「“街が鼓動している!”香港の街を歩きながら、まずそう感じました。見上げれば、空高く積み上げられていくビルや高層マンション。道端にはカゴとか資材が散らばっていたり、何かを燃やしていたり、どこもかしこも工事中。亜熱帯の太陽、30度を超える街を足早に歩く人々。心臓のようにドクドクとまさに現在進行形で街が進化している、巨大なエネルギーが渦巻いていました!」そう話すのは、ビジュアルアーティストのTakako Noel。写真とペインティングの手法を織り交ぜた唯一無二の幻想的な表現で、いま、ファッション界からもラブコールが止まない。彼女が自身の展示のために訪れたはじめての香港。4日間の滞在を、写真と共に振り返ってもらった。
「香港の街中はとにかく色で溢れていました。繁華街にはあちこちに派手なネオンサインがぶら下がっているし、日本ではあまり見ないようなピンクやパープルのマンションが乱立してる。現地の人が着ている服も派手な柄や、色鮮やかなものが多かったですね。特に鮮明だったのは、九龍島にある金魚街という場所。道を歩いていると、突然、水槽やビニール袋に入った金魚を売っている店が何軒も現れるんです。見渡せば右も左も金魚、金魚、金魚!中国では金運を上げてくれる縁起の良い生き物とされていて、金魚を飼う家も多いみたいです」
「私が今回参加した『シブカル祭』というイベントで知り合った、現地のアーティストの女の子に教えてもらい、隠れ家のようなバーに行った夜のこともよく覚えています。そのお店は建築家、デザイナー、写真家など現地のクリエイティブな人の溜まり場で、バーの上ではミュージシャンが即興の演奏をしていました。香港の人たちは人懐っこい人が多くて、人に興味津々。作品のストーリーやコンセプトを質問し合ったり、写真のこと、映画のこと、その夜はたくさん話をしました。意見交換して新しいものが生み出されるような素敵な空間でした」
「毎年3月に香港で開催されるアート・バーゼルというイベントには世界中からアートに関心のある人が集まるし、街の小さなギャラリーでも、作品を買うためのカタログが見やすい場所に置いてあって、アートピースを買う意識が強い国なんだと感じました。ギャラリーもいくつか回ったんですけど、中でもEmpty Galleryという場所はとてもユニークで、5感を刺激してくれる前衛的な空間でした。香港の直後に訪れた上海は、もっと人や街の空気がゆったりとしていたので、より香港の熱量を実感しました。次回はファッションのロケ撮影もしてみたい。絶対面白いことができると思います!」