蘭奢待をご存じでしょうか? 正倉院の宝物のひとつで、時の権力者たちが愛してやまない天下の名香と言われています。毎年、秋に奈良で正倉院の宝物が一般公開されますが、今年は同時期に大阪と東京で「正倉院 THE SHOW」という体感イベントが開催されたのです。
その中の目玉のひとつが、最新技術で再現された蘭奢待の香りでした。私は鼻に持病があり、匂いがわからないことが多いのですが、気づいたら前売り券を買っていました。蘭奢待の香りを確かめたいと願うあまり、耳鼻科にも行きました。準備万端です。
ところが、イベントに参戦したのが会期終盤だったので、入場まで数時間待ちの大行列、やむなく出直して、ようやくレプリカの蘭奢待と再現された香りに対面できました。
最初に感じたのは、シナモン、そして、かすかな甘さとその奥から立ち上がるスパイシーさでした。これが蘭奢待、やっと聞く(嗅ぐ)ことができました。なんだか長年の悲願が成就したように感じたのです。
