アンデルセンが生んだ美しく、儚いおとぎ話“人魚姫”。その物語をベースにした映画『ChaO』が2025年8月15日(金)より公開!総作画枚数10万枚超という緻密なアニメーションで描かれる舞台は、人間と人魚が共存する近未来。人間の青年・ステファンと、人魚王国の姫・チャオによる、波乱と奇跡に満ちた恋の物語が展開される。そんなふたりを支えるマイベイ役を演じるのは、シシド・カフカ。俳優、アーティスト、お笑い芸人……多彩な顔ぶれが集結した本作で、彼女はどのように唯一無二の世界観を表現したのか。本格的に声優へ挑む、その思いを語ってもらった。
シシド・カフカが声で魅せる、アニメーション映画『ChaO』
愛おしくて切ない“人間と人魚”のミラクルロマンス!

──今回の声優のオファーを受けたとき、率直にどのように感じられましたか?
実は以前に一度、たった一言だけですが声優のお仕事を経験したことがあって、そのときから「これは面白い仕事だな」と感じていたんです。だから今回、しっかり関わらせていただけると聞いて、まずは純粋にすごく嬉しかったです。
──アーティスト活動とはまた違った“声での表現”という面で、難しさや、普段とは異なる意識などはありましたか?
ナレーションはこれまでも何度か経験があったんですが、それとはまったく違いましたね。声優の仕事を初めて経験したとき、録るのはたった一言でもスタジオが数時間も押さえられていて、それだけの労力をかけて作り上げる世界なんだと興味が湧きました。今回も一筋縄ではいかない難しさもありましたが、3時間みっちり話し続けるくらいの密度で臨みました。
──そんな中で、演出を手掛ける青木康浩監督とはどんなやりとりがありましたか?
最初に「マイベイ」というキャラクター像について、監督がすごく丁寧に説明してくださったのは印象的でした。台本を読んだときに「包容力があって支えるタイプの役なのかな」と思って準備していたんですが、監督から「もっとかわいらしさも出してほしい」といったディレクションをいただいて、いろいろ意見を交わしながら、少しずつキャラクターができ上がっていった感じです。

──本作を拝見し、まず色彩の豊かさにとても驚きました。完成した作品をご覧になったとき、どんな印象を持たれましたか?
最初に台本をいただいたときには、すでに映像がほぼ完成に近い状態で。水や光の描写にすごく惹かれていました。線のタッチにも手描きの温かみがあって、本当に“おもちゃ箱をひっくり返したような絵”だなと感じたんです。初めて全員の声が入った状態で観たときには、正直まだ自分の声にちょっと照れくささもあって、馴染んでるかな……?という不安もあったんですが(笑)、皆さんの声が重なったことで「こうやって作品の世界観がしっかりと色づいていくんだ」って。感動しました。
──俳優、アーティスト、お笑い芸人など、あらゆる分野の第一線で活躍する個性豊かな方々が表現するキャラクターの個性もとても魅力的ですよね。
キャラクターそれぞれに愛情がしっかり宿っていて、それが伝わってくるからこそ、観ている側も自然と夢中になれる。そんな“ごった煮のバランス”が、この作品のいちばんの魅力なんじゃないかなと思っています。3DCGの線をうまく取り入れた独特な質感もあって、画面の端から端まで見どころだらけです。
──カフカさんが演じられたマイベイは、頼りになるお姉さんのような包容力を感じるキャラクターでした。普段のご自身と重なる部分はあったりしましたか?
うーん、実は私、どちらかというと“頼りたいタイプ”なんですよ(笑)。だからむしろ、マイベイみたいな人が近くにいてくれたら嬉しいかな。
──そっと寄り添ってくれたり、背中を押してくれたりと、とても存在感を感じました。作品全体を通して、カフカさんが印象に残っているシーンはありますか?
たくさんありますが、人魚王国のお姫様・チャオが喜びで踊るシーンや都市の光の描写も本当に美しかったです。全体的ににぎやかで、情報がひしめく作品だからこそ、逆に静かなシーンもすごく際立っているように感じます。
恋愛模様だけでなく、人間と人魚が共存する未来社会や、機械の反乱のような要素も描かれていて。どこか今の世界情勢にも重なるようなテーマがちりばめられていて、共感できる部分も多かったです。だからこそ、観る人によって受け取り方がまったく違ってくる。本当にいろんな角度から楽しめる作品だと思います。
──物語の中で描かれる“人魚界”という設定は一見ファンタジックですが、現実に重なる部分もあって、ずっしりと心に響くシーンも多かったように思います。マイベイのまっすぐに愛情を注ぐ姿勢がとても印象的でした。カフカさんご自身がこの作品に限らず、“愛情を注いでいるもの”はなにかありますか?
やっぱり、音楽ですね。ずっと自分の中心にあるものだと思います。あとは趣味としては観葉植物。コロナ禍にオンラインで人の家を見る機会が増えたとき、「気の巡りがいいな」と感じるおうちには、必ず植物があったんです。それで、「植物って空間のエネルギーにすごく関係してるんだ」と気づいて、試しにひとつ買ってみたのがきっかけでした。
──最初はインテリアとして惹かれて……という感じだったんですね。でも、育てるとなると大変では?
はい、もちろん大変です(笑)。でも、その大変さも含めて植物の“自然の力”を感じられるのがいいんです。世話をしていると、自分のことばかりに意識が向かなくなるというか、自分以外のものに気持ちを向ける時間が、いいバランスになっているんです。
──今ではかなりの数を育ててらっしゃるとか?
最初はひとつだけだったのが、気づけば部屋に40鉢ほどに……。それくらいに囲まれているのが、いちばん落ち着くんですよね。最近は増やしたら人にもあげたくなっちゃうんです。「これ、よかったら育ててみて!」って。ちょっと“布教”みたいな気分で(笑)。
最近のお気に入りは「アロカシア」です。葉に光沢があって、形もすごく美しいんですよ。今年の冬は寒さでダメになってしまったんですけど、春になって暖かくなったら、また新芽を出し始めて。もう、よりいっそう愛おしくなりました。自分が注いだ愛情が、こうして返ってくる喜びもあるんだって。

──そうやって、愛情の輪が広がっていくのも素敵ですね。声優やナレーションなど、新たな表現にも挑戦されるなかで、この秋はカフカさんにとって音楽活動も節目の時期を迎えられるそうですね。
9月にはデビュー13周年を記念したドラムボーカルスタイルのワンマンライブを控え、メンバーとして活動する「el tempo」「BONE DAWN」「堺正章 to MAGNETS」のバンドもそれぞれ動いています。これまでも、ライブは私にとってすごく特別なもので、その1回のために全力で準備して、緊張感を高めて……っていうスタイルだったんです。でももっと“日常の中にライブがある”っていう状態を作りたいと思っています。そうした環境で、より自然に音楽と向き合っていけたらいいですね。
Photo_Wataru Kitao Text_GINZA




