SixTONESの京本大我によるクリエイティブ・プロジェクト「ART-PUT」。写真展開催、写真集発表に続き、初アルバムがリリースされる。作品やクリエイションそのものへの想いを聞いた。
GINZA5月号から、インタビューと一部掲載カットをWEB特別公開。
軽やかに創造のボーダーを行き来する
SixTONESの京本大我によるクリエイティブ・プロジェクト「ART-PUT」。写真展開催、写真集発表に続き、初アルバムがリリースされる。作品やクリエイションそのものへの想いを聞いた。
GINZA5月号から、インタビューと一部掲載カットをWEB特別公開。
各方面で勢いが止まらないSixTONESのメンバー、京本大我が昨年9月、クリエイティブ・プロジェクト「ART-PUT」を始動させた。
「ドラマに映画、舞台といろいろ幅広く挑戦させていただいたのが20代。30代からは、深めていく作業をしていきたい。そう考えた時に、小さい頃から海外では必ず美術館に行くし、学生時代は美術部で油絵をやっていたこともあって、好きなアート表現を極めていきたくなったんです。SixTONESでの役割としても、クリエイティブを担っていけるんじゃないかとも思いました」
思いついたらすぐやりたくなる性格。その時点でハマっていたカメラは、スタートから半年というスピードで写真展『視点と始点』として結実させた。独学で始めてから勉強した中で、出会った写真家が、1950〜60年代にニューヨークを拠点に活躍したソール・ライター。
「彼の写真がどんぴしゃで好みで、オマージュとして画角を意識した写真をインスタに上げることもあります」
インスタグラムでは当初、アカウント名を〝見習いアーティスト〟として、しばらく本名を伏せていたことも話題に。
「漠然とですけれど、最初に見習いから独り立ちするドラマを作ろうと思っていて、いつ名前を出そうかタイミングを計っていました。そんな中で思っていたより早く写真展が決まって、今こそ明かす時なんじゃないかと。個展をするのに見習いっておかしいですからね(笑)。たまたま〈ミュシャ〉のフレグランス撮影にフォトグラファーとして呼んでいただいて、それが見習いを卒業してプロアーティストへの最終試験というプロセスが自分の中で見えたことで〝見習いアーティスト〟という名前を捨てる勇気が湧いたんです(笑)」
自らが被写体となった写真集『Retrace,』では、ドラマに映画にミュージカルにぎっしり詰まった20代最後の1年が収められている。全ての作業に関わり、とことんこだわった。
「微妙な字の位置だとか、指示が細かすぎて我ながらヤバかったです(笑)。写真展にしても釘の位置を直していただいたりしました。誰が気づくんだよっていうくらいの差なんですけどね(笑)。それでも遠慮しているんですよ。お願いごとが10あったら7くらいしか言ってない。それは妥協や諦めではなくて、世間的にはさすがにどっちでもいいだろうと自分でさえ思うから(笑)。でも、俺の名前で『ART-PUT』と打ち出している以上、世に出すものは全て自分のセンスとして受け止められるわけで、少しも後悔を残したくないから、スタッフのみなさんには本当にご迷惑をおかけしています。プロジェクトを始めて以来、解禁時のリリースに誤字脱字がないかといったこともチェックしてくださっていて、その仕事量に驚きましたね。裏で支えてくださる方々への感謝は忘れないでいようとより一層思うようになりました」
矢継ぎ早に発表されていく京本大我の表現の世界。次は本業とも言える音楽。全曲で作詞・作曲に携わり、「『ART-PUT』の名刺代わり」となる初アルバム『PROT.30』を完成させた。リード曲には、燃え尽きる寸前だった炎を再び燃やす渾身のナンバー 「滑稽なFight」を選んだ。
「デモはミュージカル『モーツァルト!』の稽古期間中にできていたんですが、レコーディングは本番の後に回してもらったんです。その間に祖父が亡くなり、舞台が想像以上にハードで……。たまった想いを全てこの歌で吐き出してしまおうと、歌入れの前に2番を一気に書き直したんです。30歳の等身大の僕が、今伝えたいメッセージを詰め込んだので、リード曲はこれ以外に考えられませんでした」
レコーディングでは、SixTONESではなかった新たな試みもあった。
「いつもはブロックごとに録るんですけど、『灯り』というピアノで始まるバラードが、何テイクやっても歌の人格が全然定まらなかったんです。Aメロに時間がかかってしまったので、いったんBメロにいったんですけど、つなげて聴くとやっぱりしっくりこない。それでAメロからサビまで一気に歌うことにしたら感情も歌のストーリーも途切れなかった。この方法は新鮮でしたね」
自身の音楽のルーツとして、デヴィッド・ボウイやレディオヘッドなどのUKロックを挙げる。邦楽ではMr.ChildrenやRADWIMPSにも影響を受けてきた。
「好きなバンドに共通しているのは嘘をつかないこと。『絶対、大丈夫』とむやみに希望を持たせるんじゃなくて、『ダメな時はダメだよね』とちゃんと歌ってくれたほうが僕は信じられる。今回のアルバムの全曲にネガティブワードが入っていて、実は前向きじゃない。でも、嘘はひとつもない。それは無意識のうちに彼らのマインドがアルバムにも反映されているのかもしれません」
今作は「ロックという一貫性」は保ちつつ、ファンキーなナンバーやメロディアスなバラードが挟み込まれるなど、カラフルな1枚に。
「ロックという枠組みの中でジャンルレスにしたかったんですよね。それができるのも音楽性において自由度の高いアイドルの強みだと思うんです。ロックバンドだと『そういう方向性になっちゃったんだ……』とネガティブに受け止められてしまいそうなことも、僕はアイドルなので、言ってしまえば、刺さらなければ次にやらなきゃいいだけ。そういう攻め方は常に心掛けました」
アイドルであることに自覚的。「だからこそ届けられる音楽がある」と信じている。
「例えばさっき話した『滑稽なFight』だったら、『モーツァルト!』を観劇してくれた人は、その体験を思い出してくれるかもしれない。音楽とそれ以外の仕事をリンクさせられるのは、アイドルという、いろんなジャンルをこなすチャレンジングな肩書きの人間ならでは。でも、グループに所属しながらソロで音楽活動を始めると、ファンの人がどうしてもソワソワしてしまう。それがもどかしくて……。一人で出た映画で評価を受ける、バラエティを頑張る、MCの才能を発揮する。音楽がそこと並ばないことがずっと疑問で、僕は口下手で、いつもなら呑み込んでしまうようなこともアートに落とし込めば表現できるんです。こうして創作をコンスタントにできる今、すごく心が健康でいられています。ソロでの音楽活動はけっしてネガティブじゃないことを証明したいという想いもあるんですよね。しっかりグループ活動をやりながら、個人活動として音楽を追求するメンバーがいる。そういう成功例と言うとおこがましいですけど、ポジションを自分が確立できれば、後に続く子たちにも道を開けるはずです」
これから始まるライヴツアー 「BLUE OF LIBERTY」でもこれまでのライヴや舞台の経験が活かせるのではないかと、目を輝かせながら話す。
「バンドを背負ってあとは照明だけ。演出なしの熱いロックライヴを想定していたんですけど、アイドルとロックのハイブリッドもいいんじゃないかと思い始めています。結果的にどうなるか現時点ではわからないですけど、これまで培ってきたショー的な要素を取り入れて視覚的に面白いものを作れたら」
尽きることのないアイデア。ライヴを終えた後の次なる一手とは。
「『PROT.30』は〝一人〟という形にこだわりました。僕の声以外ないから聴き手が飽きないように曲順も、家でああでもないこうでもないと考えましたし、フィーチャリングという形もとりませんでした。初ソロアルバムでまずは、自分だけでできることを提示しないと説得力がないですからね。でも、2枚目以降は幅を広げてコラボもいいかなと思っています。バースデーライヴのゲストに来てくれた崎山蒼志さんと一緒にやりたいねって話しているんですよ。実は好きなYouTubeチャンネルも同じで!かなりマニアックで、5、6年前にメンバーのジェシーが家に遊びにきた時に流したら、『大我は家で一人、これを観てるの……?』って心配されたくらい(笑)。そこまで波長が合う二人が曲を作ったら絶対に面白いよねって話しているんです。それとまた絵を描き始めたので、しっかり見せられる場を作りたいと思っています」
Model_Taiga Kyomoto Photo_Sodai Yokoyama Styling_Taichi Samura Hair&Make-up_Junko Fukuda (Nestation) Text_Sakiko Koizumi