平成元年生まれのオタク4人組からなるグループ「劇団雌猫」が、わいわいトーク!メンバーである、かんさん、ひらりささん、もぐもぐさん、ユッケさんが月替わりで登場します。
今月は、GINZA9月号(8月8日発売)「部屋を飾る、新世代クラフト!」特集から連想して、「工芸」をテーマにひらりささんとかんさんがお話します!前回の記事はこちら。
劇団雌猫の“幕間におしゃべり” vol.03

平成元年生まれのオタク4人組からなるグループ「劇団雌猫」が、わいわいトーク!メンバーである、かんさん、ひらりささん、もぐもぐさん、ユッケさんが月替わりで登場します。
今月は、GINZA9月号(8月8日発売)「部屋を飾る、新世代クラフト!」特集から連想して、「工芸」をテーマにひらりささんとかんさんがお話します!前回の記事はこちら。

毎日あつい…!みなさん体調崩したりしていませんか?今回はひらりさ&かんのコンビでお送りします。


今回は「工芸/クラフト」がテーマ。なんとなく知ってるけどういう意味だっけ……と調べてみました。「日常生活において使用される道具類のうち、その材料・技巧・意匠によって美的効果を備えた物品、およびその製作」(中川政七商店のサイトより)だって。
こだわりあるものづくりという観点でいうと、各ジャンルのオタクの中にも「ものづくり」を積極的におこなう一派がいるよね。


「うちわ」「ぬい服」「推しグッズの装飾」とかね。
作る対象への愛があってこそだよね〜。私は小学生のときに『テニスの王子様』が好きすぎて、ビーズで作ったテニスラケットを、作者の許斐剛先生へのファンレターに同梱したことがあるよ。あれが人生初のクラフトだったかもしれない…。


工芸小学生かわいすぎ!陶芸作品とかも工芸に入るかな?かんは作家ものの器もよく買ってるイメージ。
確かにそう言われたらそうだ…!思い出にもなるし実用的だから、作家ものの器は近隣のセレクトショップとかではなく、旅先で買うことが多い。最初はただ「かわいいな」で買ってたけど、今は作家さんのバックボーンとかにも興味が出てきてる。


「ちんじゅかん」に行ってきたって話をこの前してたよね。
そうそう、鹿児島の沈壽官窯!豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本に渡った陶工の一人の子孫が代々鹿児島で続けている薩摩焼の窯元。夫が好きな司馬遼太郎の小説『故郷忘じがたく候』に登場するので、聖地巡礼的に行ったの。


工芸品って、その背景を知ることで土地や歴史とつながれる感じがあって良いよね。
でも帰ってきたら、いちばん気に入って買った器が割れてて…。思い切って金継ぎの修理に出してみたよ。今まさに修復中。器の価格より高くついてしまったけど、作家の一点ものは「新しい同じもの買って終わり」ができないから仕方ない。


オタクって、新しいものをどんどん消費する文化に慣れてしまってるけど、工芸に触れると「ひとつのものを大切にする」っていう考え方に自然とチューニングされるかもね。
たしかに!私は、きれいで貴重なものも生活の中でどんどん使っていきたい派だから、良い器も飾ってるだけじゃいやなの。それなら丁寧に扱わなくちゃって、日々の生活の中でちょっとだけ背筋がのびる瞬間があるのも良い。大切にすることと使わないことはイコールではないと思うから。


いいねいいね。私は普段からアートをよく見に行くんだけど、去年行った展覧会「ポケモン工芸展」が思い出深くて。人間国宝から若手まで、現代日本工芸を背負う20人のアーティストが、ポケモンをテーマに思い思いの作品をつくる企画。
それ気になってた!金が切り貼りされたような「サンダース」のビジュアルが印象的だったけど行きそびれちゃったよ。どうだった?


最初は「ミーハーな展覧会だな」と思って半分冷やかす気持ちで行ったんだけど(笑)、すごすぎた! 工芸の底力を知りました。ポケモンそのものを自分の得意な手法で表現するだけじゃなくて、「技」だけを表現してる人もいて。
技だけ…?「みずでっぽう」とか、「しっぽをふる」とかの技?


そうそう(笑)。 漆を使って作品制作をしている田中信行さんというアーティストの方がつくった漆作品なんだけど、「かげうち」という技がモチーフになっていて、めちゃくちゃかっこよかった。
今作品の画像を検索して見てみたけど、アツすぎる…!「かげうち」ってゴーストタイプの技で、影をのばして敵の背後から攻撃するというものなんだよね。この漆作品が背後から攻撃してきたら、わたしゃ怖くて泣いてしまうよ。


実際、すごい迫力だったよ!アーティストが伝統技法と現代カルチャーを融合させて、自分なりの「解釈」で作品を作るのって、最高だなぁと思った。
ほんとだね!そういえば、私最近編み物にハマってて新宿のオカダヤの毛糸売り場に足繁く通ってるんだけどさ。同じフロアに「ぬい服」を制作するための素材やサンプル、キットがたくさん売っていて、すごい混雑してるよ。


それは、お店側も「ぬい服コーナー」として売り出してるってこと?
そうなの。完成したお洋服も売ってるし、生地やビーズ、トイスケルトン(ぬいぐるみの骨格)も売ってる。こんな風に着せ替えできるよ、という制作サンプルも充実してて、見てるだけでも楽しい!


ぬい文化はこの10年ですごい勢いで市民権を得たとは思っていたが、クラフト文化とも組み合わさって、まだまだとどまるところを知らないな…!手をかけることで出る愛着ってあるもんね。毛糸だと、推しカラーの毛糸を使って、ポーチやバッグなどの「推しの概念」グッズ作るのも楽しそうだね。
まさに!私はかぎ針編みの超初心者なんだけど、最近「引き揃え」という編み方にはじめてチャレンジしたんだけど…。


「引き揃え」とは…ふむふむ。毛糸1本で普通は編むところ、2本以上を一気に1本のていで編む、というやり方なんだね。
うん、異なる色や風合いの毛糸をまとめて編むとニュアンスが出て可愛いんだけど、つまり推しが2人いる人や、「このコンビやシンメが好きなんだ!」という人は、2人のメンバーカラーを引き揃えて編むと、2人が一体化した作品になる、というクラフトが可能なんだと気づいたよ。「シンメ編み」と名付けよう。


無限大だ!!推しコンビがいる人はぜひお試しください(笑)。かんは、編んでるときってどんな感覚なの? 「瞑想」みたいな感じ?
編み物で心落ち着くって話よく聞くよね!私は必ずしもそうではなくて、むしろ自分の精神状態が編み目にそのまま出ると感じるな。イライラしてた時や、よそごと考えてた時は、後から見ると分かりやすく編み目がデコボコしてる。逆にうまく集中できてると、機械みたいに整ってたり。私はそんないびつさも愛しいのでOKと見逃すんだけど、私のお母さんは乱れを発見したら全部ほどいてやり直すって言ってた!


いろんな向き合い方、取り組み方があるんだね。まさにクラフトマンシップだ。私も何か作りたくなってきた!
え、編み物やろうよ。


編み物って私みたいなせっかちには向いてない気がするんだけど実際どう?実は過去に一度だけ、編み物が得意な友達に教えてもらってAirPodsケースを編もうとしたことがあるんだけど、完成までやり遂げられず、見事に断念しちゃった…。
よくぞ聞いてくれました!私も大のせっかちなんだけど、そういう人にはまずは極太毛糸&ジャンボかぎ針でざっくりバッグから編むのをオススメする。AirPodsケースみたいな細かいものだと、手数のわりに進んでる感が出にくいからね。あと普通に編み目が小さくて難しい。


ありがたいTipだ。ととのいたい。それってどのくらいの時間でできる?
ちいさめバッグなら全然2時間くらいでできると思うよ。今度気が向いたら一緒にやろう!そういえばユッケさんも指で編む「マンドゥバッグ」作りたがってたし、みんなで集まって推しカラーで作っても楽しそう。


やりたい〜!読者の皆さんの作ったものもぜひ見てみたいので、シェアいただけると嬉しいです!
クラフトごころに火がついた!

Illustration_Maiko Sugiyama