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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.4 トレンディドラマからのお知らせ

家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.4 トレンディドラマからのお知らせ

クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.3 三つ下の彼女


vol.4 トレンディドラマからの知らせ

最近わたしの中で90年代ドラマが熱い。続きが気になって、ついつい連続再生してしまう。

どのシーンが好き?って質問に、「不思議に思ってることがある」「足の人差し指触ってるんだけど、なんか中指みたいとかそう言うんじゃないの?」って二人が盛り上がるとこ!って即レスした『ロングバケーション』

トレンディドラマでこの結末は予想出来なかったなぁ、、、と思わず呟いた『東京ラブストーリー』

あなたといる間、私、はしゃぎ過ぎてた。いつも声1オクターブ高くなってた気がする。と涙する紘子が切なかった『愛していると言ってくれ』

この時代を生きていた人たちが、とても羨ましい。ずっと公衆電話だったらよかったのに、なんて思う。

今日はここまで、と、パソコンを閉じ、ソファに移動してどのくらい時間が経っただろう?ずっと同じ体勢で座っていたせいで、体が痛い。テレビの光だけで過ごす夜。

おすすめも見つくしたし、次どーしようかなぁ、とiPhoneを手に取った途端に気が変わって、ロック画面を解除せずに、ソファに投げると、ポスッと乾いた音がした。メッセージの通知も、今はどうでもいい気分だった。

両手の指を組み天井に向かって大きく伸びをする。そのまま指をほどき、左腕を斜め上に倒しながらリモコンを手に取るとあくびが出た。

体がゆるむと心もほぐれるメカニズムにしみじみと感心し、ふと我に返る。

今までの生活に戻れないかもと苦笑いし、テレビ画面に目を戻した。

部屋に響く操作音。

もう寝ようかなぁと思いはじめた時、『彼女たちの時代』というタイトルでなんとなく手が止まり、気づいたら再生していた。

深津絵里さん演じる主人公の羽村深美が26年分の人生を振り返りながらスタートするこのドラマ。

「自分が変われる程の出来事なんて、もうないのかもしれないけど何かがしたい」「何もかも忘れるほど、何かに夢中になってみたい」「心の底から笑ったり、怒ったり、泣いたりしたい」「恋愛しかもうこんな気持ちを満たしてくれる出来事は、私には残されてないんだろうか」

開始5分で動けなくなったドラマははじめてだった。

一時停止ボタンを押したまま、ソファの上で体育座りをし、そっかぁと、声に出して言ってみた。その言葉に託した想いが、じんわり自分の中に浸透していく。

私は私で、家入レオで、子であり、孫であり、誰かの友達であり、彼女だったり、従姉妹だったり、幼馴染だったり、する。

私と対面する相手の数だけ「自分」が生まれて、役割が生まれる。そのどれもが本当の自分で、好きと思える自分だけを引き受けて行けばいいと思う。

これからも、その「自分」を大事にしていきたいと思っているけど、いつの頃からか、新しい「自分」を追加したいなぁと思うようになった。

それは、つまり、新しいことに挑戦したい、と言うことで、だから、このドラマの台詞が痛いくらい響いたのだ。

でも、その湧き上がる衝動を、どこに、何に、注げばいいのか分からないから、主人公の羽村深美も、会社のトイレの個室で、トイレットペーパーをティッシュ代わりにしながら泣いていたのだ。

私はすごいなぁと思った。

上手く言えないけど、宇宙を見てしまったような、そんな感動の仕方だった。

何かに挑戦したいその気持ちと結婚を結びつけることがとても自然で、だから人類は石器時代から今まで続いて来たんだなぁとさえ思った。

みんなが何の気なしに言う、結婚したい、には、ずっと一緒にいたいと思える出会いが見つかったら良いなって気持ちと、なんかここじゃないどこかへ行ってみたい、って気持ちの両方が含まれていて。

ずっと一緒にいたいって気持ちは、程度の差はあれどそれまで付き合って来た人たちに対しても持っていたはずのもので。

だから結婚って、相手のことを大切に想う気持ちと、妻(夫)や母(父)という新しい役割にチャレンジしてみたい、とお互いが望むタイミングが重なったってことだから、本当に奇跡で、それが既婚者の人がよく言う、タイミングってやつなんだろうなぁと思った。

そして結婚は、新しく、妻や夫という役割に挑戦してみることなんだから、それを難しいと感じたり、果たせないことも、きっとあってしまう。

ただ子供は、それとは関係ないから、ちゃんと話して、最低でも、その子が道を定めるまでは繋がり続けることが大切な気がする、けど、事情はそれぞれ違っていて、会いたいと望んでもそれが叶わないことだってあるし、一概には言えないことばかりだ。

人生で一度でも永遠を望もうとした瞬間があったことが、ギフトな気がするけど、そんなの綺麗事なんだろうなぁとも思う。

そして私も、その新しい何かに挑戦したい、と思っていて、思っているから、パソコンを開いて、音楽制作ソフトを立ち上げる。

やっていることは、変わってないように見えて、常に新しい。それも分かってて、でも、探しているふりをしてしまう夜がある。

やっと1曲出来たとその日胸を踊らせても、次の日にはもう新しい何かが自分の中でスタートしていて、それを曲にするにはどうしたら良いのか、考えてる。

その繰り返しを思うと、果てしがなくて、嬉しくなる日もあれば、もーやめたって放り出したくなる夜もある。

でも、こうやって、歌っていけたら良いなと、心のどこかで望んでいるから、多分これを続けることで、見えてくるものがあるんだと思う。

探すと生きるはセットで、時々混乱してしまって、でも最高に楽しいことだ。

家入 レオ Leo Ieiri

1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。2020年5月13日には自らが厳選したカバー楽曲も含む1st EP『Answer』をリリース。
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」
leo-ieiri.com
@leoieiri

Cover Illustration: Yui Horiuchi Edit:Karin Ohira  

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