髪を短く切り、レッドカーペットでは大胆にドレスアップ。 私たちの目に映る穂志もえかは、いま誰より眩しい。 “安心”は脱ぎ捨て、未知のステージへと歩き出した彼女に、映画への想いを聞いた。
穂志もえかに、映画への想いを聞いた
心を揺らし、スクリーンに生きる

「意外性を見せたい」
役者として、真っ直ぐ真摯に
——陽が沈みゆくなかでドラマティックなラストカットを撮り終えて、そっと一人で小躍りしながら戻って行った穂志さんの後ろ姿がとても可愛らしかったです。
最後にいい写真が撮れたと思えた瞬間があって、「終わりよければ全て良し」と、勝手に自己完結してうれしくなりました。
——“旅”がテーマのコレクションでしたが、旅心は刺激されましたか?
ひとつの場所に留まり続けていると、どうしてもそのなかで完結してしまう感覚があるんです。自らのテリトリーの外に積極的に出てみるのは、やっぱり自分の心を豊かにしてくれるなと感じました。
——どのルックもお似合いでしたが、ふだんの穂志さんはどんなスタイルを?
気分によって印象を変えるのが好きです。今日はいてきたワークパンツとか、ボーイッシュな装いも好みですし、一方ではミニ丈のワンピースに、膝丈のシアーな靴下とローファーを合わせたり。後者は、3月に仕事で初めてパリに行き、偶然入ったお店で半ば言われるがままに買ってしまったコーディネートなんですけどね(笑)。
——以前、「演じている役の影響が選ぶ服に出る」とお話しされていました。
ついこの間まで、映画の撮影で山にこもっていたんです。コンビニも飲食店も徒歩圏内にはまったくないような場所で。役柄も、服に無頓着という設定で、現場では「穂志さん、信じられない格好している」と思われていたようです(笑)。自宅に帰ってきた途端、さすがに着る服がないなと思って、慌てて夏服を買いました。
——髪型も服選びに影響しますよね。そもそも、髪を短くされたきっかけは?
中高生時代にベリーショートにしたことがあったので、短くしても大丈夫かなという想像はできていたんです。仕事でも柔軟に対応ができるからロングのままだったんですが、そうすると、“女子”っぽい役のオファーが多くて。マッチングアプリをやっている女の子の役が3連続で来たり(笑)。「もっといろんな役をやってみたい」「意外性を見せていきたい」という気持ちはずっとありました。そんなタイミングでNetflixの『恋愛バトルロワイヤル』(24)に出演することになり、衣装合わせで監督に「この役、ショートヘアはどうですか?」と提案してみたんです。そこで「いいですね」と言ってもらえて。そこから念願のショートヘアです。

——儚げな印象があったので、髪型の変化がとても新鮮でした。次のステージに一歩、進まれたのかなという決意を感じました。
顔立ちや、骨格とのバランスもよく思えて気に入っています。繊細な役を演じる面白さもありますが、私自身には気の強い一面もあるので、そういう役もやってみたいという願いを叶えるきっかけになりました。
——ロング時代でも『街の上で』(20)では、少しわがままな役を演じられていましたよね。「こういう表情もされるのか」と、スカッとしたというか、印象に残った作品です。
実は、やっと最近になってあの映画を客観的に観られるようになったんです。当時は俳優としての焦りがあって、「この作品で何かを残さなければ」という思いばかりが先立って。アップカミングな俳優を集めた“4人のヒロイン”という紹介に、正直ライバル心も芽生えて邪念まみれでした。でも、監督や共演者たちと一丸となって撮り終えて、素晴らしい作品となりました。
——客観視できるようになったのは、ご自身のなかで何か変化があったからですか?
当時は自分に過度に厳しかった時期だったかもしれません。自分では「全然、芝居ができなかった」と思い込んでいましたが、「(穂志演じる)雪がいちばん好きでした」と、評価してもらえることがあって。そういう声を聞いているうちに少しずつ。観てもらった方からの言葉は、どんな作品でもすごく励みになります。
Model_Moeka Hoshi Photo_Hiroko Matsubara Styling_Tomoko Iijima Hair_Tomihiro Kono Make-up_Nobuko Maekawa (Perle Management) Text&Edit_Aiko Ishii