.1 フィリップ リム ジャパン 03-5411-2870)
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太賀
1993年、東京都出身。2006年デビュー。映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』で主演をつとめる。中島哲也監督による映画『来る』に出演。ともに公開中。
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長澤まさみ
1987年、静岡県出身。現在、映画『マスカレード・ホテル』が大ヒット公開中。映画『キングダム』が4月19日から、『コンフィデンスマンJP』が5月17日から公開予定。