木や草花が生い茂る屋根や壁面、土が流し込まれた柱、森と見紛う高層ビル……自然一体型の建造物が世界中で多彩になっている。国内では、石上純也が設計した洞窟のようなレストランmaison owl(山口県宇部市)、武田清明の手がけた土と緑を構造に取り込んだ鶴岡邸(東京都練馬区)、藤本壮介による内外の境界があいまいな円形のNOT A HOTEL ISHIGAKI(沖縄県石垣島)が話題だ。
都市にあれば二酸化炭素削減やヒートアイランド対策といった問題解消を期待して、豊かなランドスケープにあればその景観を尊重するように。通常直線的で高さを競いガッシリした大きな塊の印象の強いビルディングが、このようにプリミティブで有機的な控えめ姿勢で次々と生み出されるのは、いまの時代を象徴するかのよう。
ここでは、2023年にオープンした中から直接訪れることができる物件2つをピックアップ。千葉県木更津市のサステイナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」の広大な敷地に2月に新しく加わった「地中図書館」と、島根県出雲市に5月にお目見えした雄大な空と海を臨む“崖”ホテル「IZUMO HOTEL THE CLIFF」。どちらも深く埋もれつつ光を効果的に取り入れる選択が、居心地のよさを実現している。