2011年に起きた東日本大震災から12年。東北沿岸部の被災地はこの間に、巨大な防潮堤をはじめ、嵩上げや高台の造成を行い、今では「あたらしいまち」が出来上がっている。かつての被災地が辿ってきた過去と現在を収めたのが、写真詩集『New Habitations from North to East: 11 years after 3.11』(2023年、YYY PRESS)だ。詩を書いたのは、ginzamag.comでもこれまで何回かインタビューを行ってきた、アーティストの瀬尾夏美さん。写真は、『GINZA』本誌でも度々撮影しているトヤマタクロウさんが撮った。700キロメートルに及ぶ旅の道程を、言葉と写真で表現した二人に、この写真詩集の制作秘話を聞いた。
💭INTERVIEW
88年生まれが出合い直す、11年前の「あの日」
写真詩集『New Habitations』瀬尾夏美×トヤマタクロウ インタビュー
![88年生まれが出合い直す、11年前の「あの日」](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fapi.ginzamag.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2023%2F11%2FDSC_0770_R.jpg&w=3840&q=75)
![Photo_Takuroh Toyama](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fapi.ginzamag.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2023%2F11%2FDSC_6418_in.jpg&w=3840&q=75)
新たな旅人を迎えて、東北を歩く
──東日本大震災以後、陸前高田や仙台を中心に活動してきた瀬尾さんが、今回、岩手県北から茨城までの沿岸部を歩き直そうと思ったのは、なぜでしょう?
瀬尾 2019年の秋、宮城県丸森町が台風による大きな被害を受けました。私はもともとその町の古老たちに民話を聞いていたので、直後に会いに行くと、彼らはこれまでの地域の歩みと今回の災害を一続きのものとして話してくれるわけです。まず、その冷静さに心底圧倒されました。そして、災害には土地の歴史や地形、生業など色々なものが絡んでいる事実を改めて知り、翻って、私は東日本大震災以降のタイムスパンでしか考えてこなかったことに気づいたのです。
その後、この本を企画した「住むの風景」というアートプロジェクトでも東北の被災地のリサーチを始めることになり、久しぶりに岩手県北へ行ってみることにしました。実際、土地の方に話を聞くと、「やっぱり防潮堤は必要なんだよ」とか、復興工事に対して肯定的な人が多くて。岩手県北部は、明治や昭和の津波でも甚大な被害が出ているからか、陸前高田の人たちとは違う価値観を持っていました。これは土地ごとに人びとの感覚や歴史が全部違うんじゃないか?と、10年経ってやっと気づいたんです。それで、北から東京に続く沿岸部それぞれを一度に訪ねてみようと思い立ちました。
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Text_Satoko Sibahara