クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.5 ちびまる子ちゃんの時間帯
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.6 買い物の恋人
vol.6 買い物の恋人
塵も積もれば山となる。
ことわざを考えた人って本当にすごいよなぁ、と呑気に鼻唄を歌いながら今日も買い出しへ。
7月1日から全国でプラスチック製買物袋の有料化が開始されたけれど、わたしが住んでいる地域のスーパーでは随分前からそのシステムが導入されていた。
お会計を済ませたレタスやら豚肉を袋詰めしながら見た、事前アナウンスの貼り紙。
小さな心がけでゴミが減るのは良いことだなぁ、と思った割にはエコバッグを忘れて出かけてしまうことがしょっちゅう。
いってきまーす、と家を出て、エレベーターに乗ってから気が付いてしまうパターン。
めんどくさーい!と心の中で思いつつ、レジ袋が有料になるとゲンキンなもので。
ダイエットがてら階段で取りに戻り、エコだし良い運動にもなったし、一石二鳥だ!と最終的には、なんか良い気分で買い物に行くわたしは結構おめでたい人だと思う。
これを持って買い物に行きたい。
そう思えるエコバッグに出合えたら、家に忘れたりしないはず。
それからは街に行ったついでに可愛い雑貨屋さんを覗いたり、なんとなく気に留めて生活していたんだけど。
中々ピンと来るものが見つからず。
諦めた頃に願いは叶う、とはよく言ったもので。
もういいかぁと思った矢先に行ったイギリス旅行でとびきりの出会いがあった。
「And don’t forget…
I’m also just a girl, standing in front of a boy, asking him to love her.」
「ひとつだけ忘れないで。
私だって好きな人の前で愛されたいと願うただの女なのよ。」
1999年に大ヒットした不朽の恋愛映画『ノッティングヒルの恋人』に登場するハリウッドのスター女優アナが、冴えない主人公ウィリアムに言う名台詞。
ウィリアムが働いていた本屋「The Travel Books Co.」のモデルになった場所がロンドンに今でもあって。そこを訪れた時、壁に掛かっていたトートバックを見た瞬間に、エコバッグにして使いたい!とわたしは購入を決めたのだった。
おかげで、もうエコバッグを忘れて買い物に行くことはなくなった。
使いはじめて、さらに愛着が湧いたのは、ロマンチックなデザインのエコバッグから、背の高い長ネギがひょこっと顔を出しているのを見た時。
夢みたいな毎日にも憧れるけど、こっちの方が自分らしくて良いな。
なんでもありのままが1番だな、と、またのびのび鼻唄を歌いながら帰宅して。
買ってきた商品を冷蔵庫に仕舞いながら、あっ、ヨーグルト買うの忘れた!
塩麹とヨーグルトで豚肉を漬け込もうと思ったのに。
人ってそんなに簡単に変わらないんだなぁ、と自分のうっかりに切なく笑うのだった。
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家入 レオ
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri
Cover Illustration: Yui Horiuchi Edit:Karin Ohira