クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.13 男性脳と女性脳
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.14 美容室のシャンプー
vol.14美容室のシャンプー
わたしの髪は、美容師さんやヘアメイクさんも驚くくらい猫っ毛で細い。
傷んじゃうけど、ブリーチして色を入れたからこその質感が結構好きで。
今じゃもう笑い話になっているけれど。
以前、撮影前に気分転換したいな〜と美容室に行き、髪色を変えたわたし。
その時すでに、明るかったので自分では、ちょっと、のつもりだったのだけど。(今思うと感覚が麻痺していた)
案の定、翌日取材に行ったら、現場が騒つくという。
恐ろしいことに、当の本人はその時点でも、え、本当?とぼんやりしていて。
上がってきたインタビューカットを見て、一気に目が覚めるという。
若かった…
そんなこともあり、カラーも数年続けていたので、トリートメントしても傷みが目立つ…
水回りが整っていない国に行く前でもあったので、今がタイミングだ、と、心機一転ショートカットにすることを決めたのだった。
カットが終わり、美容室の鏡を見て、「切って良かった」と思った。
短い方が自分らしい気がする。
そう言えば、わたしの周りには美容室が苦手な人が結構いる。
その理由は様々で、他人に髪を触られるのが駄目だとか(その人は自分で髪を切っている)、喋る、喋らない、の読み合いが疲れるとか。
自分に合う美容室に巡り合うまでの話を聞くのは、その人自身を言い当てているようで、中々面白い。
意見がはっきり分かれがちなのがシャンプー。
ヴォリュームも出るし、リフレッシュにもなるという人もいれば。
顔にかけてもらう布がズレたりするのが、なんでか、恥ずかしいと、可愛い声もあったりして。
わたし個人だと、シャンプーをしてもらうのが、ずっと得意じゃなくて。
シャンプー台の角度なのか、どうしてだか首に力が入ってしまう。
特に、その体勢で喋ると、舌の位置が後ろにあるから、シャンプーが終わる頃には、後頭部がめちゃくちゃ凝り固まるという。
共感してくれた人、ほとんどいませんでしたが。
でもある時、それを話したら「水泳と一緒だよ」って言われたことがあって。
「相手はプロの方だし、ただ身を任せて力を抜けば良い」
「泳ごうとして、体に力を入れても沈んでいくのと同じ。呼吸を整えて力を抜くと、ぷかり、と浮くでしょう?」
それを聞いた時に、なんか、分かって。
これは色んなことに通ずることだなぁ、と。
相手がいくら自分を受け止めてくれようとしても、自分が怖がりすぎたり、心を固くしていると、優しいものを受け取れなくなってしまう。
その何気ない一言のおかげで、シャンプーで凝りを感じることはなくなりました。
そして、美容室のシャンプーと人生を繋げて考えるなんて、あなた苦労が多いわね、と笑われたのでした。
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家入 レオ
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri
Cover Illustration: Yui Horiuchi Edit:Karin Ohira